第51章 オリビアは山のお祭りを楽しみます。
第51章 オリビアは山のお祭りを楽しみます
「次、16人です」
「はい」
開会式が終わってからも、モノラックは30分間隔で上り下りを続けました。
山頂へ着くたびに祭りの音が聞こえ、麓へ戻るたびに次の人たちが待っています。
「また満席ですね」
「まだ午前中だからね」
切符担当の冒険者が次の16人をまとめます。
「切符を持ってる人から入ってください。次の便の分は、まだ売りませんよ」
列の後ろから声がしました。
「どのくらい待つ?」
「次が埋まったら、その次になります。山頂へ急ぐなら登山道の方が早いですよ」
「じゃあ歩くか」
「俺はこれに乗りたいから待つ」
列から抜けて登山道へ向かう人もいれば、そのまま残る人もいます。
オリビアはシートベルトを確認しました。
「じゃあ、出しますね」
*
しばらく運転を続けると、空いている席が目立つ便が出てきました。
「次の上り、少なそうですね」
「そうだね。昼前だから、みんなもう上にいるんじゃないかな」
山頂側でも、すぐ下りたい人は少なめでした。
オリビアはモノラックを山頂へ置いたまま、時刻を確認しました。
「11時30分の上りは休みにします」
「車両、ここに置いとく?」
「はい。下へ置いて動かさないと、乗せてって言われそうなので」
担当の冒険者が笑いました。
「それは言われるな」
「次の案内、お願いします」
「分かった。麓には伝えてあるから大丈夫」
11時30分の上りと、その戻りの便は運行しないことになりました。
「じゃあ、その間に見てきます」
「せっかくの祭りだし、行っておいで」
オリビアは広場へ向かいました。
*
広場では、古くから続いている踊りと歌が始まっていました。見せるためだけの芸というより、山の祭りで受け継がれてきた神事に近い雰囲気があります。
オリビアは少し離れたところから見ました。
「こういうお祭りなんだ」
すぐにモノラックへ戻らなくてよいので、歌と踊りを最後まで見られました。
踊りが終わると、今度は屋台の方からいい匂いがします。
「あっちも行こう」
展望台の横には商業ギルドの食券売り場がありました。
「食券ください」
「はい。1枚1/100フローリンです。商業ギルドの加盟店と、商業ギルドがやる今日の催しで使えますよ」
「今日だけですか?」
「発行から1年。町の食堂でも、4枚とか6枚とか、値段の分だけ使える」
「便利ですね」
オリビアは食券を受け取り、屋台を見て回りました。
「サテください」
「何本?」
「まず1本」
串に刺して焼いた肉を受け取り、歩きながら食べます。
少し先では唐揚げを売っていました。
「こっちもください」
「飲み物は?」
「それもお願いします」
次の店には、ワンプレートの軽食がありました。
「これも食べたい」
「まだ食べるの?」
後ろから声がしました。
振り返ると、チャトラ、タマ、ミミがいました。
「チャトラたちも来てたの?」
「来てるよ。朝から」
「オリビア、ずっとモノラックに乗ってたでしょ」
「運転してた」
タマがオリビアの持っている皿を見ました。
「それ食べたら次どこ行く?」
「まだ決めてない」
「じゃあ一緒に回ろうよ」
「うん」
*
「弓の射的だって」
ミミが指しました。
的の前に弓が並び、商業ギルドの職員のお兄さんが受付をしています。
「5本で5/100フローリン。10点なら食券10枚、5点なら5枚、1点なら1枚だよ」
「外れたら?」
「0枚」
「みんな、どのくらい取るんですか?」
オリビアが聞くと、お兄さんは的の方を見ました。
「5本で合計5点くらいが多いかな」
「5/100フローリン払って、平均だと食券5枚くらい戻るんですね」
「そう。ここは商業ギルドがお祭りを盛り上げるためにやってるから、店だけで儲けるつもりはないよ。食券は先に売ってるし、使わず残る分もあるからね」
「じゃあ、やってみます」
「はい、5本」
オリビアは弓を受け取りました。
引いてみると、少し癖があります。矢も完全にはまっすぐ飛びません。
「これ、ちょっと曲がりますね」
「祭りの射的だからね。その分、近いよ」
「分かりました」
1本目を放ちます。
矢はど真ん中へ刺さりました。
「10点」
2本目も中央です。
「また10点」
3本目、4本目も同じところへ集まります。
最後の1本を放つと、お兄さんが先に笑いました。
「はい、50点」
「食券50枚ですね」
「そうなるね」
チャトラが横から言いました。
「オリビアに弓を持たせたら、こうなるよ」
「先に言ってよ」
「聞かれなかったし」
お兄さんは食券を数えてオリビアへ渡しました。
「はい、50枚」
「ありがとうございます」
「それ、今日使い切らなくても大丈夫だからね」
「1年使えるんですよね」
「そう。町の加盟店でも使える」
タマが束を見ました。
「これだけあったら、しばらく使えるね」
「みんなで食べよう」
「やった」
*
12時30分の上りと、その戻りの便も休みにしました。
車両は山頂側に置いたままです。
「午前中より空いてきたね」
チャトラが言いました。
「午後は1時間間隔でもいけるかと思ったんだけど」
「じゃあ、もっと遊べる?」
「たぶん」
オリビアはそう言って、また祭りの中へ戻りました。歌を聞き、屋台を見て、食券を使います。
2時間ほどたって射的の前を通ると、人の声が聞こえました。
「これ、本当に当たるの?」
「さっきから全然真ん中へ行かないぞ」
「弓が悪いんじゃないか?」
射的のお兄さんが困った顔で弓を受け取っています。
「同じ弓ですよ。さっき50点出した人もいます」
「そんなの見てないし」
オリビアは足を止めました。
「まあ、確かにまっすぐ飛ばない弓ですけど」
お兄さんがオリビアを見ました。
「あ」
「もう1回やっていいですか?」
「逆にお願い」
さっき文句を言っていた人たちもこちらを見ます。
「この子?」
「さっき50点だった子」
オリビアは5/100フローリンを払い、同じ弓を受け取りました。
「行きますね」
1本目は10点。2本目も10点です。
「本当に入るな」
3本目も中央へ入り、4本目も10点。最後の1本もど真ん中でした。
「50点」
お兄さんがすぐに食券を数えました。
「はい。また50枚」
「ありがとうございます」
タマが笑いました。
「また増えた」
「チャトラたちと食べる分も増えたよ」
「まだ食べるの?」
「1年使えるから残してもいいし」
さっきまで文句を言っていた人の1人が弓を見ました。
「じゃあ俺も、もう1回」
「俺もやる」
「はいはい、5本で5/100フローリンね」
お兄さんの前に、さっきより長い列ができ始めました。
「よかったですね」
「本当に助かったよ」
オリビアは手を振り、モノラックへ戻りました。
*
「次の下り、12人です」
山頂側の担当冒険者が言いました。
「12人ですね」
4席空いています。全員が順番に座り、静かに発車を待ちました。
「出しますね」
モノラックは山を下り始めました。
麓へ着くと、上りを待っている人がまた増えていました。
「増えてますね」
「午後になってから、また来たんだよ」
「お祭りを見てからモノラックにも乗りたいって人も増えてる」
「1時間間隔は無理ですね」
「30分で頼むよ」
「はい」
次の上りは16人でした。
その次も16人です。
午後は空いてくると思っていたモノラックは、また30分間隔の満席運転へ戻りました。




