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第67章 オリビアは丘の下町をきれいにします。皇帝が立ち寄るそうです。

第67章 オリビアは丘の下町をきれいにします


 手続きが全部終わるころには、少し遅い時間になっていました。


「お昼、食べようか」


 オリビアたちは、受付カウンターのすぐ左にある階段を数段上がりました。そこは受付と同じフロアにある、ギルドの食事をする場所です。


 今日のお昼ご飯は、水牛のステーキと温野菜のサラダ、蒸しパン、それにくだもののジュースでした。温野菜は、以前より使われている野菜の種類が増えています。新しい道ができてから、北の国から届く野菜も増えました。デザートにはリンゴも付けました。


「いただきます」


 食事をしていると、依頼掲示板に新しい依頼が貼り出されました。


「こんな時間に?」


 冒険者ギルドの依頼は、原則として早朝に貼り出されます。朝のうちに冒険者が依頼を選び、その日の仕事へ出られるようにするためです。ところが、今日はもうお昼を過ぎています。


 新しく貼り出された依頼は、海の向こうの帝国の皇帝がやって来ることに関係するものでした。皇帝は、東の大国との会談のためにこちらへ来ます。


 以前の侵攻では、丘の下町の住民にも死者が出ています。皇帝は侵攻についてお詫びをし、慰霊碑も訪れたいと考えていたようです。


 もともとの予定では、東の大国の首都と、北の国の租借地になっている港との間を単純に往復するだけでした。


 これまでは移動に時間がかかり、日程へ入れるのが難しかったのですが、新しい道路ができて移動が便利になりました。そのため、急きょ丘の下町と港町にも立ち寄ることになりました。近くまで来ながら何もしないより、その方が心証もよさそうです。


 急に予定が変わったので、警備の補助と町の清掃をする人も、今になって募集されています。報酬は、町の清掃が5/10フローリン、警備の補助も5/10フローリンです。警備中に何か事件が起きて実際に対応した場合は、別途、規定に準じた報酬が支払われます。


 オリビアは清掃をすることにしました。チャトラ、ミミ、タマの3人は警備の補助です。


「何かあって、犯人が逃げたら追いかけて捕まえよう」


 3人はそのつもりのようです。


 オリビアが清掃をする場所へ行くと、大きな壁がありました。壁には、海の向こうの帝国による侵攻を非難する文言が、ペンキでたくさん書き込まれています。周囲の塀にも同じような文言が書かれていました。


 役場の人たちが、文字を落とす作業をしています。住民たちも、役場の人が仕事として文字を消していることは分かっています。消している役場の人へ怒る人はいません。


 それでも、文字を消すと、また新しい文字が書き込まれます。


「消しても、また書かれるんですね」


 役場の人たちはまた消します。すると、またどこかへ書かれます。


 通りには、侵攻を非難するのぼりも立てられていました。


 オリビアは、壁や塀に繰り返し書かれる文字と、侵攻を非難するのぼりを見ました。この町へは、皇帝が来ない方がいいと思いました。


 この清掃作業は、きりがありません。


 オリビアは、近くで作業している役場の人に聞きました。


「皇帝って、いつ来ますか?」


「あと2時間くらいかな」


 役場の人はそう答えました。


 あと2時間では、この落書きを全部消すのは間に合いそうにありません。オリビアは、壁や塀に使われているペンキの成分を指定しました。


「これだけを落とせばいいですね」


 その成分を対象にして、洗浄魔法をかけました。


 オリビアは、同じように洗浄魔法をどんどんかけていきました。壁や塀の落書きが消えていきます。


 その近くで、また書こうとしていた人たちのペンキ缶も空になりました。刷毛に付いていたペンキも消えています。使っていた刷毛は、新品のようにきれいになりました。


 お店の看板は要注意です。同じ洗浄魔法を広くかけていますが、看板に使われているペンキは落書きとは別の種類でした。そのため、お店の看板の文字や絵は消えません。


 これで、当分の間はきれいです。


 オリビアは、侵攻を非難するのぼりにも洗浄魔法をかけました。のぼりの文字に使われている染料の成分を指定し、それを汚れとして取り去ります。


 文字だけが消えていきました。あとには、無地ののぼりが残りました。


「なんか、無地ののぼりになりました」


 慰霊碑の周りは、当然きれいに整えられていました。オリビアは、そこではエルフの魔法を使いました。


 花壇や空き地へ魔法をかけていきます。しばらくすると、そこは色とりどりの花を咲かせた植物で埋め尽くされました。


 オリビアは、慰霊碑から少しずつ離れながら、切り通しへつながる接続路の方へ進みました。その道でも、道路の外側にエルフの魔法をかけていきます。道に沿って、色とりどりの花を咲かせた植物が次々と広がっていきました。


 道沿いにあるレモンやオレンジの木にも、オリビアはエルフの植物魔法をかけていきました。すると、枝にはオレンジ色に熟したオレンジと、レモン色に熟したレモンが次々となり始めました。道の両側は、実のなる季節のセビリアみたいになりました。


 エルフの植物魔法は、植物に花を咲かせたり、実をならせたり、成熟させたりできます。オリビアは以前から、植物に話しかけたり、遠くの植物へ伝言を頼んだりするのにも使っていました。


 これで、清掃作業は終了です。小一時間ほどで、町はすっかりきれいになりました。


 オリビアは役場の人に依頼完了のサインをもらいました。そのまま飛行魔法で丘の上町へ戻ります。冒険者ギルドで清掃の報酬を受け取ってから、しらかば亭へ帰りました。


 お部屋へ入ると、そのまま横になります。


「ちょっと寝ようかな」


 もう昼寝という時間でもありません。


 夕方寝です。

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