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マンション型ダンジョンの101号室で特大のガバをかましたら、次の部屋が133号室だった  作者: 葦原エイ


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7/10

7話目 こうざんで型抜き

「な、なんで!?」


 153の鍾乳洞は、僕の驚き声がよく響いた。


「イキナリ倍って!?」

「ポン吉、何~?」

「ああ、スゥ。見てくれてる人が、200万人に増えてるんだ!」

「ふ~ん」


 マイペースなスゥを見て、僕も急速に冷静さを取り戻した。


「――スゥは、あんまり驚かないんだね」

「だって、数字が増えるだけで、リアクションがないんだもん。1Mって数字が、2Mになってるだけだし」

「ああ、これはミリオンのMで、100万人が200万人になったって意味でね……」

「え~っ? 本当にそんな大人数が見てるの~?」

「いるハズ……だけどなあ」


 実感が湧かないのは、僕も同じだ。



L:はっはっは! 俺様が骨身を削った結果、200万人だぜ!b

L:いや~、広めるのは骨が折れたぞ!?(照



「Lの骨ジョークって、まだ続いてたんだ」

「マスター・ポン吉」


 宙を滑るようにタクローが戻ってきた。


「153ノ鍾乳洞ハ、クビレノアル、イワバ瓢箪型デシタ」

「おー、偵察ありがとう、タクロー」

「ソシテ、向コウ側ノ鍾乳洞ニハ、スゥノヨウナ精霊ガ、ツルハシヲ持ッテコチラヲ見テイマシタ」

「え? 敵だったらヤバいな」

「はいは~い、あたしがいま~す!」


 スゥが僕らを《透明》にしてくれたので、そぉっと隣の鍾乳洞をのぞいてみる。


(むむぅ~、あたしと同じくらいの子かな?)

(受付っぽい、カウンターの奥に座ってるね)


 三角帽子に青いつなぎを着た、かわいらしい子供精霊が、ツルハシをカウンターに乗せて頬杖をついていた。《透明》なこちらに気付いた様子はない。


(ポン吉~。今度の看板は2つあるよ)

(ああ、本当だね)


 カウンターの両脇には、いつもの白看板と、見慣れない黄色看板があった。


(白いほうは、僕らの知ってるやつだ)



――――――――――――――――――――


 153 鉱山





――――――――――――――――――――



(んじゃさ、黄色いのはな~に?)

(特別なルール……かなあ)


 そこにはこう書かれていた。



――――――――――――――――――――


     こうざんの注意事項


 こうざんはみんなのものです。

 取り過ぎないよう気をつけましょう。


――――――――――――――――――――



 初めて出てきた別の看板だ。なるべく守っておきたい。


 僕らは1度、自分たち側の鍾乳洞に引っ込んだ。


「ポン吉~、どうする?」

「部屋名を考えると、掘るんだと思う。槍だと穂先が欠けそうだし、受付でツルハシを借りたいね」

「じゃあ、消えずにそのまま?」

「うん。堂々と行こう。そして、正攻法で掘る」

「もし、あの子が敵だったら?」

「僕は死ぬ」

「――戦わないの!?」

「ああ」


 僕は重々しくうなずいた。


「子供の精霊を槍で刺したら……、僕が社会的に死ぬ」



L:www 笑かすな、お前ww

L:こっそりヤってもいいんだぞ?w



「視聴者数が多すぎるかなあ、誰かさんのおかげで!」


 僕は嘆息しつつ、楽しそうに三角帽子を揺らしてる子供精霊を見た。


「それに……正解が敵対ルートだったとしても、最初に選ぶのは友好だよ」


 僕らは受付へと向かった。カウンターの向こうにいた精霊は、パアッと顔を輝かせる。


「はじめての方ですか!? ボクはミノルって言います!」

「うん、僕はポン吉だよ。そのツルハシで、奥の壁を掘るのかな」

「はい! ボクらはそこから宝石を取ってます!」

「なるほど」


 拡張工事じゃなかったんだ。ってことは、一気にクリア条件が見えてきたかな。


「はい、どうぞ!」


 ミノルくんから、小型のツルハシを借り受けた。


「あのさ、ミノルくん。僕たち、借りるお金を持ってないんだけど」

「大丈夫ですよ! 鉱山はみんなのものですから!」

「そう? ありがとう」


 僕らは奥の壁へ行った。下のほうは小さな精霊たちが掘り進めていたようなので、僕は上部をカツンカツンと掘っていく。


「おっ」


 ころりん、と、ひとかたまりの石が取れた。よく見ると、ちょっぴり赤い宝石が見えている。


 10個取った時点で、手を止めた。


「――このままだと、クリアじゃないっぽいな」

「ねえ、ポン吉~。ミノルに聞いたらさぁ、石を削って宝石を取り出してるんだってー」

「やっぱり」


 ミノルくんは、てててーっと走ってきて、ノミなどの道具一式を差し出してくれた。


「はい、これもどうぞ!」

「ありがとう、ミノルくん」


 今度はそれを借りて石を削り始めた。ひんやりした地面に座り、少しずつ削っていくが、遅々として進まない。


「んー、細かい作業だからなあ……。どこまで宝石があるのかさえ分かれば、大胆に削れるんだけど……」

「ワタシ、分カリマスヨ」

「えっ? タクロー、どうやるんだい?」

「オ見セシマス」


 僕が削っていた塊をぐるりと周回したタクローは、ホログラムで3Dの石を出現させた。


「材質ノ違イカラ、宝石ト思ワレル場所ヲ赤、ソレ以外ヲ青デ表示シマシタ」

「おおー! 格段にスピードアップできるよ! ありがとう、タクロー!」

「タクロー、すごーい!」

「オ役ニ立テテ、光栄デス」


 今度は大胆に楔を打ち込める。適度な強さで叩くと、綺麗に石が取れていった。これを繰り返すことで、中にある大粒の宝石が姿を見せていく。


「あたしもやるー!」

「いいよ、みんなでやろう」

「ボ、ボクも参加していいですか?」

「もちろん」


 それぞれが選んだ石も、もちろんタクローのスキャンつきだ。


「へへ~ん、あたしは指でやるもんねー」


 鋭い指の骨で、コリコリと削るスゥ。


「おっ、うまいね、スゥ」

「フフ~ン。な~んかあたしさぁ、昔こういうのやった覚えあるんだよね~」

「お祭りの屋台で、型抜きとか?」

「多分そう」



L:俺も、親類のちっこいの連れて小さな縁日に行ったな

L:型抜きでメチャクチャはしゃいでたぞ



「へぇー、まだまだ人気あるのか……っと、この宝石は青だね」

「あたしは緑だったよ~」

「ボクは銀でした!」

「よし。じゃあみんな、取り出せる直前で止めて、他のをどんどん削っていこう」

「お~!」


 型抜きの完成がクリアだと踏んだ僕らは、ワープ前の時間で全部掘れるように調整をした。

 そして。


「はい! ボクたちの掘った宝石は、全部で8種類、10個です!」

「ポン吉~、あとは完成でいいよね?」

「うん、一気に仕上げちゃって」


 スゥが1個目を削りきると、鍾乳洞の天井から光が差し込んできた。


「やった~!」

「ヤリマシタ、“次ノ部屋ハ155”ト出マシタヨ」

「よしよし、予想通り。じゃあ次々削っちゃおう」

「は~い」


 しかし、削りきるたびに上から光が来るのは予想外だった。僕が削った直後にミノルくんが削りきると、演出をキャンセルしてまた同じ光が差し込んでくる。



L:オイ、お前らw バグらせるなよ?w



「10回だからカンベンして」


 キャンセルのときだけ数字が読めなかったので、一応看板の確認をする。



――――――――――――――――――――


 153 鉱山


・鉱山から宝石を手に入れる。



――――――――――――――――――――



 ――ま、全部同じだよね。そりゃそうだ。


 かくして僕らは、宝石10個を手に入れたのだった。


「じゃあミノルくん、道具を返すね」

「はい!」


 僕はツルハシとノミなどを返却した。


「それと」


 僕は赤と銀の宝石をカウンターに置いた。


「これも置いておくよ」

「え?」

「ええええええーっ!?」

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