第五章 真実の地、富士山へ 49話 【響く警報、動き出した猛者たち】
要塞中にけたたましい警報音が鳴り響く。軍兵たちの動きは一気に活発化し、迎撃態勢を整えていくが、それを嘲笑うかのように無線が繋がった。
「……ドジ踏みやがったな、あの新人は」
土方歳三が苦々しく吐き捨てると、すぐさま声を張り上げる。
「野郎ども、隠密は終わりだ! 派手に行くぞ!」
土方自身、もとより隠密行など柄ではなかった。山南は、指令室でそのやり取りを無線越しに聞き、思わず吹き出した。
「ふふ……まったく、あなた達にかかればどんな高度なギミックも、子供のおもちゃ以下ですね」
山南は三番隊の隊員たちに指示を飛ばしながら、穏やかな笑みをこぼす。しかし、その眼差しはすぐに冷静な指揮官のものへと戻った。
「とは言え、油断は禁物です。警戒を怠らないでください。今、葵くんから施設全域の構造データが送られてきました。解析を急いで!」
そう、葵はエレベーターを制圧するのと同時に、施設内の膨大な情報を三番隊へと転送し続けていたのだ。
「……できる新人で助かりますね」
山南が無線で短く礼を言うと、向こうからは穏やかな、しかし覚悟の宿った声が返ってくる。
「いえ、俺にできることをやっただけですよ」
エレベーターへと向かう葵たちの足音、そして東西南北の入り口から雪崩れ込む隊長たちの咆哮。
以前、葵を苦しめた異形の化け物を屠るほどの猛者たちが、軍の防衛線を蹂躙していく。軍にとって最強の防壁であったはずの要塞は、今や新選組という荒波に飲み込まれ、脆くも崩れ去ろうとしていた。
中枢へ繋がるエレベーターの扉が閉まる。
新選組の刃が、いよいよ実験施設の心臓部へと突き刺さる。




