第103話 第21章 偽装結構 1 偽装交際
おい、俺は明日結婚する、準備ニャ!
そう豪語するモチオの記憶は、3か月前のあの日に遡る。
定期的な病院清掃の日。ネコロボは小児科の遊び場で子供たちの相手をし、モチオ、がり勉猫、コツ勉猫の三匹で清掃をするはずだった。
だが、二匹の姿が見えない。
これ幸いとモチオは、小児がん病棟の個室へ逃げ込んだ。
モチオ「よ、カオル」
カオル「モチオ、またサボり?」
モチオ「そうニャ。……あれ? 髪の毛がないぞ?」
カオル「うん……」
視線を落とすカオルに、モチオは一度外へ走り、猫耳のカチューシャを持って戻ってきた。それをカオルの頭にそっと乗せる。
モチオ「よし、これでお前もネコの仲間ニャ」
カオル「そう?」
モチオ「バッチリニャ」
カオル「うれしーーーにゃ」
そこからはいつもの「ままごと」が始まる。
カオル「あなた、お帰りなさい……」
モチオ「ただいま! 聞いてくれ、また上司が無茶振りしやがってニャ! 資料やり直しだ、俺は絶対に転職するニャ!」
カオル「あなた、今日のご飯はカレーですにゃ」
モチオ「大好物ニャ! お代わり、お代わりニャ!」
一方、その頃。
転移ですか…
医務室では、がり勉猫、コツ勉猫が、医師と看護師から残酷な宣告を受けていた。
コツ勉猫「でも、手術は成功したはずです!」
がり勉猫「再手術で何とかなりませんか!」
医師「6歳の体力では、もう持ちません。」
余命は……
午後5時。
面会時間を過ぎても両親が来ない。
モチオ「今日は両親遅いな」
カオル「そうだね、がり勉猫さんも…ほら? いつもなら モチオさん!またここでサボりですか!! もない。」
ことを不思議に思ったモチオは、ナースステーションで居場所を聞き、急いで事務所へと戻った。
モチオ「おい、がり勉猫! 俺を置いて……」
扉を開けた先には、カオルの両親がいた。
空気はお葬式のように重苦しい。
ネコロボ「モチオさん、座ってください」
モチオは空気を察し、言われるまま座る。
がり勉猫「モチオさん、お願いがあります。しばらくカオルさんをご両親と交代で見てあげてほしいのです」
モチオ「俺は誰のお願いも聞かん!!依頼金は?」
怒るコツ勉猫を制し、カオルの父親が100万円の束をテーブルに置いた。
父親「これで。」
モチオ「よっしゃ! 了解ニャ!!」
がり勉猫「実はカオルちゃん……」
モチオが口をはさむ。
モチオ「依頼者の情報はいらん。俺は頼まれたことだけする。余計な情報は入れるなニャ」
札束を抱え、モチオはそそくさとリビングへ向かった。
モチオ「お、カオルが待ってるぞ。両親、早く行け! 明日から昼は俺がいる。両親はそれ以外の時間だ。 あ、メシも病院に手配してもらうように頼むニャ」
さあ、飯だ飯
モチオが去ったあとの事務所
がり勉猫「カオルさん モチオさんが好きですからね。 もともと内気なカオルさんですから、モチオさんみたいなタイプがいいのでしょうか。 ま、モチオさんは約束を破ったりしませんので、ご安心ください。」
両親は頭を下げて帰っていった。
翌日。
カオルのもとを訪れたモチオ。
モチオ「今日から俺がカオルの専属ナースニャ!」
カオル「そうなの?」
カオルの小さな手首には、無数の注射の跡。モチオはそれを
見て見ぬふりをした。
カオル「何探してるの?? あ、ゼリーなら冷蔵庫だよ」
モチオ「おう、そうか、サンキュー」
モチオは、ただ黙々とゼリーを頬張った。




