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第95章 オリビアは知らないうちに教祖になります。 

間違えて下書きをアップしちゃいました。すみません。<(_ _)>

いまは正常版です。

第95章 オリビアは知らないうちに教祖になります



 教会の捜査が始まると、東の大国はそのまま調査を広げていきました。


 中央大寺院と各地の寺院から押収された文書は、博物館、大学、治安当局へ分けて送られます。エンシェントエルフ侯爵が約200年前に集めていた教会側の文書と、実際に教会内部へ残っていた原本を突き合わせる作業も続きました。


 調査で見えてきたのは、科学者たちを殺害して研究記録や実験器具を焼くよう命じた経緯に加え、その後の隠蔽まで含む一連の流れでした。記録を書き換え、「ペストで死亡した」という説明を人間社会へ定着させていった過程も、別々の場所に残っていた資料を重ねることで浮かび上がってきます。


 さらに調査範囲を広げると、約200年前の一件を起点に、別の時代の問題まで次々に見つかりました。


 薬や治療を教会が独占していた時代の記録。政治や教育へ介入した記録。都合の悪い文書を処分した記録。後世の人間が疑問を持ったとき、説明を統一するよう各地へ出した指示。


 点だった資料が、次々に線へ変わっていきます。


 東の大国は調査結果を受け、組織全体の解体まで進めます。


 関係する寺院は順に閉鎖され、名称変更による組織の存続も解体対象に含まれました。資産や文書は調査対象となり、やがて教会という宗教組織そのものが東の大国から姿を消しました。


 一方、聖典については禁書ではなく、史料と並べて検証できる状態を保つ方針が選ばれました。


 公共図書館、博物館、学校、役所の閲覧室には、史料と比較した解説書が置かれ、無料で持ち帰ることもできます。公共施設では解説書を中心に扱い、聖典そのものの所持や閲覧は個人の自由とされました。


 聖典のどの記述が同時代の文書と食い違うのか。


 教会が救世主として語っていた人物像と、当時を実際に知るエルフたちの証言はどこが違うのか。


 後世に加えられた部分はどこで、歴史的事実として確認できないものは何か。


 科学者殺害の記録を、教会はどう隠したのか。


 解説書には、出典と一緒に一つずつ記されました。


 長い間「聖なる真実」として扱われてきた文章は、今度は他の史料と並べて読む歴史資料になったのです。



          ◇ ◇ ◇



 教会が消えたあと、困ったのは信者たちでした。


 政治的権威を失っただけなら、制度を別の形に置き換えることもできます。しかし教会は長い間、人が死んだときに祈る場所であり、病気になったときに心を預ける場所でもありました。家族を失った人へ言葉を渡し、自分がこれからどう生きるのかを考える場所でもあります。


 それら全部が、ある日を境に「過去の犯罪と偽書を抱えた組織」へ変わりました。


 ひと言でいえば、ダークサイドに落ちたということです。


 国家は歴史を説明できます。博物館は証拠を示せますし、大学なら聖典の成立過程を研究できます。


 ただ、歴史を正しく説明することと、人の心にできた空白を埋めることは別の問題でした。


 各地で小さな集まりができ始めたのは、そのころでした。


 始まりは、何人かが集まって話をするだけの小さな場でした。教会が消えたあとに残った不安や、これからどう生きればよいのかを互いに語っていたのです。


 亡くなった家族のことを語る人。旧教会で信じてきたものが崩れ、何を心のよりどころにすればよいのか分からなくなった人。


 そんな場所で、何度も名前が出るようになった人物がいました。


 エルフ国の女王、オリビアです。


 科学館の展示から不自然な点に気づき、約200年前の殺害を調べ、ユグドラシルへ問い、エンシェントエルフ侯爵が保管していた資料を人間側へ戻した人物。教会が隠していた歴史を明るみに出すきっかけを作った本人でもあります。


 しかも、オリビアが神と話したことも、ユグドラシルと意思を通わせることも事実でした。人間にはできない魔法を使い、エルフ国の女王として今も現実に生きています。


 旧教会の救世主像と聖典が崩れた直後に、実在していて、今も生きている人物がいる。


 ほどなく、信仰を失った人たちはオリビアという実在の人物を、新しい心のよりどころとして見るようになりました。



          ◇ ◇ ◇



 しばらくして、オリビアのところへ妙な報告が届きました。


 その日はベラミラ先生だけでなく、チャトラ、タマ、ミミも一緒にいました。東の大国から来た担当官が書類を広げると、オリビアは最初の一行を読んだところで顔を上げます。


「私を教祖にした宗教?」


 チャトラも横から紙をのぞき込みました。


「オリビアさん、宗教まで作ったんですか?」


「作ってないよ」


 即答でした。


 担当官が淡々と続けます。


「はい。陛下が教団を作ったという記録はありません。正確には、陛下を教祖、あるいは預言者として扱う集まりが各地で増えています」


「私、宗教を作ってないんだけど」


「その点は、信者の皆さんも承知しています」


 今度はタマが顔を上げました。


「知ってるのに教祖なんですか?」


「はい。陛下ご自身が教団を作らず、宗教税も求めず、信者を集めようともなさらなかったことが重要だと受け取られているようです」


「それ、本人が何もしないほど評価が上がる仕組みになってません?」


 ベラミラ先生が眼鏡の奥から書類を見ました。


「なっていますね」


「先生まで」


 ミミは別の欄を指で追っています。


「『教祖様に迷惑を掛けず、静かな生活を営まれる邪魔をしない』って書いてあるよ」


 担当官は、続きの紙を机へ置きました。


 新しい集まりが重視したのは、旧教会のような細かな戒律よりも、日々どう行動するかでした。集まった人たちは、オリビアがこれまでしてきたことを見ながら、自分たちなりの原則として文章にまとめています。


 困っている人にはできる範囲で手を差し伸べ、病気の人には治療へつながる道を探す。子どもには学ぶ機会を用意し、働ける人は自分にできる仕事を引き受ける。生活に余裕のある人は金や物を出してもよいし、技術や労力を出せる人はそれを持ち寄る。


 集まりの運営は、宗教税ではなく自発的な持ち寄りで支える。金額や提供した物の量は人の上下に結び付けず、何も出せない人も同じように受け入れる。助けを必要としている人には信仰の有無を問う前に手を差し出す。


 そして最後に、教祖本人の静かな生活を邪魔しない。


「……最後だけ、ずいぶん具体的だね」


 オリビアが言いました。


「陛下が静かに生活なさることも、重要な原則として扱われています」


「私が決めてないのに」


 タマが紙を読みながら首をかしげます。


「でも、これって教義というより、オリビアさんが今までやってきたことを文章にした感じですね」


 ベラミラ先生もうなずきました。


「そうですね。何を信じなさい、という内容より、どう行動するかをまとめたものに近いです」


 チャトラは別の行を指さしました。


「寄付できない人を下にしない、というのも大事なんですね」


「旧教会では、献金や地位と宗教上の扱いが結び付いていた時期がありました。その反省も強いようです」


 担当官が答えました。


「……これ、私が決めたことになってるの?」


 オリビアが聞くと、担当官は首を横に振りました。


「いいえ。集まっている人たちが自分たちで決めています。ただ、陛下ならそうなさるだろう、と考える人が多いようです」


「それも困るなあ」


「間違っているところはないんですか?」


 チャトラの質問に、担当官は別の紙を出しました。


「今のところ、重大なものは確認されていません。むしろ史実確認をかなり真面目にやっています」


「教祖本人が目の前にいますしね」


 タマが言うと、オリビアは嫌そうな顔をしました。


「確認しに来ないでね」


「それも『教祖様に迷惑を掛けない』に入っているのでは?」


 ベラミラ先生の言葉に、担当官はうなずきます。


 東の大国らしい話でした。


 新しく生まれた宗教まで、教祖とされる本人の行動を公文書や記録で確かめています。旧教会が偽書と虚偽の歴史で崩壊した直後だけに、信者側も同じ失敗をしたくないのでしょう。



          ◇ ◇ ◇



 集まりが続くにつれ、今度は別の問題が見えてきました。


 オリビアたちが実際に集会の場所を見に行くと、以前教会へ頼っていた人たちの生活上の受け皿まで一緒に消えていたことが分かります。


 治療を必要とする人がいました。子どもを連れて来る家族もいます。


「病気の人、ここまで来てから別の場所を探してるの?」


 オリビアが担当者へ尋ねました。


「はい。近くに診てもらえるところがあればいいのですが、遠方から来た人は土地勘もありません」


 チャトラが周囲を見回します。


「具合が悪い人には、ここからまた移動するのも大変ですね」


 オリビアが必要だと考えたのは、目の前にいる人を治療できる場所でした。


「じゃあ、病院を作ろうか」


 費用はオリビア自身の資産から出すことにしました。


 病院の準備が進むと、今度はミミが集会へ来ている子どもたちを気にしました。大人について来ても昼間にすることがなく、文字や計算を習える場所も不足しています。


「ずっとここで待ってるの?」


「うん」


 子どもから答えを聞いたミミが、オリビアの方を見ます。


 オリビアも同じことを考えていました。


「学校もあった方がいいね」


 こちらも自分の資産で作ることにします。


 オリビアからすれば、足りないものがあったので足しただけでした。


 ところが、周囲から見える光景は少し違います。


 宗教税を取らない教祖が、自分の資産で病院を作る。その病院を信者だけのものにはせず、さらに学校まで作って子どもを学ばせる。


「これ、ますます教祖様らしく見えてません?」


 タマが小声で言いました。


「言わないで」


 誰かが立派な教義を書かなくても、その事実だけで十分だったのでしょう。


 集まりの人たちは、オリビアが何を言ったかよりも、何をしたかを見るようになりました。そして見たことを、別の人へ伝えていきます。



          ◇ ◇ ◇



 さらに人が増えると、今度は泊まる場所が足りなくなりました。


 最初は集会の日だけ近所の家へ泊めてもらっていました。遠方から来る人が増え、泊められる人数を超えると、広場へ布を張って簡単なテントを作る人まで現れます。


 オリビアたちが見に行った日は、前夜の雨がまだ地面に残っていました。


「……これ、みんなここで寝てるの?」


 オリビアが尋ねます。


 集まりの世話をしていた女性が答えました。


「遠くから来た人は、そうしています」


「毎回?」


「泊まる場所が見つからない人は」


 チャトラが濡れた地面を靴で確かめました。


「雨が続いたら、かなりきついですよ」


「夜は冷えるし」


 ミミもテントの中をのぞき込みます。


「風が強い日もありますね」


 ベラミラ先生が空を見上げました。


 この土地には雨があり、季節によって夜はかなり冷えます。風の強い日に地面まで濡れれば、布を張っただけの場所で何日も過ごすのはつらいでしょう。


 そこで最初に動いたのは、信者たち自身でした。


 建設は、彼らが教義にした「自分にできるものを持ち寄る」という考え方そのままに進みました。木材を出せる人が材料を持ち寄り、大工仕事のできる人が手を動かします。料理のできる人は作業する人たちへ食事を作り、金や材料を出す余裕のない人も運搬や掃除を引き受けました。


 提供した金額や物の量ではなく、それぞれができる形で参加すること自体に意味がある。そんな考え方が、木造の建物を少しずつ形にしていきます。


 そうして、木造の集会所兼宿泊所が建ちました。


 まとまった人数が入れる大きな部屋があり、遠くから来た人が眠れる場所もあります。食事を作る場所、水を使える場所、体調を崩した人が横になれる部屋も設けられました。


「これなら、テントよりずっといいね」


 ミミがうれしそうに言いました。


「みんなで作ったんですね」


 チャトラも柱や梁を見上げています。


 オリビアも、この時点ではこれで落ち着くと思っていました。


 ところが、人はさらに増えました。


 木造の建物はすぐに満員になります。宿泊所へ入りきれない人がまた外でテントを張り、集会の日には大きな部屋へ入れず、窓の外や入口の周囲で話を聞く人まで出るようになりました。


「……戻ってる」


 オリビアが言いました。


「何がですか?」


 タマが聞きます。


「テント」


 せっかく木造の宿泊所を作ったのに、その周囲へ新しいテントが並んでいます。


 信者たちは、また材料を集めようとしていました。


 けれど、オリビアはそれを見て考えます。


 木造の集会所を作った人たちは、すでに金も材料も労力も出しています。オリビアは、ここから先の大規模な建設費と負担を自分が引き受けることにしました。


 オリビアの前世の実家は、救援を必要としている人を対象としたNGOも運営していました。


 困っている人を見つけ、自分たちにできることがあるなら、必要なところへ手を差し伸べる。オリビアにとっては、昔から身近にあった考え方です。


 ここまで増えた人数を収容するには、普通の集会所を数棟追加する程度を超えた規模が必要になっています。


 オリビアはしばらく考え、それから空を見上げました。


「……建物だけなら、いけるかな」


「何がですか?」


 ベラミラ先生が尋ねます。


「飛行機を使う人のための、大きな建物」


 四人がそろってオリビアを見ました。


「そんな建物があるんですか?」


「あるよ。たくさんの人が一度に出入りするから、かなり大きいの」


 オリビアが思い出したのは、前世で利用したシャルル・ド・ゴール空港、CDGの旅客ターミナルでした。


 前世では、本来の役割を終えた旅客ターミナルが航空博物館になった例もあれば、ショッピングモールのような別用途へ転用された例もありました。大勢の人を受け入れるために作られた大空間の建物は、内部の使い方を変えれば、当初とはまったく違う役割にも対応できます。


 オリビアは以前から、そうした建物は航空機の利用だけに用途を限定する必要がないと考えていました。


 しかも召喚魔法では、自分が実際に利用した交通機関だけでなく、その運用に不可欠な付属設備まで対象として認識できる場合があります。CDGの旅客ターミナルなら、航空機を利用するための付属施設として呼び出せる可能性がありました。


「同じところにある大きな建物を二つ、呼んでみるね」


「二つもですか?」


 タマが聞きました。


「一つは大勢が集まる場所、もう一つは泊まったり食事をしたりする場所に分けた方が使いやすいから」


 召喚対象は旅客ターミナルの建物に絞ります。滑走路、航空機、駐機場、機体へ乗り降りするための通路などは対象から外しました。


 草原の丘に隣接する位置を選び、建物同士が邪魔をせず、人が安全に出入りできるよう配置を決めます。巨大な建物ですから、地面の高さも確認しました。


「召喚する範囲から離れてもらえる? 位置が決まるまで中へ入らないでね」


 周囲の人が十分に離れたことを確かめ、オリビアは召喚を始めました。


 草原の丘のそばに、巨大な建物が現れます。


 続いて、もう一つ。


 前世でいう、CDGのターミナル1とターミナル2に当たる建物です。


 この世界での用途は、大人数を受け入れる集会・宿泊施設です。オリビアは一方を大人数が一度に集まる場所として使い、大きな集会、講話、全体への連絡などをまとめることにしました。


 もう一方は、遠方から来た人の宿泊、食事、受付、物資の配布、小規模な集まりなど、生活に近い用途へ回します。


 病院と学校は、すでに別に作ってありました。


 最初に信者たちが自分たちで建てた木造の集会所も、そのまま使い続けます。少人数の集まりや近隣から来た人の宿泊にはちょうどよく、役割は十分に残っていました。


「木造の方、壊さないんですね」


 チャトラが聞きました。


「もちろん。みんなで作った建物でしょう。少人数の集まりや、近くの人が泊まる場所としてそのまま使えるよ」


 信者たち自身が作った木造の建物。


 その建物では足りなくなった人数を引き受ける、二つの巨大なターミナル。


 どちらか一方へ置き換わるのではなく、三つとも使われることになりました。



          ◇ ◇ ◇



 施設がそろうと、そこは自然に集まりの中心になりました。


 最初にみんなで建てた木造の集会所には、今も人が集まっています。その向こうには、規模のまるで違う二つのターミナルが立っていました。


 病院と学校は信仰の有無を問わず利用でき、その運用にも新しい教義がそのまま表れていました。困っている人を助け、病人を治療へつなぎ、子どもには学ぶ機会を用意する。働ける人は仕事を引き受け、余裕のある人は金や物を出し、提供できるものが少ない人も同じ仲間として迎える。人の評価は寄付額や労働量から切り離されていました。


 そうした原則を文章にしたのは信者たち自身です。彼らはオリビアの行動を見て、自分たちなりの言葉へ置き換えていきました。そして教義の最後には、相変わらず「教祖本人の静かな生活を邪魔しない」と書かれています。


 五人は、木造の集会所と、その向こうのターミナルを少し離れたところから眺めました。


「最初の建物も、ちゃんと使われてますね」


 チャトラが言います。


「うん。あれはみんなで作った場所だからね」


 ミミは、その向こうに立つ巨大な建物を見上げました。


「でも、こっちは大きすぎて、まだ空いてるところがいっぱいありそう」


「それくらいでいいよ」


 オリビアは即答しました。


「この大きな建物までいっぱいになったら、次はどうするんです?」


 タマが余計なことを言います。


「それは今考えなくていいから」


 ベラミラ先生が少し笑いました。


 オリビアは三つの建物を見比べながら、前世で知っていた宗教を思い出します。


 東の大国と同じく、関西の内陸県に本拠を置き、遠くから来る人のための宿泊施設を数多く持っていた宗教。


 教祖とされる実在の人物の周囲へ自然に人が集まり、生活の助け合いと一緒に信仰が広がっていく。


 最初の施設では足りなくなり、遠方から集まる人のための大きな宿泊施設が次々に必要になるところまで、妙に似ていました。


「……だんだん似てきたなあ」


 誰にも分からない独り言です。


「何にですか?」


 ベラミラ先生だけが聞きつけました。


「すみません。ちょっと、似たものを思い出しただけです」


 オリビアは笑ってごまかしました。


 違う点もありました。


 オリビア本人は、まだ若い姿のままです。この先、何百年も生きる可能性が高い。


「女王様で、学生で、冒険者で、今度は教祖ですか」


 チャトラが指を折って数えます。


「最後のは違うからね」


「でも、教祖様って呼ばれてます」


 ミミが言いました。


「ミミまで言わないで」


「病院と学校を作って、今度はあんな大きな建物を二つですし」


 タマも加わります。


「人が集まる場所と、泊まったり食事をしたりする場所に使うんだから、ちょうどいいでしょう」


「大きさが『ちょうどいい』には見えませんけど」


「余るくらいでいいの」


 ベラミラ先生は三人のやり取りを聞きながら、木造の集会所へ目を向けました。


「最初に皆さんが自分たちで作った建物も、ちゃんと役割を残せましたね」


「うん」


 オリビアもそちらを見ます。


 木造の集会所には明かりがともり、食事を作る煙が上がっていました。その向こうでは、召喚された巨大な建物へ人が出入りしています。学校の建物から出てきた子どもたちが走り、病院へ向かう人もいました。


 最初は、自分を教祖にした集まりができたと報告を受けただけです。


 そこから病院と学校ができ、信者たちは自分たちの金や材料や労力を持ち寄って木造の集会所を建てました。


 それでも収容しきれなくなり、最後にはオリビアがCDGのターミナル1とターミナル2を、航空機の付属施設として召喚するところまで来ています。


 実家で救援を必要としている人たちを対象にNGOを運営していたときと、根っこのところは同じでした。


 目の前に困っている人がいて、自分にできることがある。


 手を差し伸べる理由は、それだけで足りました。


「まあ、これならいいか」


 オリビアが言うと、タマがすぐに聞き返しました。


「教祖になるのがですか?」


「違うよ。みんなが雨に濡れないこと」


 チャトラとミミが笑い、ベラミラ先生まで少しだけ口元を緩めました。


 オリビアはもう一度、木造の集会所と二つの巨大なターミナルを見上げます。


 知らないうちに始まった信仰は、すでに人々自身のものになっていました。


 オリビアがその教義を支配するより、ここへ集まった人たちが雨に濡れず暮らせる場所を整える。その方が、ずっと彼女らしい結末でした。


挿絵(By みてみん)

ここまででオリビアの東の大国編は終了です。

お読みいただきありがとうございます。

次回からは、オリビアの海の向こうの帝国編が始まります。

オリビアとチャトラたち、ベラミラ先生が海の向こうへ冒険に出ます。

冒険者なのに冒険していないぞ、と気がついて旅立ちます。

世界観などは変わりません。

前世で乗った乗り物をさらに生かして冒険します。


 更新はここまで、1日3回でしたが、毎朝7時10分の更新で1日1回になります。

 更新時間があいてしまうので、オリビアの更新待ちには、カタリナ、ドロティアの3部作をお読みいただければ幸いです。


カタリナ 朝同じ時間に更新です

「 魔国と魔王の誕生 13歳の第3王女は魔王になることを選びました。」


ドロティア 完結しています 200万文字あるので更新待ちには最適です

「 ドロティアとフランソワは空を飛びます どろちゃんの飛行日誌 飛行機から始まった貴族令嬢の社会改変 」



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