7話目 こうざんで型抜き
「な、なんで!?」
153の鍾乳洞は、僕の驚き声がよく響いた。
「イキナリ倍って!?」
「ポン吉、何~?」
「ああ、スゥ。見てくれてる人が、200万人に増えてるんだ!」
「ふ~ん」
マイペースなスゥを見て、僕も急速に冷静さを取り戻した。
「――スゥは、あんまり驚かないんだね」
「だって、数字が増えるだけで、リアクションがないんだもん。1Mって数字が、2Mになってるだけだし」
「ああ、これはミリオンのMで、100万人が200万人になったって意味でね……」
「え~っ? 本当にそんな大人数が見てるの~?」
「いるハズ……だけどなあ」
実感が湧かないのは、僕も同じだ。
L:はっはっは! 俺様が骨身を削った結果、200万人だぜ!b
L:いや~、広めるのは骨が折れたぞ!?(照
「Lの骨ジョークって、まだ続いてたんだ」
「マスター・ポン吉」
宙を滑るようにタクローが戻ってきた。
「153ノ鍾乳洞ハ、クビレノアル、イワバ瓢箪型デシタ」
「おー、偵察ありがとう、タクロー」
「ソシテ、向コウ側ノ鍾乳洞ニハ、スゥノヨウナ精霊ガ、ツルハシヲ持ッテコチラヲ見テイマシタ」
「え? 敵だったらヤバいな」
「はいは~い、あたしがいま~す!」
スゥが僕らを《透明》にしてくれたので、そぉっと隣の鍾乳洞をのぞいてみる。
(むむぅ~、あたしと同じくらいの子かな?)
(受付っぽい、カウンターの奥に座ってるね)
三角帽子に青いつなぎを着た、かわいらしい子供精霊が、ツルハシをカウンターに乗せて頬杖をついていた。《透明》なこちらに気付いた様子はない。
(ポン吉~。今度の看板は2つあるよ)
(ああ、本当だね)
カウンターの両脇には、いつもの白看板と、見慣れない黄色看板があった。
(白いほうは、僕らの知ってるやつだ)
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153 鉱山
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(んじゃさ、黄色いのはな~に?)
(特別なルール……かなあ)
そこにはこう書かれていた。
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こうざんの注意事項
こうざんはみんなのものです。
取り過ぎないよう気をつけましょう。
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初めて出てきた別の看板だ。なるべく守っておきたい。
僕らは1度、自分たち側の鍾乳洞に引っ込んだ。
「ポン吉~、どうする?」
「部屋名を考えると、掘るんだと思う。槍だと穂先が欠けそうだし、受付でツルハシを借りたいね」
「じゃあ、消えずにそのまま?」
「うん。堂々と行こう。そして、正攻法で掘る」
「もし、あの子が敵だったら?」
「僕は死ぬ」
「――戦わないの!?」
「ああ」
僕は重々しくうなずいた。
「子供の精霊を槍で刺したら……、僕が社会的に死ぬ」
L:www 笑かすな、お前ww
L:こっそりヤってもいいんだぞ?w
「視聴者数が多すぎるかなあ、誰かさんのおかげで!」
僕は嘆息しつつ、楽しそうに三角帽子を揺らしてる子供精霊を見た。
「それに……正解が敵対ルートだったとしても、最初に選ぶのは友好だよ」
僕らは受付へと向かった。カウンターの向こうにいた精霊は、パアッと顔を輝かせる。
「はじめての方ですか!? ボクはミノルって言います!」
「うん、僕はポン吉だよ。そのツルハシで、奥の壁を掘るのかな」
「はい! ボクらはそこから宝石を取ってます!」
「なるほど」
拡張工事じゃなかったんだ。ってことは、一気にクリア条件が見えてきたかな。
「はい、どうぞ!」
ミノルくんから、小型のツルハシを借り受けた。
「あのさ、ミノルくん。僕たち、借りるお金を持ってないんだけど」
「大丈夫ですよ! 鉱山はみんなのものですから!」
「そう? ありがとう」
僕らは奥の壁へ行った。下のほうは小さな精霊たちが掘り進めていたようなので、僕は上部をカツンカツンと掘っていく。
「おっ」
ころりん、と、ひとかたまりの石が取れた。よく見ると、ちょっぴり赤い宝石が見えている。
10個取った時点で、手を止めた。
「――このままだと、クリアじゃないっぽいな」
「ねえ、ポン吉~。ミノルに聞いたらさぁ、石を削って宝石を取り出してるんだってー」
「やっぱり」
ミノルくんは、てててーっと走ってきて、ノミなどの道具一式を差し出してくれた。
「はい、これもどうぞ!」
「ありがとう、ミノルくん」
今度はそれを借りて石を削り始めた。ひんやりした地面に座り、少しずつ削っていくが、遅々として進まない。
「んー、細かい作業だからなあ……。どこまで宝石があるのかさえ分かれば、大胆に削れるんだけど……」
「ワタシ、分カリマスヨ」
「えっ? タクロー、どうやるんだい?」
「オ見セシマス」
僕が削っていた塊をぐるりと周回したタクローは、ホログラムで3Dの石を出現させた。
「材質ノ違イカラ、宝石ト思ワレル場所ヲ赤、ソレ以外ヲ青デ表示シマシタ」
「おおー! 格段にスピードアップできるよ! ありがとう、タクロー!」
「タクロー、すごーい!」
「オ役ニ立テテ、光栄デス」
今度は大胆に楔を打ち込める。適度な強さで叩くと、綺麗に石が取れていった。これを繰り返すことで、中にある大粒の宝石が姿を見せていく。
「あたしもやるー!」
「いいよ、みんなでやろう」
「ボ、ボクも参加していいですか?」
「もちろん」
それぞれが選んだ石も、もちろんタクローのスキャンつきだ。
「へへ~ん、あたしは指でやるもんねー」
鋭い指の骨で、コリコリと削るスゥ。
「おっ、うまいね、スゥ」
「フフ~ン。な~んかあたしさぁ、昔こういうのやった覚えあるんだよね~」
「お祭りの屋台で、型抜きとか?」
「多分そう」
L:俺も、親類のちっこいの連れて小さな縁日に行ったな
L:型抜きでメチャクチャはしゃいでたぞ
「へぇー、まだまだ人気あるのか……っと、この宝石は青だね」
「あたしは緑だったよ~」
「ボクは銀でした!」
「よし。じゃあみんな、取り出せる直前で止めて、他のをどんどん削っていこう」
「お~!」
型抜きの完成がクリアだと踏んだ僕らは、ワープ前の時間で全部掘れるように調整をした。
そして。
「はい! ボクたちの掘った宝石は、全部で8種類、10個です!」
「ポン吉~、あとは完成でいいよね?」
「うん、一気に仕上げちゃって」
スゥが1個目を削りきると、鍾乳洞の天井から光が差し込んできた。
「やった~!」
「ヤリマシタ、“次ノ部屋ハ155”ト出マシタヨ」
「よしよし、予想通り。じゃあ次々削っちゃおう」
「は~い」
しかし、削りきるたびに上から光が来るのは予想外だった。僕が削った直後にミノルくんが削りきると、演出をキャンセルしてまた同じ光が差し込んでくる。
L:オイ、お前らw バグらせるなよ?w
「10回だからカンベンして」
キャンセルのときだけ数字が読めなかったので、一応看板の確認をする。
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153 鉱山
・鉱山から宝石を手に入れる。
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――ま、全部同じだよね。そりゃそうだ。
かくして僕らは、宝石10個を手に入れたのだった。
「じゃあミノルくん、道具を返すね」
「はい!」
僕はツルハシとノミなどを返却した。
「それと」
僕は赤と銀の宝石をカウンターに置いた。
「これも置いておくよ」
「え?」
「ええええええーっ!?」




