第81章 オリビアは北の国境ゲートに花壇を作ります。 北の条約会議が終わった後の整備です。
第81章 オリビアは北の国境ゲートに花壇を作ります
南側の国境ゲートの花壇を植え直してから、今度は北側の国境ゲートにも植物の仕事が出ました。
オリビアはチャトラ、タマ、ミミと一緒に冒険者ギルドで依頼書を見ます。
「こっちは植え直しじゃないんだ」
「花壇を作るところから?」
「そうみたい」
北側の国境ゲートは、オリビアが山を切り通して作った幅45mの舗装路の上にあります。
路面は瀝青アスファルトです。
北側は瀝青アスファルトの路面だけなので、花壇の枠も土もここから作ります。
以前、帝国皇帝、北の国の元首、東の大国の辺境伯がここで会談したときには、周囲はまだ山を切り開いて道路と国境施設を整えたばかりでした。恒久的な植栽を担当する業者も決まっていなかったので、オリビアたちは大きなプランターに観葉植物などを入れて、一時的に周囲を整えています。
今は正式な国境の入口として使われています。
そこで今度は、地面に残る花壇を作ってほしいという依頼でした。
依頼書で決められているのは、通る人や荷馬車の邪魔をしないことだけです。形や大きさは現場を見て決められます。
「通る人や荷馬車の邪魔にならないように、ってくらいだね」
「じゃあ、見て決めよう」
4人は市場で花を付けた苗を買い、北の国境ゲートへ向かいました。
◇ ◇ ◇
国境ゲートに着くと、4人はまず、花壇を置く場所を決めるために門の前を歩きました。
人が歩くところ、荷馬車が曲がるところ、門へ入る列ができるところ、職員が建物から出入りするところを順番に見ました。広い45m幅の舗装面でも、使われ方を見ると空けておいた方がいい場所があります。
「ここは荷馬車が寄るね」
「じゃあ、もう少し門の方」
「こっちは人が歩いてる」
「このあたりなら大丈夫そう」
しばらく見てから、花壇を置く範囲を決めました。
次は縁に使う石です。
取り付け道路の脇には、切り通しや道路工事のときに出た花崗岩が残っています。
オリビアはその一つへ手を置きました。
「花崗岩はやっぱり直方体ね」
「丸くしないの?」
タマが聞きます。
「私なら丸くしたり、斜めに切ったりできるけど、あとで割れたとき困るから」
オリビアの魔法なら、石の一部だけ位置をずらして切れば、曲線でも角度の付いた形でも作れます。
でも普通の石工が同じものを作るなら話が違います。
曲面や特殊な角度の石は加工に時間がかかります。加工中に割れることもあります。
「同じ形の直方体なら、壊れたところだけ交換できるでしょ。予備がなくなっても、寸法が分かれば普通の石屋さんが作れるし」
「じゃあ全部同じ形?」
「基本はね。並べ方で曲げたり、L字にしたりすればいいよ」
使う石は、40cm×20cm×20cmくらいの直方体を基本にしました。
花崗岩の密度は、およそ2.8t/m³です。
1m³なら質量は約2800kgあります。
通常の重力なら、人の手で扱うには重すぎます。
オリビアは加工する石材全部に、重力の有効値を1%にする魔法をかけました。
1m³の花崗岩でも、重力による力は約280Nです。
今回使う40cm×20cm×20cmなら体積は0.016m³、質量は約45kgになります。
重力の有効値を1%にすると、下向きにかかる力は約4.4Nです。
地球上で約450gの物を持ち上げるくらいの感覚になります。
「軽い」
ミミが1個持ち上げました。
「持つのは軽いけど、投げないでね」
「なんで?」
「質量は45kgくらいのままだから。重力だけ小さくしてるの」
「ああ、動かすときは45kgなんだ」
「そう。普通に持って運ぶなら大丈夫。勢いつけて投げるのはだめ」
3人とも身体を動かすことには慣れています。
軽くなった石を運び、向きを合わせ、舗装面の上へ置いていきます。
オリビアは花崗岩を同じ寸法へ切りそろえます。
直方体を組み合わせて、通行の邪魔にならない場所に花壇の枠を作っていきました。
交換用の同じ石も何個か余分に作ります。
「これは使わないの?」
「予備。どれか割れたら入れ替えるの」
予備の石は、邪魔にならない場所へ同じ寸法のまま積んでおきました。
◇ ◇ ◇
枠ができても、中はまだ瀝青アスファルトです。
「土、ないね」
「山から持ってこよう」
道路脇には掘削土も残っていますが、花壇用には、腐植の混じった表土を山から集めることにしました。
4人で少し山へ入り、木の下や斜面の平らなところを見て回ります。
落ち葉が積もり、腐植の混じった黒っぽい表土があります。
「ここ、よさそう」
「でも、ここから全部取るのはやめよう」
「ちょっとずつ?」
「うん。何か所かから少しずつ」
1か所だけを大きく剥がさず、場所を変えながら少量ずつ表土を取ります。
集めた表土はオリビアの収納へ入れて運びます。
必要な量が集まると、4人は国境ゲートへ戻りました。
花崗岩で作った枠へ土を入れます。
土の高さを見ながら均し、市場で買ってきた花を並べました。
「赤いの、こっちにする?」
「白いの隣だと目立つよ」
「じゃあ黄色は反対側」
苗をいきなり植えず、いったん鉢のまま置いて全体を見ます。
少し離れて見て、また位置を変えます。
「こっちの方がいい」
「うん」
配置が決まってから、4人で順番に植えました。
最後の苗へ土を寄せるころには、瀝青アスファルトだけだった国境ゲートの前に、花の並んだ花壇ができています。
◇ ◇ ◇
最後に、まだやることがあります。
花壇の縁の花崗岩は、全部まだ重力の有効値が1%です。
オリビアは4人の手元を見ました。
「じゃあ、重力戻すよー。指とか手、石の間に入ってないよねー」
「大丈夫」
「こっちも」
「ミミも離したよ」
オリビアは確認してから、石にかけていた重力の有効値を通常へ戻しました。
みしっ。
花崗岩の自重が全部戻り、石が舗装面へ落ち着きます。
並べた枠は自重で舗装面にしっかり落ち着きました。
予備として積んである石も、同じように通常の重力へ戻しました。
将来交換する人は、普通の石材として扱えばいいだけです。
オリビアは花壇を一周して、石のずれと土の高さを見ます。
チャトラ、タマ、ミミも、それぞれ植えた花の位置を確認しました。
「できた」
ミミが花壇を見ます。
「ちゃんと入口っぽくなったね」
「うん」
オリビアも少し離れたところから見ました。
山を切り開いて作った幅45mの舗装路と、大きな国境ゲート。
その前に、直方体の花崗岩で作った新しい花壇が並んでいます。
4人の仕事は終わりました。




