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マンション型ダンジョンの101号室で特大のガバをかましたら、次の部屋が133号室だった  作者: 葦原エイ


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3/7

3話目 くまVS人間

「同朋よ。この小屋に、人間どもが襲撃してくる」

「うん、そこをミーシャと一緒に撃退するんだね? いいよ」

「ありがとう、ポン吉」


 ミーシャと名乗った熊人は、「装備を調える」と言い残して別の部屋に行った。僕は胸ポケットからスマホを出す。



L:イヤ~、笑ったな!(耳だけに

L:おーっと。遅くなったが、ハッピーニュー「イヤー」!



「初っ端からダジャレかい」



L:おいおい、バイリンガルは知的だろ?(伊達めがねクイッ

L:ったく、熊め。耳を疑わないなんて耳を疑うぜw



「笑い事じゃないってば」


 参ったね。さっきは安請け合いをしたけどさ。


「熊退治に来たのが普通の人だったら……、僕は戦えない。自決するよ」



L:思いつめんでもいい気はするがね

L:人型モンスターだっていっぱい殺したろ



「それはTRPGの話。ここは、異空間だろうと現実だよ」


 そう、現実だった。スゥと握手したときの骨の感触も生々しかったし、ミーシャの嗅覚で探り当てられたときなど、生きた心地がしなかった。


「僕だって命は惜しいから、盾ぐらい構えるけどさ」



L:おー、Tシールドか



「テック同好会を巻き込んで作った、スゴイ改造鍋だよね」


 ティファールの新しい鍋を買った先輩が、古い方(こっちはティファールじゃない)を処分すると言うので譲り受けたのだ。そのさい、盾の裏面に、なめした革を接合して持ち手を作っている。

 その後、ノリでチャンバラをやって、意外に鉄鍋への攻撃はスベって腕に当たると分かったため、表面にスパイクまでつけた代物だ。



L:セッション中、「英雄の盾」として直接お前へ渡したときは大ウケだったなw



「あれは笑い死にしかけたよ。ナニ仕込んでるかな?」


 ミーシャが来たので、スマホを胸ポケットにしまった。


「ポン吉よ、防具はそれだけか?」

「うん。盾だけ持って、あとはよけるよ」

「なるほど」


 すでに革鎧を着ていたミーシャは、トゲ付きの肩当てと膝当ても装着していた。巨漢がさらにゴツく見える。


「慣れ親しんだ装備なら、それが良いな……むっ?」


 鼻をひくつかせたミーシャが、素早く外に出た。


「ポン吉。東から来たぞ」


 僕も出ると、道の向こうから青い集団がやってきた。皮膚も角も真っ青で、貧弱な翼にひょろ長い尻尾をつけている。


「――あれ? まさかミーシャ、奴らが?」

「ああ……人間どもだ」


 いや、悪魔だよ?


 おいミーシャ! あれ悪魔だって!! 肌見ろよ、真っ青だろ!?


 スマホがひっきりなしに震えている。あー、Lもウケまくってるなコレ。


「ポン吉よ、俺が打って出る。お前はムリをするな」

「うん。お言葉に甘えるね」


 さすがにつっぱり棒よりは片手槍が強いだろうと、武器だけは借りていた。右手に槍、左手にTシールドを構える。


「ケヒャッハハハー!」


 甲高い奇声とともに襲ってきたのは、貧相な体躯の悪魔(・・)たちだった。大部分はミーシャを囲んだが、僕の方にも少し来る。向こうも槍を持ち、一体が大きく振りかぶってきた。


 ガッキィィイン!


 ――よし、止まる!


 でも、あえてフラついてみせた。


「うあぁ~……。僕、怖いなー。こんな感じで振りかぶられたら、重いし、スゴく怖いなー」

「ヒャッハー! バカめ、いいこと聞いたぜー!」


 ――よし、悪魔の世界に「まんじゅうこわい」は無かった。


 正直、大振りならば怖くないのだ。どの方向にブツけてくるか、余裕で分かるから。

 刺してくる方が、動きの「起こり」がつかみづらいため、よっぽど僕には怖かった。


 ――悪魔のくせに、敵の言うこと信じちゃダメだってば。


 小屋を背にした僕は、ほどほどに槍で牽制しつつ、悪魔の槍を盾でガンガンと止めていく。――ふぅ~、ラク。盾アリと盾ナシの勝負とか、あんまり見ないハズだよ。盾もった方が爆アドだもん。


 もちろん、攻撃力のない僕だけならジリ貧だったろうけど、コッチには強い味方がいる。


「ぬぅん!!」


 ミーシャが長槍を大回転させて、数体の悪魔を一気になぎ倒していた。――うん、武器と知恵をもった直立するヒグマとか、絶対戦いたくない。体格差ありすぎだよ。

 倒したところをザクザク刺していくミーシャ。悪魔どもは、断末魔を上げて次々と消滅していった。――あのー、もうコレ、ミーシャ1人でいいんじゃないかな?


 かくして僕らは、悪魔の集団を退治したのだった(主にミーシャの力で)。


「あっ」


 最後の一体が消えたさい、僕に光が差し込んできた。見上げると、“次の部屋は150”の文字が。――えーっ? 134から数字が結構空くってことは、これが特殊クリア? つまり、熊人ミーシャを倒すのが「通常」?


「――逆でしょ、難易度」



 ◆



「ポン吉よ、旅立つのか」

「うん。用事は済んだみたいだからね」

「ならば、餞別をやろう」


 ミーシャは、僕がさっき使った槍を差し出してきた。


「持っていくといい。役に立つぞ、人間(・・)」

「ありがと……え?」


 戸惑う僕を、ミーシャは不敵に笑った。


「案ずるな。人間にもいい奴はいると分かった」

「――大した役者だよ、ミーシャ」


 鼻で嗅ぎ分けるのだから、むしろ納得だ。ヒトと獣人の区別ぐらい、匂いなら楽勝だろう……ってか、悪魔と人間は近いのね、トホホ。


「ミーシャ。この槍は大事に使わせてもらうよ」

「ああ、もう1人にもよろしく頼む」

「――それも分かってたんだ」

「ガッハッハ。もし襲ってくるなら、返り討ちにしたがな」


 豪快に笑うミーシャ。

 片手槍を受け取った僕は、改めて御礼を述べたのち、看板へと歩いていった。



――――――――――――――――――――


 134 最低な人間



・悪魔を全員倒す


――――――――――――――――――――



 ――ふぅ、ちゃんと悪魔(・・)だった。「元は人間かも?」って、ちょっぴり気になってたんだよ。


 完全に憂いの消えた僕は、草むらを見回した。


「スゥ、熊さんにはバレてたって」

「う~ん、そんなら行けば良かったなー」


 すでに透明化の解けていたスゥは、ほほを膨らませた。


「最初はあたしね? 助かって良かったーって、ホッとしてたんだけど。ちょっと過ぎてから、見てない所でポン吉が死んじゃったらヤダなーって」

「そういえば、僕が死んだとき、スゥってどうなるのかな」



L:俺の見た限りだと、リタイアした奴らにも精霊はついてきてるな



「ふぅん。スゥ、ずっと一緒だってさ」

「そんなら、あたしが助けてあげる」


 僕をペシペシ叩くスゥ。


「どうせ行くなら、とことんまで行こっ!」

「ありがとう、スゥ」



L:よかったな、ポン吉^^

L:お、そうそう。槍でスゴイ発見をしたから、振ってみろ



「え、どういうこと?」


 言われるままに、ブンブン振ってみた。



L:シェイク、スピアー



 ――ぽーい。



L:うおおおおい! 投げ槍になるな! ポン吉には重い槍がないのか!?



「やかましいよ」


 僕は槍を回収した。


「そうだ。この槍といえば、ミーシャは役者だったね。寝首を掻こうとしてたら御陀仏だったよ」



L:ふぅ~む、「この世はすべて舞台」、か……。やはり、シェイク・スピアー



「槍ってもう、その名前で決定?」

「あ、ポン吉~。体が透けてきてるよ~」

「本当だ、スゥもだね」


 部屋のイベントに不参加でも、やはり一蓮托生らしい。



L:次は16分後か。――長いな



「いつ出るか分かったし、すぐだよ」



L:ま、……そうだな

L:んじゃあ次までに、情報集めと、このチャンネル広めとくわ



「あんまり期待しないで待ってるよー」


 僕は槍を振りつつワープした。




 転移した先は、廃品がうずたかく積まれたゴミの集積場のような場所だった。周りは空き地で、辺り一面、鉄くずの匂いが漂っている。


「ポン吉~、あそこにサビた看板があったよー」

「おー。今回のはよく見つけたね、スゥ」


 周辺のサビ同様、看板も茶色く同化していたため、結構見つけづらかった。



――――――――――――――――――――


 150 瓦礫の山





――――――――――――――――――――



「ふむふむ、多分ガレキに何かあるんだね。じゃあ、L。さっきのミーシャの部屋みたいに、何か知ってれば……って、アレ?」


 まーた居ないのか。


 さっきもリスナーが0人だったし、ワープのときは一旦接続が切れる仕様とかかな?


 僕は、何の気なしに同接数を見た。




 100万人。




「――え?」


 視聴者……ひゃくまんにん!?

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