第五章 真実の地、富士山へ 53話【総統の嘲笑、二体の竜】
悪夢のようなポッドの回廊を抜け、一行が辿り着いたのは、地底深くの巨大な空間だった。中央がぽっかりと円形に深く抉られた、まるで闘技場のような場所。
見上げた先、高台にある制御席に立つ人物を見て、近藤の眼光が鋭く尖った。
「よく来たね、新選組の諸君」
「これはこれは、総統閣下。あの非道な計画、貴様も深く関与していたようだな」
近藤は恭しく礼をする動作を見せながら、その言葉には深い憎悪を滲ませた。しかし、総統は愉悦に歪んだ顔で余裕を見せる。
「ずいぶんと破壊作業に勤しんでいたようだが、研究所がここだけだと思っているのか? 我が計画の拠点は日本中、至るところにあるのだよ」
「……っ!」
総統はゆっくりと階段を降り、コロシアムが見下ろせる箇所まで歩いてきた。背後の扉が轟音とともに閉ざされ、対面にある扉が音もなく開く。そこから現れたのは、かつて葵を襲ったものとは比べ物にならない、漆黒の霧を纏い、瘴気を吐き出す二体の大型ドラゴン個体だった。
「ここは研究所の中心だったんだ。惜しい実験体が複数いるのでね。これは、君たちへの『罰』だよ」
総統は高笑いしながら、悠々と奥の部屋へと消えていく。残された二体の化け物は、低く唸り声を上げ、獲物を物色するように鋭い眼光を走らせた。
そして、二体の巨大な頭部が、同時に一人の隊士をロックオンする。
それは、ドラゴンの核から削り出された刀を帯びた、葵だった。
「……ッ!」
葵の背筋に氷のような殺気が突き刺さる。二体の化け物は、かつて自分の身体を蝕んだ魔力の残り香と、核を奪われた同族への怒りを、葵の中に嗅ぎ取ったのだ。
「葵、下がっていろ!」
土方の鋭い叫びが飛ぶ。しかし、二体のドラゴンは葵を獲物と定め、大地を揺らして突進を開始した。
かつてないほどの死闘が、この地底のコロシアムで幕を開ける。葵の持つ「龍の牙」が、かつての同胞を相手に、今、真の覚醒を迎えようとしていた。




