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紅蓮の絆 —果てなき戦記—  作者: 縷禾
第五章 真実の地、富士山へ
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第五章 真実の地、富士山へ 54話【激突、地底のコロシアム】

「俺、囮になります!」


葵は言い捨てるが早いか、闘技場の中央を駆け抜けた。その背後で、黒い霧を纏った二体のドラゴンが、重厚な音を立てて大地を揺らしながら追走を開始する。


「土方、左を頼む! 俺が右をやる!」


近藤の咆哮とともに、陣形が二つに割れた。土方歳三はすぐさま周囲の隊員たちに的確な指示を飛ばし、左側のドラゴンへ向かって跳躍する。

目の前の個体は、かつて富士の頂上で死闘を演じたものよりも小ぶりかもしれない。だが、その一振りで岩盤を砕く腕力と、口から漏れる猛毒の瘴気は健在だ。巨大な体の下に入り込み、足元を斬りつけることしかできない土方たちにとって、圧倒的な高低差が壁となって立ちはだかる。


「土方さん、俺が羽を落とします!」


原田左之助が槍を構え、天を指す。


「俺も付き合うぜ!」


藤堂平助も迷わず後に続いた。


「よし! 落としてこい! ほかは俺と一緒に誘導だ!」


土方は刀を握り締め、正面に仁王立ちする。その背には死を恐れぬ覚悟が満ちていた。


「お前の相手は、この俺だ!!」


土方の迸る気迫に、左側のドラゴンが一瞬、足を止める。眼下の小さな人間を侮っていた怪物は、その圧倒的な闘志を「排除すべき最大の敵」と認識したのか、低く唸りながら土方へ向かって突進を仕掛けた。


「へっ、羽を使う必要もねぇってか? 甘いな」


土方は鼻で笑うと、迫りくる巨大な爪を紙一重で見切り、刀の峰で力任せに弾き飛ばした。

火花が散る。その一瞬の隙、背後に回り込んだ原田と藤堂が、ドラゴンの巨大な翼の付け根へと狙いを定める。


一方、右側では、囮となった葵がドラゴンの猛攻をかわしながら、自身の刀に龍の核の熱を宿らせ始めていた。闘技場全体が、怒号と鋼のぶつかり合う音で埋め尽くされていく。


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