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マンション型ダンジョンの101号室で特大のガバをかましたら、次の部屋が133号室だった  作者: 葦原エイ


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4話目 報われるのが確定だなんて、泣けちゃうぐらいに優しいさ

 僕の配信が大バズりしていた。まる。


「――いやいや、増えすぎでしょ!」

「ポン吉、どったの?」

「えっとね、スゥ。僕らの配信を見てる人が、100万人もいるらしいんだ」

「えーっ!? スゴイじゃん、ポン吉! ヤッホー!」


 スマホに向かって骨の手をブンブン振っていたスゥだが、やがて首を傾げた。


「……コレ、本当に見られてる?」

「あー、リアクションがないと分かりづらいよね」


 これまでのイベントと言えば、スゥに出会って、耳をつけて、ミーシャの悪魔退治に付き合ったくらいだ。

 コメントも流れないし、100万人の数字に現実味がないのは僕も同じである。



L:よお、主演俳優と女優よ!



「出たな、極悪GMめ」



L:ん~? 有言実行の天使GMがどうしたって~?(幻聴



「じゃあ、ペ天使GM。なんでこんなに視聴者が増えたのさ?」



L:そりゃあもう、『熊クリア』からの新ルーム突入で、外が大騒ぎだからだな!

L:一躍、時の人ってワケだ!



「ふーん。なんか、人生で一番注目されてる気分だよ」


 でもこれは、一時的なものだろう。

 さらに凄い探索者が出てきたら、すぐ忘れ去られるぐらいのね……ん?




「――ケテ。タ、ス……ケ、テ……」




 機械音声みたいな、抑揚のない声。


「ポン吉~、なんか聞こえたよ?」

「うん。『助けて』かな」

「小さい声なのに、よく分かったね」

「そういえば、確かに」


 タヌキ耳の効果かな?


 モフモフ耳を軽くなでた僕は、軍手をはめた。

 スゥと一緒に、ガレキの山を登っていく。


「たしか声は、この辺りから……。もし踏んでたらゴメンね」


 慎重にガレキをどけると、奥から鈍い銅色の球体が現れた。

 中心の赤いランプが、まるで心臓のように明滅している。


「えぇっと、そこのセパタクローっぽい君かな? 助けてって言ったのは」

「ソウ、デス……」


 そっと両手で取り出すと、赤い光が弱々しく揺れた。


「ケレドモ、モウ、ダメ……」

「どうして?」

「ワタシニハ、ねじガ、アリマシタ……。ケレド、1コ、ナクシマシタ……」

「ネジ、か」


 僕はガレキの山を見回した。


「特徴はある?」

「……サガスノ、デスカ?」

「もちろん」

「えぇ~っ!?」


 悲鳴を上げたのはスゥだった。


「ポン吉、ネジって知ってる!? 絶対こんぐらいだよ!?」


 小指の骨を外して見せるスゥ。


「しかも、この山のどっかって! どけた物までジャマになるよ!」

「たしかに、別の場所へ置かないとね」


 僕は隣の平地を指した。


「あそこに置いとこう」

「うえぇーっ!? あたし、超ヨケーなこと言った!?」

「いや、ナイスアイデアだよ」


 静かに球体を置いた僕は、「見た目は普通だけど専用の特殊ネジ」と確認を取ったのち、ガレキを運び始めた。


 目覚まし時計。

 電気ポット。

 割れた板。


 スゥも途中から、ふて腐れつつも手伝ってくれる。


「モウシワケ、ナイ……」


 背後で機械音声がした。


「ワタシノ、ねじハ、ミツカラナイ……。ソット、シトイテ……」

「そんな風に思いながらも、『助けて』って声が出たんだよね?」


 赤いランプが、かすかに揺れた。


「ナゼ、ソコマデ……」

「ぶっちゃけ、これがクリア条件っぽいからさ」



L:うはっww 台無しだwww



「うるさいね、この悪友は」


 スマホを一瞥し、即しまう。


「でも、『必ずネジがある』って分かってるのは、優しいよ」

「……ヤサシイ?」

「うん。報われるのが確定だなんて、泣けちゃうぐらいに優しいさ」


 現実は、違う。


 頑張っても、徒労に終わることなんて山ほどある。


 でも、ここでは“ある”と分かっている。


「だから、僕は探せるんだ」

「僕『ら』ね!」


 スゥが大声で訂正した。


「それと、さ……? 1人で寂しいときに、『助けて』って言う気持ち、ちょっと分かるから」

「スゥ……」

「だから、助けてあげたいかなぁって」

「――いい子だね、スゥは」

「えっへへ~」


 照れ笑いしたスゥは、銅色の球体へ向き直った。


「ねえ。ところであなた、名前は?」

「ナマエ……。ジョウホウ、タンマツ、でばいすト、イイマス……」

「なっが~い!」


 スゥはほほを膨らませた。


「あたしなら、スゥ! ポン吉なら、ポン吉! そういった、呼びやすい名前!」

「ケンサクチュウ……。トクニ、ナシデス」

「そっかあ」


 スゥは球体をじっと見た。


「じゃあ、タクローだね!」


 僕は怪訝な顔をした。


「――スゥ、なんで?」

「だって、ポン吉がさっき言ってたじゃん。『なんとか、たくろー』って」

「ああ、セパタクローね」

「ほら~! だからタクロー!」


 自信満々の命名だった。


「ワタシノ、ナマエガ……たくろー……」


 球体の内部が、キュイインと鳴る。


「セッテイ、カンリョウ。ワタシノ、ナマエハ、たくろーデス」

「わ~い! あたしが名付け親~!」


 スゥがぴょんぴょん跳ねた。


「ねえ。じゃあタクローは、なんでここにいたの?」

「マエノ、アルジガ、シュウリ、シマシタ……」

「うんうん」

「デモ、ねじガ、ナクナッテ、ステラレマシタ……」

「ありゃ~」


 ――ん?


「あのさ、タクロー。前の主とやらが修理してた場所って、ここじゃないよね?」

「ほえ?」

「だって、ネジをなくした時点だと、まだ修理中《・・・》だったハズだから。わざわざココに昇って作業しないでしょ?」

「あっ……、ホントだ!」


 タクローのランプが明滅する。


「――タシカニ。シュウリ、シテタノハ、アナタタチガ、モノヲ、オイテイル、バショデシタ……」

「やっぱり!」


 僕は勢いよく山を下りた。


「よーし、俄然やる気が出てきたぞー!」

「なぁんだ、ポン吉もしんどかったんじゃ~ん」


 スゥもタクローを抱えて下りてくる。


「でも、この平地だって広いよ? 頑張って探さないと」

「そこは、持ってきたヘッドライトを使おう」

「ほえ? 暗くないよ?」

「うん。明るくするためじゃないんだ」

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