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第2話 1円安けりゃ勝ちじゃない

第二話

「一円安けりゃ勝ちじゃない」


その案件がヤタガラスに持ち込まれたのは、グリムニル・セキュリティ・インターナショナル日本法人設立のニュースから、まだそれほど日が経っていない頃だった。


地方自治体が発表した、大型警備契約。


庁舎。


浄水施設。


防災倉庫。


通信設備。


災害対策拠点。


複数の重要施設を一括して警備する、年間契約である。


契約期間三年。


金額も大きい。


ヤタガラスとしては、ぜひ欲しい。


会議室のスクリーンに入札公告が映し出された瞬間、ホオズキは机を叩いた。


「よし。取ろう」


久世トウマが横を見る。


「まだ公告の一ページ目ですよ」


「取ろう」


「条件すら読んでません」


「読んでから取る」


「順番が一段増えただけですね」


黒崎が資料をめくりながら言った。


「競合は?」


久世が画面を切り替える。


参加表明企業。


国内警備会社数社。


危機管理会社。


設備管理会社との共同企業体。


そして、その一番下。


《GRIMNIR SECURITY INTERNATIONAL JAPAN》


会議室が静かになった。


ホオズキが腕を組む。


「……またいる」


「市場参入したんだから、そりゃいますよ」


「もうちょっと遠慮してくれてもいいじゃん」


「外資系企業に日本人的な空気読みを期待しないでください」


ホオズキは不満そうに画面を睨んだ。


「で、いくら安くすれば勝てる?」


久世が一瞬黙った。


「その発想、第一話から一歩も成長してませんね」


「勝負なんだから安いほうが勝つでしょ」


「今回は違います」


「なんで」


久世は公告の一文を拡大した。


《本調達は総合評価方式により落札者を決定する》


ホオズキが読む。


「そうごう……ひょうか……」


「方式」


「何それ」


黒崎が頭を抱えた。


「そこからか」


久世がホワイトボードへ向かう。


「簡単に言うと、一円でも安い会社が自動的に勝つ入札じゃありません」


「えっ」


ホオズキが本気で驚いた。


「そんな入札あるの?」


「むしろ大型案件では珍しくないです」


久世は項目を書き始めた。


価格。


警備員の訓練水準。


現場への即応時間。


勤務体制。


事故率。


過去実績。


災害対応。


地域関係機関との連携。


緊急時のバックアップ。


「こういうものを全部点数化します」


ホオズキが眉を寄せる。


「入札なのに?」


「入札だからです」


「一番安い会社に頼めばいいじゃん」


「安い会社に頼んだ結果、災害時に人が来ません、連絡もつきません、設備止まりました、では自治体は困るでしょう」


ホオズキは少し考えた。


「なるほど」


そして言った。


「じゃあ二番目に安くする」


「話を聞いてました?」


ヤタガラスの入札準備が始まった。


数日後。


グリムニル側の提案書概要が、公開可能な範囲で判明した。


グリムニルの契約チームを率いていたのは、外交・契約部長ナディア・ハダッド。


政府機関、多国籍企業、国際機関との契約交渉を数多くまとめてきた人物である。


ナディアが提出した提案書。


四百三十八ページ。


ヤタガラス。


六十二ページ。


会議室。


机の上に二つの束が置かれている。


片方は資料。


もう片方は、ほぼ鈍器だった。


ホオズキがグリムニルの提案書を持ち上げようとした。


「重っ」


「資料です」


「これで殴れるよ?」


「資料です」


「凶器として押収したほうがよくない?」


「自治体提出書類です」


ホオズキは自社の六十二ページを持った。


軽い。


悲しいほど軽い。


二つ並べる。


圧倒的な敗北感があった。


「……内容なら負けてない」


久世が答える。


「ページ数で既に不安になります」


「なんで四百ページも書くことあんの?」


「教育課程だけで四十ページあります」


「うち二ページ」


「車両運用計画三十二ページ」


「うち三ページ」


「緊急連絡網十九ページ」


「うち一ページ」


「ちなみにその一ページ、半分は図です」


ホオズキはヤタガラスの提案書を閉じた。


「分かりやすくていいじゃん」


「物は言いようですね」


グリムニルの提案は強かった。


世界各国で標準化された警備手順。


教育制度。


評価制度。


勤務管理。


事故報告。


装備更新計画。


通信冗長化。


警備員交代時の引き継ぎ手順に至るまで、数字と表で整理されている。


各施設の警備員配置も合理的だった。


「……ちゃんとしてるなあ」


ホオズキがぼそりと言った。


久世が頷く。


「大企業ですから」


「もっとこう、無駄に偉そうとか、現場知らないとか、そういう弱点ないの?」


「残念ながら普通に優秀です」


「物語的に困るな」


「何の話ですか」


問題は価格だった。


グリムニルは、想定よりかなり低い金額を提示してきた。


ホオズキは言った。


「下げる」


経理担当が即答した。


「どこをですか」


「値段」


「どこまで?」


「グリムニルより安く」


計算が始まった。


人件費。


車両費。


燃料費。


装備維持費。


通信費。


保険。


教育訓練費。


管理部門費。


予備人員。


夜勤手当。


災害時の待機要員。


数字が積み上がっていく。


そして最後に利益。


経理担当が画面を見つめた。


「……出ました」


ホオズキが身を乗り出す。


「おお」


「利益率、ほぼゼロです」


「ゼロじゃない?」


「誤差です」


「黒字?」


「計算上は」


「じゃあいける」


経理担当が真顔になる。


「いけません」


「なんで」


「警備員が一人風邪を引いたら利益が消えます」


「弱っ」


「車両が一台故障しても消えます」


「弱っ」


「燃料価格が上がっても消えます」


「弱っ」


「台風が来たら赤字です」


ホオズキは腕を組んだ。


「地方の重要施設って、台風来る?」


「来ます」


「雪は?」


「降ります」


「地震は?」


「日本です」


「……やめよう」


決断が早かった。


久世が笑う。


「珍しく賢明ですね」


「褒め方が失礼」


黒崎が見積書を眺める。


「そもそも、グリムニルと同じ条件で値段だけ勝負して勝てるのか?」


その一言で、会議室が静かになった。


久世がグリムニルの資料を見る。


「……そこなんですよね」


世界的大企業。


大量購入による装備調達費の圧縮。


共通教育プログラム。


統一されたシステム。


豊富な資本。


規模の経済。


同じことをやれば、グリムニルのほうが安くできる。


ホオズキが椅子にもたれた。


「じゃあ勝てないじゃん」


久世は首を振った。


「同じことをすれば、です」


数日後。


ホオズキたちは実際の警備対象地域へ入った。


資料だけではなく、自分たちで現場を見るためだった。


市街地から山間部へ伸びる道路。


冬季には積雪。


一部区間は凍結する。


橋を渡った先に浄水施設。


別方向には防災倉庫。


主要道路が寸断された際に使用する迂回路は狭く、大型車では通りにくい。


ホオズキが車の助手席から外を見る。


「グリムニルの資料だと、増援到着二十八分って書いてなかった?」


久世がタブレットを見る。


「平常時の平均速度なら」


黒崎が前を見たまま言う。


「冬は無理だな」


「だよね」


地元職員に話を聞く。


雪が降ると、この道が止まる。


大雨の時はこちらの川沿いが危ない。


あの交差点は夕方になると混む。


大型車ならこちらを通るな。


災害時に使える広場はあるが、鍵を持っているのは自治会長。


防災倉庫の裏手には地元運送会社の資材置き場がある。


緊急時にはフォークリフトを借りられる。


地域消防団は、主要施設の位置も裏道も熟知していた。


地元病院。


小規模だが救急対応が早い。


院長と自治体防災担当者の関係も深い。


ホオズキが地図に書き込んでいく。


「ここ、救急車より消防団の軽トラのほうが早くない?」


黒崎が答える。


「場合によってはな」


「この運送会社、四駆持ってる」


「除雪用車両もありますね」


久世が資料を見る。


さらに聞き込みを続ける。


すると、グリムニルの提案書の弱点が少しずつ見えてきた。


間違っているわけではない。


むしろ、よくできている。


だが。


世界中どこへ持っていっても通用する提案だった。


それは裏を返せば、この町でなければならない理由が少ない。


東京本部からの応援。


標準化された医療搬送。


契約輸送会社。


指定避難経路。


全部合理的。


ただし、大雪の日。


道路一本が倒木で塞がっただけで、数字は変わる。


ホオズキが地図を見ながら言った。


「この町ってさ」


「はい」


「紙に書いてある道路より、地元のおっちゃんが知ってる道のほうが強くない?」


久世が笑った。


「ものすごく雑ですが、本質を突いてます」


黒崎も頷く。


「現場はそういうもんだ」


その日の夕方。


地元の消防団員と話をした後、ホオズキは駐車場の自販機で缶コーヒーを買った。


「決めた」


久世が振り返る。


「何を?」


「値段、上げよう」


久世が固まった。


「昨日まで一円でも安くすると言ってた人が?」


「昨日の私と今日の私は別人です」


「経営者がそれ言うと怖いですよ」


「うちはグリムニルより高くする」


「本気ですか」


「その代わり」


ホオズキは地図を広げた。


「二十分以内に動く」


「平時ですか?」


「災害時も含めて」


黒崎が地図を見る。


「条件付きなら可能だ」


地域企業と事前協定を結ぶ。


地元の運送会社に車両支援を依頼。


主要道路が使えない場合の代替ルートを設定。


防災倉庫とは別に、小規模な予備拠点を設置。


医療機関と緊急搬送手順を共有。


消防団とも連絡体制を作る。


自治体職員を交え、実際に避難訓練も行う。


久世が次々と書き出していく。


「つまり、警備員だけ売るんじゃない」


「うん」


「地域全体の初動体制を売る」


「それ」


ホオズキが指を差した。


「それ書いて」


「今言ったの私です」


「著作権は会社にある」


「横暴だな」


ヤタガラスの提案書は作り直された。


六十二ページ。


そこから増えて。


九十四ページ。


ホオズキが完成版を机に置いた。


「勝った」


久世がグリムニルの四百三十八ページを見る。


「何にです?」


「前の私たちに」


「目標設定が低い」


ただし、中身は大きく変わっていた。


価格は当初案より高い。


グリムニルよりも高い。


その代わり、地域連携は徹底した。


初動二十分以内。


代替拠点。


医療連携。


災害時の輸送支援。


避難計画。


道路寸断時の複数ルート。


地域事業者との協力体制。


「でもさ」


提出直前。


ホオズキが聞いた。


「向こうより高くて、本当にいいの?」


久世が答える。


「総合評価ですから」


「まだ不安」


「自治体が買うのは警備員の勤務時間じゃありません」


「何を買うの」


「施設が止まらないことです」


ホオズキが黙る。


久世は続けた。


「警備費が年間一千万円安くても、災害で浄水施設が半日止まれば、その差額なんて簡単に吹き飛ぶ」


「なるほど」


「契約価格だけじゃなくて、契約した結果発生する総コストを見る。TCOという考え方があります」


「てぃーしーおー」


「Total Cost of Ownership。総保有コストです」


ホオズキはしばらく考えた。


「日本語だけでよくない?」


「今そこですか?」


「英語にすると頭良さそうに見える制度、禁止したい」


「国際企業と戦ってる会社の社長が言わないでください」


入札当日。


プレゼンテーション会場。


ヤタガラスとグリムニル。


両社の説明は対照的だった。


ナディア・ハダッドは完璧だった。


話し方。


数字。


資料。


時間配分。


質問への回答。


一切の無駄がない。


自治体側の質問にも即座に答える。


「大規模災害時の増援については?」


「東京拠点および広域機動部隊から派遣します。通常条件で二十八分、最大四十五分を想定しています」


「医療搬送は?」


「提携医療ネットワークを使用します」


「教育水準は?」


「全世界共通基準です。年四回の技能評価を実施します」


聞けば聞くほど強い。


ホオズキは待機席で小声を出した。


「帰っていい?」


久世が袖を引いた。


「駄目です」


「あの人、強い」


「知ってます」


「四百三十八ページの人だ」


「人をページ数で呼ばない」


そしてヤタガラスの番。


ホオズキは演台に立った。


最初の一言。


「うちは、グリムニルさんより高いです」


自治体職員がざわついた。


久世が後ろで目を閉じた。


事前に用意した原稿にはない。


ホオズキは続ける。


「なので値段だけで選ぶなら、うちじゃありません」


さらにざわつく。


「でも、大雪の日に国道が止まったら、この見積書の値段って、あんまり意味ないですよね」


スクリーンに地図が映る。


「この道路が止まった場合、こっちから入ります。ただし大型車は無理なので、地元運送会社の四輪駆動車を使います」


次。


「この橋が使えない場合、防災倉庫までの到着時間が十五分延びます。だから予備拠点をこちらに作ります」


次。


「負傷者が出た場合、広域搬送を待つ前に、地元病院と連携します」


次。


「通信が止まった場合は、消防団との連絡系統を使用します」


自治体側の表情が変わっていく。


数字だけではなく。


自分たちの町の道路。


自分たちの病院。


自分たちの会社。


自分たちの消防団。


知っている名前が次々と出てくる。


「うちは世界中で仕事してません」


ホオズキは言った。


「なので、世界標準ではグリムニルさんに勝てません」


久世が少しだけ顔を上げる。


「でも、この町で何か起きた時、誰に電話して、どの道を通って、どこへ人を運ぶかは調べました」


一拍。


「そこなら負けません」


プレゼン終了。


会場を出る。


久世がホオズキを見る。


「原稿」


「うん」


「ほぼ読んでませんでしたね」


「緊張すると忘れる」


「緊張してたんですか?」


「すごく」


「全然見えませんでした」


「心臓バクバクだったよ」


「途中で『グリムニルさんより高いです』って宣言した時、私の心臓も止まりかけました」


数日後。


結果通知。


ヤタガラス会議室。


全員が画面を見る。


評価結果。


価格評価。


第一位。


グリムニル・セキュリティ・インターナショナル。


ホオズキ。


「負けた」


久世。


「まだです」


技術評価。


訓練体制。


グリムニル優勢。


勤務管理。


グリムニル優勢。


過去実績。


グリムニル優勢。


災害時初動。


ヤタガラス優勢。


地域連携。


ヤタガラス大幅優勢。


代替拠点計画。


ヤタガラス優勢。


医療連携。


ヤタガラス優勢。


そして。


総合評価。


第一位。


株式会社ヤタガラス。


数秒間。


誰も声を出さなかった。


ホオズキが画面を見る。


もう一度見る。


「……うち?」


久世が頷く。


「うちです」


「勝った?」


「勝ちました」


「受注?」


「受注です」


ホオズキが椅子から立ち上がった。


「勝ったああああ!」


会議室が沸いた。


誰かが拍手する。


誰かが机を叩く。


黒崎まで小さく笑っている。


ホオズキはその場で両手を上げた。


「やっぱり安さじゃないんだよ!」


久世が冷静に言う。


「数日前まで一円でも安くしろって言ってましたけどね」


「私は最初から付加価値を重視していた」


「記録残ってますよ」


「消して」


「企業犯罪です」


そこへ経理担当が入ってきた。


「社長」


「何?」


「今回の契約ですが」


一瞬、全員が静まる。


「利益率、昨年度案件より高いです」


ホオズキの目が見開かれた。


「……勝った?」


「勝ちました」


「利益も?」


「増えます」


ホオズキは再び両手を上げた。


「もっと勝った!」


再び会議室が沸いた。


久世だけが呆れていた。


「結局そこが一番嬉しいんですか」


「会社は利益がないと給料払えないでしょ!」


「急に経営者っぽい」


「社長だからね」


「今だけですよ」


同じ頃。


グリムニル日本法人。


イングリッド・ファルクは入札結果を読んでいた。


ナディアが向かいに座っている。


「価格評価では我々が一位でした」


「ええ」


「地域対応で差を付けられました」


イングリッドはヤタガラスの提案内容を読む。


しばらくして。


「良い提案です」


ナディアも頷く。


「同感です」


「我々は標準化を優先しすぎました」


「次回は地域パートナーとの連携を、もっと早い段階で組み込むべきでしょう」


「そうしましょう」


悔しがる様子はない。


怒ってもいない。


誰かを責めることもない。


敗因を確認し。


改善点を決め。


それで終わった。


後日。


その話を聞いたホオズキは、妙に嫌そうな顔をした。


「……怒ってないの?」


久世が答える。


「怒る理由あります?」


「負けたんだよ?」


「入札ですから、勝つ時も負ける時もあるでしょう」


「壁殴ったりしない?」


「しません」


「『ヤタガラスめぇ……!』とか言わない?」


「たぶん言いません」


「復讐を誓ったり」


「会社ですよ」


ホオズキが机に突っ伏した。


「普通だ……」


「何が不満なんですか」


「もっと分かりやすい悪者だったら楽なのに」


黒崎がコーヒーを飲みながら言った。


「残念だったな」


久世がグリムニルの企業情報を閉じる。


「向こうはヤタガラスを潰したいわけじゃないんですよ」


ホオズキが顔を上げる。


「うん」


「ただ普通に、日本市場で契約を取りたい」


「うん」


「利益を出したい」


「うん」


「そのために、強い提案を出してくる」


ホオズキは少しだけ考えた。


そして。


「それ、一番めんどくさくない?」


久世は即答した。


「そうですね」


悪意なら対処できる。


嫌がらせなら怒ればいい。


不正なら暴けばいい。


だが。


資本がある。


信用がある。


人材がいる。


システムがある。


価格競争にも強い。


負ければ学ぶ。


そして次の入札では、その学びを反映してくる。


ただ普通に強い会社。


ホオズキは改めてグリムニルの四百三十八ページの提案書を見た。


「次、五百ページになってたりしない?」


久世が答える。


「あり得ますね」


「うちも増やす?」


「内容があるなら」


「とりあえず写真いっぱい入れよう」


「やめてください」


「隊員紹介とか」


「アイドル写真集じゃないんです」


「黒崎のページ十ページくらい」


黒崎が顔を上げる。


「巻き込むな」


「じゃあ私十五ページ」


「減らしますよ」


「社長なのに!?」


久世は笑いながら次の案件資料を机の上に置いた。


表紙にはまた、


《GRIMNIR SECURITY INTERNATIONAL JAPAN》


の文字。


ホオズキが固まる。


「……いる」


「いますね」


「また?」


「市場競争ですから」


ホオズキは深く息を吸った。


資料を手に取る。


今度は価格欄だけを見なかった。


「で」


ページをめくる。


「この客、何に困ってんの?」


久世が少しだけ笑った。


「そこから考えましょう」


一円安ければ勝てる。


そんな簡単な勝負なら。


世界中の会社は、とっくに一円で仕事をしている。


客が買うのは、値段ではない。


その値段で、何が手に入るかだ。


そしてヤタガラスは。


ようやく、そのことを少しだけ理解した。

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