6話目 ウナギの怪
電撃を受けてスゥは吹っ飛ばされた。
「あ、あうぅ……」
「スゥ!」
慌てて駆け寄り、抱きかかえて走り去る。
「おい、ヌシ! 何で攻撃した!」
「フフン! 電気ウナギたるワシの川へ、大人しく入れば良かったものを! まあよい、お主らはとっくにワシの餌食よ!」
「くっ……」
タクローが、スゥの全身をスキャンした。
「状態ヲ、チェック中……判明。損傷ハ無イデスガ、ショック状態デス」
「どうすれば治る?」
「安静ニシテイレバ大丈夫デス」
ふう……、不幸中の幸いだったか。
L:油断したな、ポン吉。悩みの解決でクリアだと早合点しちまったか
「ああ……。会話できるってことは、ウソも言えたんだ」
全員がタクローとは限らない。
僕だって、ミーシャ相手にウソをついた。
「今度は、こっちがダマされただけさ」
L:なら、俺たちも遠慮はいらねえな
「うん。そうと決まれば」
手頃な石をつかんだ僕は、電気ウナギに勢いよく投げた。
ガツッ!
「むぅ!? おのれ、乾いた者め! 卑怯なり!」
「よく言うよ!」
どんどん石を探して手当たり次第ブツけていく。しっかり見ると、わずかに電気ウナギの帯電が分かるので、タクローにはヌシのチャージ完了時を教えてもらい、そこをかわす。タクロー自身もTシールドも、電撃との相性は最悪だろうから、止めずに避けるのみだ。
「あんまり、英雄っぽい行為じゃないけどね」
L:バッカお前。投石ってのは、世界で一番売れてる本に書かれた英雄行為だぞ?
L:羊飼いが巨漢倒すシーンとか大人気だよ!
「あー、なら僕らも、向こうの方が大きいからセーフか」
周りの石は粗方投げ尽くしたので、ちょっと近めに寄る。電気ウナギはもうフラフラだ。
「お、お主……」
「なんだ!?」
「――川に、入ってこい」
「誰が入るか!」
そりゃあ今後は、川に入ってクリアする人も出るんだろうけどさ。
それは今じゃないし、僕でもない。
思いきり投げた最後の石が致命傷になったらしく、巨大電気ウナギは唸りながら消滅した。
直後、空から光が差し込んでくる。
「ヤリマシタ。“次ノ部屋ハ153”ト出マシタヨ」
「ふぅ……。危ない所だったね」
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152 川のヌシ
・川のヌシを倒す。
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L:お? この部屋、これで終わりか
L:なんか、ちっこい電車の先に針がついてて、風船どけるゲームみたいだったな
「ユルい見方だねぇ、L。実は全滅の大ピンチだったんだけど」
僕はスゥをなでた。
「よく留まってくれたね、スゥ」
「えへへ……」
ショックから目覚めた功労者は、さっと手を出した。
「ごほうび、ちょうだい?」
――本っ当に、現金だなあ。
僕が苦笑しながらカロリーメイトを一本渡すと、満足げにポリポリ食べ始めるのだった。
「あ、でもね」
食べる手を止めるスゥ。
「あたしが川から戻ろうとしたのは、ウナギの電気に気付いたわけじゃなくて。昔、川でイヤなことがあった気がしたの」
骨の左手で自分を指すスゥ。
「ほら。あたしだって、なんとなくは分かるもん。ポン吉は、こんな感じで骨がむきだしじゃないでしょ?」
「スゥ……」
「今のあたしは、上級精霊だけど。それってきっと、人として死んじゃったあと、こうなったのよ」
L:フーム……、過去が断片的に蘇るようだな
L:全体の記憶がないのは、壮絶な死に方をしたことによる自己防衛機能ってトコか?
「もしくは、シンプルに『転生したから』でいいかもね」
転生前の記憶を持ってる人は稀っていうし。
「ともあれ、スゥはスゥだよ」
僕は、レインコートのフードごしにそっと撫でた。
「これから、楽しい思い出をいっぱい作ればいいのさ」
「マスター・ポン吉ノ言ウ通リデス」
「えへへ……。ポン吉、タクロー、ありがとう」
L:――あれ? 俺への礼は?
「え~? Lって、なんかお礼言うようなことしたっけ?」
L:待てコラ、記憶の考察をしただろ?
「それ、メンドイ話だったから、いいよ」
L:ぐはあ! こ、この骸骨少女め……!
L:21世紀にもなって、電撃食らうガイコツの絵面を拝ませるとはな! 骨身にしみるぜ!
何を言ってるんだか。
体が透けてきた。153へのワープが始まったらしい。
「じゃあ、L。次の部屋でまたすぐ会えるね」
L:おう! 視聴者への呼びかけをしといたからな。今度は倍ぐらいになるぜ!
「さすがに頭打ちでしょ? でもまあ、ありがとう」
そして僕らはワープし、ほんのりと明るい鍾乳洞に来た。
やれやれ、そんな劇的に変わるわきゃないよ……と思いつつ、気にはなるのが、底辺根性の抜けない悲しさか。
苦笑しながら、たいして変化のないであろう同接数を確認した。
「――え?」
200万人。
「ええーっ!?」
1分で100万人増えるの!?




