第52章 オリビアはお祭りを片付けます。
第52章 オリビアはお祭りを片付けます
「次、16人です」
「はい」
午後のモノラックは、そのあともほとんど満席のままでした。
山頂で祭りを楽しんでから帰りに乗る人、歩いて上がってモノラックで下りる人、モノラックそのものへ乗ってみたい人が続きます。
「朝より下りが多くなってきましたね」
「帰りは歩かないって人もいるし、逆に下りだから歩くって人もいる。ちょうど入れ替わってる感じだね」
山頂側の担当冒険者が切符を確認します。
「16人そろったよ」
「じゃあ、出します」
オリビアは時刻どおりに山を下りました。
*
一般客を乗せる運行は17時までです。17時になるまでに最後の一般便も運び終えました。
「一般はこれで終了です」
麓側の担当冒険者が記録へ印を付けました。
「ここからは祭り関係者の業務用だけだね」
「はい。片付けに戻ります」
オリビアは業務用の便で山頂へ戻りました。
乗り場の担当者が1日の記録を見ます。
「結局、30分間隔を外したのは昼の2往復だけだったね」
「11時30分と12時30分のところですね」
「そう。あとはほとんど30分で動いた」
「空いてた席、どのくらいでした?」
「全部合わせて10席」
「10席だけ?」
「そのうち4席は、さっきの12人で下りた便」
オリビアも驚きました。
「ほとんど埋まってたんですね」
「切符は438枚。大人が358枚、子どもと高齢の人が80枚ちょうど」
「80枚も売れたんですか」
「半額にしたの、よかったね」
「はい」
大人は1枚1/10フローリン、子どもと高齢者は1枚5/100フローリンです。切符の売上は39.8フローリンになりました。
「配分の精算はギルドでやるから、あとでね」
「急がなくて大丈夫です」
*
祭りが終わると、山頂では店の人たちが片付けを始めました。
「これ、全部ばらして運ぶの?」
「いつもはそうよ」
デイジーさんが売り台を見ながら答えます。
「商品をまとめて、台を片付けて、荷物にして、それから下りるの」
「それだと遅くなりますよね」
「毎年、最後は急ぐわね。暗くなる前に下りたいし」
オリビアは周りの店も見ました。
「じゃあ、全部収納します」
「全部?」
「はい。店ごとに、下で出します」
近くにいた商業ギルドの職員が振り向きました。
「ほかの店も?」
「片付けていいものなら、全部です。上でやってたら夜になりますよ」
「それは助かるな。店に声をかけてくる」
しばらくすると、あちこちから返事が来ました。
「うちはもういいよ!」
「こっちも売上金だけ取った!」
「この箱までお願い!」
「はい」
オリビアは端の店から順番に、売り台、机、椅子、調理道具、箱、残った商品を収納していきました。
「消えた」
「次、こっちお願い!」
「待ってください。今行きます」
朝から並んでいた店が、次々に広場から消えていきます。
デンゼルさんが笑いました。
「片付けが早すぎるな」
「片付いてるから大丈夫です」
「そういう問題か?」
「たぶん」
アルガーさんも笑いました。
*
店の物を収納し終えると、広場には祭りのあとに落ちたものが残っていました。
紙や包み、串、食べこぼし、飲み物をこぼした跡。誰かが落とした小物もあります。
「これもまとめますね」
オリビアは祭りが始まった時刻を基準に、洗浄系の魔法を組みました。
「今日のお祭りが始まったあとに、ここへ置かれたり落ちたりしたもの」
条件を確認して発動します。
古い石や苔、地衣類、以前からある土や砂はそのままです。祭りが始まったあとに増えたものだけが、広場や展望台の周りから取り除かれていきました。
「落とし物も混ざってるよ」
商業ギルドの職員が言います。
「はい。ゴミと一緒に下へ持っていきます」
「こっちで分ける?」
「お願いします。山の上で仕分けしてたら暗くなりますから」
「その方がいいな。馬車の管理施設の横なら、あとでゆっくり見られる」
回収したものもまとめて収納へ入れました。
祭りが始まる前からあった山頂の姿が戻っています。
「これで上は大丈夫ですね」
「早いなあ」
「暗くなる前に下りましょう」
*
関係者を業務用の便で順番に下ろし、オリビアも麓へ戻りました。
馬車と馬の管理施設の横では、商業ギルドの人たちが待っています。
「ここへ出していいですか?」
「店ごとに分けて置いてくれれば助かる」
「分かりました」
オリビアは収納から、山頂で預かった店の備品や残った商品を順番に出しました。
「これはしらかば亭」
「はい」
「こっちは隣の店」
「そこへお願い」
最後に、祭りのあとで回収したものをまとめて出します。
「こっちはゴミと落とし物が一緒です」
「了解。あとはここでゆっくり仕分けるよ」
「お願いします」
「上でこれやってたら、本当に夜になってたな」
「山道を暗くなってから下りるより、こっちでやった方がいいです」
「助かったよ」
商業ギルドの人たちは、馬車管理施設の横で仕分けを始めました。
*
オリビアはそのあと冒険者ギルドへ寄りました。
「お疲れさまでした」
受付のお姉さんが声をかけます。
「お疲れさまです。一般の運行は終わりました。山頂の片付けも終わって、店の物は馬車管理施設の横へ下ろしてあります」
「早いですね」
「全部収納してきました」
「なるほど」
受付のお姉さんは切符の記録を見ました。
「今日の依頼の10フローリンと、切符売上の配分がありますけど、精算はどうします?」
「明日以降でいいですよ」
「いいんですか?」
「はい。今日はみなさんも後片付けがありますし」
「分かりました。切符の記録とお金を合わせてからにしますね」
「お願いします」
オリビアはギルドを出て、しらかば亭へ戻りました。
*
「ただいまです」
「おかえり、オリビアちゃん」
カメリアさんが迎えました。
「しらかば亭の分、出しますね」
「裏でいいよ」
オリビアは朝に収納した売り台や道具、残った商品を順番に出していきました。
デイジーさんとアカシアさんも一緒に確認します。
「これで全部ね」
「足りないものないですか?」
「大丈夫」
「よかったです」
「今年、片付けが早すぎるわ」
デイジーさんが笑いました。
「いつもなら、まだ山から荷物を下ろしてる時間よ」
「今日はもう夕食にできますね」
「そうしよう」
*
夕食は、デイジーさん、アカシアさん、デンゼルさん、アルガーさん、それにオリビアの5人でお任せ定食を食べました。
オリビアの分は、いつもの食事付き宿泊代に入っている夕食です。
少し離れた席では、チャトラ、タマ、ミミがそれぞれ好きな料理を注文しています。
「オリビア、今日ずっとモノラックだったの?」
チャトラが聞きました。
「途中はお祭り見てたよ。踊りも見たし、屋台も食べた」
「射的も2回やってたよね」
タマが笑います。
「食券、何枚になったの?」
「射的でもらったのは100枚」
「まだ残ってる?」
「残ってる。1年使えるから」
「町の食堂でも使えるしね」
「うん」
そこへカメリアさんが来ました。
「オリビアちゃん」
「はい?」
「今日はこれ。お手伝いのお礼」
カメリアさんが1フローリンを差し出しました。
「でも、私から手伝うって言ったんですし、気を使わなくても大丈夫ですよ」
「いいの。今日は本当に助かったから」
オリビアがまだ受け取らずにいると、タマが横から言いました。
「女将さんがくれるって言ってるんだから、もらっときなよ」
「そう?」
「そう。こういうのは、ありがとうございますってもらうの」
オリビアはカメリアさんを見ました。
「じゃあ、ありがとうございます」
「はい。お疲れさま」
「お疲れさまでした」
オリビアは1フローリンを受け取り、お任せ定食の続きを食べました。
次回、海の向こうの帝国が大規模侵攻してきます。




