9話目 手ごわいギャンブラー
ネクストゲームでは僕が勝ち、“次の部屋は156です”の光をまた浴びる。いやあ、うまく回ってるときは淡々と続行だね。
しかし、そうは問屋がおろさないらしい。
「お兄さん」
アガベのリザーブしていた宝石を補充しにきた受付の女性が、ニコリとほほえんだ。
「同じ精霊相手だと、単調でしょう? 私と勝負しましょうか」
僕が返事する前に、受付は周りを見た。
「みんなも、見たいよね!?」
「見たい!」
「ルミノと初めてのお客さんの対決、見たーい!」
「負けナシだもんね、ルミノは!」
えっ……、無敗だって?
L:カジノでVIPルームに通されたかな、ポン吉?
「そんないいものじゃないよ」
やれやれ、ヨソモノがカジノを荒らしてるから、凄腕のディーラーがつけられた感じか。だとすると、断ったら出禁って流れだろう。
「タクロー、チェックを頼むね」
「承知シマシタ」
ため息をついた僕が、ルミノと呼ばれた受付にうなずくと、周りの精霊はさらに盛り上がった。
「お兄さんには、賭け金の4倍をバックします。ただし、お持ちの宝石はすべて賭けていただきます」
「1回勝負か。僕が山を作るならOKだよ」
「分かりました。では、お願いします」
少し考えて、僕は山を作った。
「これに託すよ。【4、8、12】の山だ」
「――へえ」
山のカウントを終えたルミノが、感心した素振りを見せる。12の山をぐるぐると混ぜた後、1つ取った。
「では私は、慎重にスタートしますね」
「じゃあ、僕も慎重に。4の山を1つ取るかな。【3、8、11】だ」
「再び私ですか」
ルミノはネコの手を作ったまま、11の山をグルグルかき混ぜ、4つの宝石を取った。
「ふむ、じゃあ僕もいっぱい取ろう」
8の山から4つ取る。【3、4、7】だ。
「――お兄さん、強いです」
「君もね、ルミノ」
出来るだけ誤魔化したかったけど、まぐれで取れる個数じゃないからな。必勝法を知ってることはバレたか。
そして、ルミノが山へと手を伸ばしたとき。
ブーッ! ブーッ!
突然のアラーム音。
みんながうろたえるなか、僕はルミノの手をガッチリつかんだ。
「ルミノ。――そこのタクローはね、悪い所を感知できるんだ」
「!」
「君は、体調が悪いのかな?」
「ううっ……」
「一度、手を下げるといい。手を開いて、落ち着くんだ。そのあと、手を広げて再開するといいよ」
「あっ……!」
僕がやんわりと押し返した手を、ルミノはおずおずとテーブルの下に置いた。その後、再度ネコの手を作って山へと手を伸ばすが、宝石は隠し持たれていないので、タクローはアラームを鳴らさない。
「――ふふっ、ダメですね」
ルミノは頭を振り、しっかりと手を開いて山に手を伸ばした。もちろん僕は最善の応手をして、ルミノに最後の1個を渡す。
「参りました。完敗です」
ルミノが深々とお辞儀すると、僕らは天井から光で照らされた。ギャラリーは熱狂の渦に包まれる。
「ポン吉~! あたし信じてたよ~!」
「スゥは、さっきヘタクソって言ってなかった?」
「ごめーん、あたし記憶喪失だから」
「忘却をネタとして使うなよ……」
「お客様」
ルミノが席を立った。
「宝石のお支払いと、景品交換をいたしますね」
◆
「お客様は30個をお持ちでした。それを賭けて4倍バックのため、現在120個です」
僕は、受付後ろの棚を見上げた。
「ふむ。100個の景品なら届くね。狼人になれるオーブとか」
「ポン吉~、悪魔の羽と尻尾が宝石100個だって! あれ、格好いいよ!」
「そうかなあ」
僕も一瞬目には留まったが、貧相な悪魔ばかり見ていたため、微妙だったりする。
するとルミノが、申し訳なさそうな顔をした。
「実は、その悪魔の装備ですが……実用的ではないのです」
「おや。なんでかな?」
「悪い心が強くないと上手く飛べないようでして。当カジノでも、長いこと残っているのです」
「なるほど」
「別の物を選ばれますか?」
僕は少し考えたのち、首を横に振った。
「いや、これにするよ」
「え?」
「正直に教えてくれたからね」
ルミノが目を丸くする。
「なぜ……?」
「君は、隠して交換も出来たはずだ。でも、ちゃんと知らせてくれた。だから信用できる」
「――ありがとうございます」
ルミノは、せめてもの配慮ということだろう、詳しい使い方も教えてくれた。
僕らはその後、残り分で精霊用のドリンク薬とも交換し、悪魔の羽と尻尾ともども受け取る。
その瞬間、光に照らされた。
「やった~、特殊クリア!」
「ヤリマシタ、“次ノ部屋ハ157”ト出マシタヨ」
受付の看板に、新しい文字が浮かび上がった。
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154 カジノ
・宝石を賭けた勝負で勝つ。
・景品と交換する。
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「やったね、ポン吉~!」
「ああ、これでキマイラは回避だ」
僕らはファイブタッチした。




