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紅蓮の絆 —果てなき戦記—  作者: 縷禾
第四章 黒き覚醒と家族の絆
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第四章 黒き覚醒と家族の絆 39話 【紅蓮の決意、刀との対話】

異形と化した葵の内側では、激しい嵐が吹き荒れていた。

自分の意志とは無関係に奪われた多くの命。その重圧と罪悪感が、葵の心を押し潰そうとしていた。死んでしまいたい――そんな逃避の念が脳裏をよぎる中、爆音を切り裂くように、聞き慣れた力強い声が響いた。


「葵! お前ならできる!」


それは、たとえどんなに恐ろしい姿になろうとも、自分を見捨てず、救おうとしてくれる近藤の叫びだった。

その言葉が、凍りついていた葵の胸に、熱い火種を灯した。絶望の淵にいた葵の意識が、わずかに浮上する。


(俺を、見捨てないのか……)


葵は意を決して、瞼を開こうとした。そこにあるのは、もはや物理的な視覚ではない。異形の瞳を通して、外の世界を見る。

視界に映ったのは、丸腰で、無防備なまま自分に飛び込んでくる近藤の姿だった。死を恐れぬその背中に、確かな温もりを感じる。


(俺は、まだやれる……)


その瞬間、耳元で妖刀が囁いた。それは、これまでとは違う、葵の意志を認めんとするかのような重厚な響きだった。


『……望め。お前の本能を。我と共に、何を成したいかを選べ』


葵は、異形となったその巨大な右手を強く握りしめた。

指先から伝わる感触。そこには確かに、自分の一部となった刀があった。

以前のような、精神を食い荒らすだけの呪いではない。葵が主導権を握り、刀の力をその身に統合する。


「……ッ!」


葵の全身から溢れていた殺気が、黄金色の激しい闘気へと変貌していく。

外から見れば化け物であっても、その心は今、かつてないほど鮮明に「新選組の一員・葵」として覚醒していた。


近藤が目の前まで迫る。

葵は、刀を構える。しかし、それはもはや近藤を傷つけるためのものではない。自分を縛る「呪縛」を断ち切り、この力を「守るため」の力へと昇華するための、決意の構えだった。

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