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マンション型ダンジョンの101号室で特大のガバをかましたら、次の部屋が133号室だった  作者: 葦原エイ


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8/10

8話目 みんなのもの

 派手に仰天した声はスゥだった。


「なんで、ポン吉!? 全部掘り出したから全部あたしたちのだよ!」

「いいや。『みんなのもの』だよ」


 僕は黄色の看板を指差した。


「みんなの力で掘った。仮にミノルくんがいなくても、この宝石は置いておくつもりだったよ」

「ええええーっ!? なんで!?」

「この鉱山は、そういうふうに出来てると思うからさ」


 全てを取ったり、独占したりはダメなんだろう。

 欲張りは、結局全部を失うのだ。


「ここでは宝石を残す。だからいいんだ」

「だってポン吉~! それ、あたしたちが掘ったんだよ~!?」


 スゴい力でそでにすがるスゥ。


「あたしたちがもらっといていいじゃ~ん!!」

「ん~……ミノルくん?」

「はい」


 僕は、宝石2個をミノルくんの方へとスライドさせた。


「これは、君の取り分だよ」

「え!? ボクは残りますよ!?」

「だからさ。取ったのは10個だろ? 2個はミノルくんのものだ」


 すがってくるスゥの頭を、フードごしになでた。


「スゥ。これならいいかな?」

「うぅ~……。すごくイヤだけど……、わかる」


 スゥは未練たらたらでカウンターの宝石を見つめていた。


「ねぇ、ミノル。本当にあたしたちと来ない?」

「ごめんなさい。ボクは受付ですから」

「あうぅ……」


 スゥはすごすごと撤退した。――うん、君がいてくれて良かった。


「あ、みなさん」


 ミノルくんが手を叩いた。


「この宝石を使って、ボクらは遊びをしているんですけど、参加されますか?」

「遊び?」

「はい、こちらです」


 ミノルくんが、背後の岩肌に手をかけると、ガコンと切れ目が入った。


「扉だったのか」

「はい。ここでみんな遊んでますよ」


 隠し扉の奥は、細い通路の先で直角に折れ曲がっており、それ以上を窺い知ることはできない。


 タクローがキュイィィとスキャンしていたが、動きを止めた。


「――ワタシノ調査ガ出来マセン。ココカラ先ハ、別エリアノヨウデス」

「なるほど。タクローの偵察も、部屋を跨ぐとムリだったか」


 扉の向こうは、まさしく「別の部屋」なのだろう。


「あたし、遊びたい!」


 スゥはもう行く気満々だ。



L:宝石で賭け事だと? ふっ、腕が鳴るぜ



「Lがどうやって参加するって?」


 でもまあ、みんな行きたいのは分かった。もちろん僕も行ってみたい。


 僕らはミノルくんにお礼を述べたのち、扉の奥へと足を踏み入れた。


「うん?」


 次の部屋へ一歩進んだとき、ぐにゃりと空間が歪むような感覚があった。


「ワープみたいなもの、かな」


 試しに153へ戻ろうとするも、見えない圧によってじりじりと押し返される。


「僕らの旅は前進あるのみらしいね」

「あたしはOKだよ、色んなところに行きたいもん」

「スゥは最初、戻ろうって言ってなかった?」

「にゅっふっふ。柔軟に変わるのがあたしの良いところ」


 はいはい、都合の良いところだよね。


 僕らが突き当たりを曲がると、そこは子供精霊たちによる遊び場が展開されていた。カードゲームやボードゲーム、ルーレットもある。

 受付の女性だけは、大人の姿だった。


「ポン吉~、また受付の横に看板2つだよー」

「ああ。鉱山と似た造りだね」


 まずは、いつもの白看板を見た。



――――――――――――――――――――


 154 カジノ


・宝石を賭けた勝負で勝つ。



――――――――――――――――――――



 ――驚いた。誰かクリア済みじゃん。

 あと、さっきは通常クリアが155だったから、特殊のほうが手前のナンバーってときもあるんだね。


 続いて、鉱山にもあった黄色看板を見た。



――――――――――――――――――――


     カジノの遊び方


 宝石を賭けて遊びます。

 宝石がなくなったら帰りましょう。


――――――――――――――――――――



「――帰る?」


 どういうことだ?


 ちょうどその時、カードで遊んでいた精霊の1人が、「うあー」とカードを放り投げて机に突っ伏した。他の精霊が宝石を全部回収し、ゼロになった精霊は「キュゥ……。みんな、じゃあね~」と、僕らのいた隠し通路をとぼとぼ通って鉱山に行く。



L:なんか今、俺らの世界でもよくある悲哀を見た気がする



「カジノでの第一コメントがそれかい」



L:趣味のために仕事でカネ稼いでる人間とか、いっぱいいるだろ



「まあね」


 けれども、僕らは戻れない。宝石を失ったら、おそらく終了だろう。


「L。誰かがこの部屋をクリア済みなんだけど、どういうクリアだったか分かる?」



L:ああ、国内最高到達のチームだったな

L:151から来た2人組が、道中でゲットした宝石1個を賭けて戦ったらしい

L:で、勝ったはいいが、次の156が闘技場で、キマイラと戦わされてな



「うげ……」



L:山羊の角で跳ね上げられて、ヘビの尻尾に噛み付かれて、ライオンに炎吐かれて死亡だ



「う~ん、動物系の敵は困るな。Tシールドも、スゥの《透明》も通じなさそうだし」


 ミーシャよりは勝ち目ある? ――いや、そもそも、156へ行くのを回避すべきだろう。


「とすると……、鉱山での8個ゲットを活かしたいね」


 僕が受付を見ると、そこの女性がニコリと笑って、後ろの棚が見えるよう脇にどいてくれた。


「景品か。悪魔の羽と尻尾が宝石100個、精霊の疲労回復薬が宝石12個、と」



L:菓子との交換で宝石1個はないか?



「ないない」


 まあおそらく、「景品と交換する」のが特殊クリアの条件だろう。他に考えられる条件は「宝石を100個にする」などだから、目指すものは結局一緒だ。


 大勝ちすること。


「あたし、あれやる~!」


 スゥが指差したのは、宝石を投げておもちゃを取るゲームだった。


「これも縁日っぽいね。スゥは得意だったの?」

「うまくいった覚えはないけど、楽しそうだからやる!」

「――じゃあ、1回だけね」


 スゥは宝石を持って人形ゲットに賭けた。


 ぽーい。


 宝石はあらぬ方向へと飛んでいく。


「い、今のは練習!」


 もちろん、宝石は支払い、スゥは2個目も明後日の方向に投げていた。


「――全然面白くない」


 手首のスナップが大事かな。


 僕は色んなゲームを見て回り、ひときわ子供精霊が集まってるゲームへと行った。


「ふふふ、おいらの勝ち~」

「はう、また負けたぁ」


 どうやら「よくばり者の死」というゲームらしい。15個以上の宝石で3つの山を作り、最後の1個を取ったほうが負けのようだ。


 テンガロンハットを被った子供精霊が、宝石の山を前にふんぞり返っている。丸っこい緑の体には、全身にトゲが生えていた。


 ――サボテンのギャンブラーか。


「さあさあ、このアガベ様に挑む奴はいないか~? 今なら、賭け金の倍払うぞ~?」

「それなら、僕がやろう」


 新参者の挑戦に、精霊たちは大いに沸いた。


 ◆


「う~ん、僕の負けだ」


 ◆


「あちゃ、また詰んだ」

「ポン吉~、ヘタクソじゃ~ん」

「大丈夫だよスゥ、もう一回やろう!」

「それ、あたしが言ったパターンだし!」

「今度は勝てるさ! きっと!!」


 僕は次に、宝石3個を賭けた。


 ◆


「おいらの勝ち~!」

「んー、またもや負けちゃったかー」

「勝負はこれで、5分5分(・・・・)だな!」

「そうだねえ」


 たしかに、勝率は5割だった。

 けれど、リターンが倍なので、宝石は順調に増えている。もちろん、獲得分はすぐさまリュックに仕舞っていた。勝ちすぎてる印象を与えないために。


 ありがとう、アガベ。君が宝石持ちで本当によかった。みんなからかき集めると大変だったからね。金払いのいい富豪から取るのが一番効率的だよ。

 なお、僕はTRPGのミニゲームで散々この手のゲームをやったことがあり、必勝法も知っていた。

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