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第一章 紅蓮の咆哮 8話 【深紅の核】
少年は近藤が突き出した漆黒の刀へ手を伸ばした。
指先が柄に触れた瞬間、磁石のように掌へと吸い付く感覚があった。異常なまでに手に馴染む、鮮やかな赤い柄。少年が迷いなく力を込めると、今まで3番隊の隊員たちが数人がかりで運んでいたはずの巨大な重鉄が、まるで羽のように軽々と持ち上がった。
近藤のような筋骨隆々とした体躯ではない、小柄な少年が片手で掲げたその光景に、道場中が静まり返った。直後、「嘘だろ……あんな細い身体で……?」と驚愕の声が波のように広がる。
少年は自身の腕の力ではない何かに導かれるまま、ゆっくりと鞘を払った。
ジャキィィィィンッ!
引き抜かれた刀身は、黒い闇そのものだった。しかし、刃を研ぎ澄ます「はばき」の部分には、あの演習場で大型個体を葬り去った時に見えた、あの「紅い核」が埋め込まれていた。
「……これは、あの時の……」
少年が呟くと、核がドクン、と大きく脈動し、漆黒の刃全体に紅い光の紋様が走り始める。それは紛れもなく、彼が命を削って砕いた、あの異形の魂そのものだった。
冷徹な漆黒の囁きと、近藤の熱い眼差し。
二つの力に挟まれながら、少年は紅い核が宿る黒刃を高く掲げた。
その声は少年の脳髄を焼き尽くすほどに響き渡り、彼は新選組という過酷な運命の渦中へと、正式にその身を投じたのである。




