第44章 オリビアは火口湖でお昼ご飯を食べます。帰路のお昼ご飯です。
第44章 オリビアは火口湖でお昼ご飯を食べます
A109Eは王都を離れ、辺境伯領へ向かってまっすぐ飛び続けました。
巡航速度は220km/hほどです。オリビアはときどき地図を見ながら、窓の外へ広がる地形と見比べます。上から見ると面白い形をした場所がいくつもあり、地図に目を落としては、また外を見ることになりました。
しばらく飛んだところで、オリビアは大事なことに気づきました。
「そういえば、朝ご飯まだでした」
今朝は起きて身を清め、そのまま日の出に合わせた授爵と昇爵の式へ向かいました。エルフ国では式が終わったあと、みんなで朝食会をする予定でしたが、オリビアたちは挨拶を済ませるとそのまま王都を発っています。
収納からジャム入り紅茶とピロシキを出しました。
往路でも機内で食事をしているので、ナターリアもマグヌスもユリウスも慣れています。巡航が落ち着いた機内で、4人は遅い朝食代わりの軽食を取りました。
食べ終わるころにも、A109Eはほぼ一直線に飛び続けています。
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昼が近づいたころ、地図を見ていたオリビアが、少し先にある丸い地形へ目を止めました。
窓の外にも、それらしい山が見えます。
近づいて上から見ると、火口の中に湖がありました。
大きなカルデラ湖というほどの規模ではなく、火口そのものの中に湖面が収まっています。内側の斜面には岩が崩れて積もった場所が多く、火道や火口壁が崩れた岩石で、火口の底がかなり埋まってきたようにも見えました。
オリビアがいちばんよく見たのは、湖の縁です。
火口壁の一部が低く切れています。
そこから、湖面の水が細い川になって外へ流れ出していました。
「ここなら降りられそうですね」
オリビアが着陸候補にした一番の理由は、その流出河川でした。
流出口のない火口湖なら、湖岸は着陸場所に選びません。火山性の二酸化炭素や硫化水素が低いところへ溜まる可能性があります。見た目が静かな湖でも、それだけで安全とは判断できません。
ここでは湖面から外へ水が流れ続けています。湖岸には草の生えた広い場所もあり、植物の様子にも不自然なところは見えません。人が弁当を持ってピクニックに来てもおかしくないような場所です。
オリビアは火口の上を一度回り、風と地形を見ました。
湖岸の開けた場所に十分な広さがあることを確かめ、A109Eをゆっくり降ろします。
着陸してエンジンを止め、ローターが完全に止まるまで待ってから4人は外へ出ました。
空から見たとおり、湖岸はかなり開けています。水際へ近づくと、透明な浅いところを魚が走りました。
「マスかな」
何匹か見えます。
細い川は湖からそのまま外へ流れ、火口壁の切れたところを通って下っていました。流出口の高さが湖面の上限を決めていますが、それだけで湖の深さまでは分かりません。ただ、周囲から崩れた岩石が内側をかなり埋めているように見えるので、火口がそのまま深い筒のように残っている感じではありませんでした。
オリビアは湖と火口壁をしばらく眺めてから、収納を開きました。
「お昼にしましょう」
出したのは、クマの魔物のハンバーグ弁当です。
以前に大量に作って、そのまま収納へキープしてあります。4人分を並べると、火口湖のほとりがそのまま昼食場所になりました。
朝はピロシキだけだったので、今度はしっかり食べます。
静かな湖面を見ながら、4人でハンバーグ弁当を食べました。少し離れた水際では、ときどき魚が動いています。
問題があるとすれば、ここが誰の土地なのか分からないことです。
少なくとも、着陸の許可は取っていません。
A109Eの音に誰かが気づいていたとしても、火口の外から湖岸まで来るには時間がかかりそうです。食べ終わったら片づけて、見つかる前に出発することにしました。
昼食を終えると、弁当の容器も飲み物もすべて収納へ戻します。湖岸に何も残していないことを確認して、4人はA109Eへ戻りました。
オリビアはもう一度風を見ます。
火口壁が低く切れ、川が外へ流れ出している側を使えば、周囲の高い火口壁を越えるより余裕があります。ローターを回し、機体を浮かせると、その低い側へ向けて火口の外へ出ました。
再び機首を辺境伯領へ向けます。
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午後になって、辺境伯の城が見えてきました。
往路で使ったUH-60ほど大きな機体ではないので、今回は城から離れた広場まで行く必要はありません。
城の前庭では、A109Eを降ろせるだけの場所を空けてもらいました。人が十分に離れたことを確認してから着陸し、ローターを止めます。
ナターリア、マグヌス、ユリウスはここで降りました。
エルフ国へ向かった4人が、そろって辺境伯の城まで戻ってきました。
オリビアは3人を送り届けると、今度は1人でA109Eへ戻ります。
次に向かうのは丘の上町です。
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丘の上町が見えてきたころには、日もかなり傾いていました。
オリビアは町の中へA109Eを持ち込まず、門の外の開けた場所へ降りました。
エンジンを止め、ローターが完全に止まったところで機体を収納します。
ここからは歩きです。
いつもの町の門へ向かい、門番さんに挨拶をして中へ入りました。
その足で冒険者ギルドへ行きます。
受付のお姉さんのところへ行くと、オリビアは帰還の報告をしました。
「辺境伯様の用事、済ましてきました」
報告を済ませると、オリビアはしらかば亭へ戻りました。
部屋代はすでに支払っているので、改めて部屋を取る必要もありません。
「無事返ってきましたー」
しらかば亭へ帰ってきたことを伝え、そのまま自分の部屋へ荷物を置きました。
夕食になってから、オリビアは今回の旅であったことを話しました。
「辺境伯様の令嬢さんの脚を治しました。それから、大きな木にもご挨拶してきました」
朝は王宮で日の出の式に出て、空ではピロシキを食べ、昼は火口湖のほとりでクマの魔物のハンバーグ弁当を食べました。
そして夜は、いつものしらかば亭で夕食です。
オリビアは無事に、丘の上町へ帰ってきました。




