第46章 オリビアはみんなでモノラックに乗ります。 チャトラたちもモノラックて山頂へ行きます。
第46章 オリビアはみんなでモノラックに乗ります
「久しぶり」
オリビアが手を振ると、チャトラ、タマ、ミミの3人も近くまで来ました。
「オリビアも仕事?」
「うん。上の展望台。芝生広場の芝刈りと、蜘蛛の巣取り」
「やっぱり残ってたんだ」
「やっぱり?」
チャトラたちが受けているのは、麓の馬車と馬の管理施設の仕事でした。施設の周りの草刈りと、雨で路盤にできた穴の埋め戻しです。
「上は飛行魔法があると便利だけど、私たちはあそこまで往復すると疲れるから。先にこっちの依頼書、キープしたんだよ」
タマも笑います。
「オリビア、朝遅いのに、やっぱり山頂の依頼書は残ってたんだね」
「残ってた」
3人の視線が、オリビアの後ろへ伸びるレールへ移りました。
「これで上まで行けるよ。4人乗り」
4人は、果物用のコンテナ車両を連結したままの4人乗り改造車両へ乗りました。オリビアがOHV4サイクルのエンジンを動かすと、割合静かな音で回り始めます。
「行くよ」
「うん!」
モノラックが山頂へ向かって動き始めました。
「わ、動いた!」
「これ面白い!」
斜面へ入ると、車体もレールに沿って傾きます。
「傾いた、傾いた!」
「けっこう傾く!」
少し進むと木々の間が開き、遠くまで景色が見えました。
「うわ、見える!」
「さっきいたところ、あっち!」
さらに進んで山腹を回ると、今まで見えていたところが木の向こうへ消え、別の谷が見えてきます。
「今度こっち!」
「回るたびに変わる!」
水平に近い区間では車体の傾きが小さくなり、その先の斜面へ入るとまた傾きます。
「また傾いた!」
「うわー!」
オリビアも笑いました。4人とも、車体が傾くたび、景色が大きく開くたび、山を回って見える範囲が変わるたびに声が出ます。
速度は、下りのときと同じ毎分80mほどです。山頂へ向かう途中にも下りや水平に近いところがありますが、登り坂へ入るとラックギヤを使って力強く登っていき、速度はほとんど変わりません。約1200mあるので、上りでも所要時間は下りと同じ15分ほどです。
「まだ着かないのもいいね」
「景色、ずっと変わるもん」
やがて山頂駅へ着きました。
「着いた!」
「もう一回乗りたい」
3人とも、山頂駅へ着いてもまだ楽しそうです。
*
車両を降りたところで、チャトラがオリビアへ聞きました。
「オリビア、お昼ご飯代出すから、お弁当持ってる?」
「持ってるよ」
「やった」
オリビアは収納を開きます。
「水牛の魔物のステーキ弁当があるよ」
「それ!」
「食べる!」
「私も!」
4人分の弁当を出し、山頂の芝生広場で食べることにしました。
「いただきます」
蓋を開けると、水牛の魔物のステーキが入っています。
「おいしい」
「山の上で食べると、もっとおいしい気がする」
「さっき乗ってきたところも見えるかな」
「あとで上から見よう」
4人で水牛の魔物のステーキ弁当を食べました。食べ終わると、3人は約束どおり自分たちの分の弁当代をオリビアへ渡しました。
*
食べ終わると、4人は山頂展望台へ行きました。高さ約25mの石造りの展望台で、周囲の木より高いところから景色を見ることができます。
「蜘蛛の巣、もうないよ」
「オリビアが取ったんだ」
「うん」
4人で上まで行くと、木々の上へ出たところで、さっきモノラックから少しずつ見えていた景色が一度に大きく開きました。
「うわー!」
「高い!」
「さっき見えてた谷、あそこだ!」
「あっちも見える!」
モノラックでは山腹を回るたびに見える場所が変わりましたが、ここからなら、そのいくつもをまとめて見渡せます。オリビアも屋根へ降りて作業はしましたが、展望台として景色を見るために使うのはこれが初めてでした。
「私たち、最初?」
「たぶん、そうだね」
「やった!」
山頂展望台を最初に使ったのは、オリビア、チャトラ、タマ、ミミの4人になりました。4人はしばらく、木々より高いところから山の周りを眺めました。
*
そのあと4人はモノラックで麓へ戻り、冒険者ギルドへ行きました。チャトラたちは3人で作業したので、草刈りと路盤の穴の埋め戻しは午前中で終わっています。
「終わりました」
チャトラが依頼書を受付のお姉さんへ出しました。馬車と馬を管理する施設の人が、作業終了を確認してサインをしています。
「はい。確認済みですね。報酬は3フローリンです」
「やった」
3人合わせて3フローリンです。チャトラたちはその場で報酬を受け取りました。
続いて、オリビアも山頂展望台の依頼書を出します。
「私も終わりました」
受付のお姉さんは依頼書を確認しました。
「オリビアさんの方は、現地確認がまだですね。確認が終わってからのお支払いになります」
「誰かが見に行くんですか?」
「はい。山頂まで行って、チェックリストどおりに確認して戻ってくる仕事が、別の依頼になっています。報酬は5/10フローリンです」
「私が確認するのは?」
「作業した本人はだめです」
「ですよね」
その依頼書を見ていたミミが言いました。
「これ、私たちでやろうよ」
「いいね」
「さっき、仕事が終わったあとオリビアと山頂まで行って、お昼食べてきたんだよ。これ、そのまま書けるよ」
3人で、依頼書についているチェックリストを上から見ていきます。芝生広場も、蜘蛛の巣がなくなっていることも、展望台も、さっき自分たちで見ています。
ところが、途中でミミの指が止まりました。
「展望台倉庫扉の清掃……」
「見た?」
「見てない」
ミミは少し考えましたが、そのまま受付のお姉さんへ言いました。
「ここだけ見てません。あとは全部分かるんだけど」
それからオリビアを見ます。
「あの山に登る乗り物、もう一回乗りたいし。オリビア、もう一回行こう」
「いいよ。もう一回みんなで乗ろうか」




