表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
紅蓮の絆 —果てなき戦記—  作者: 縷禾
第一章 紅蓮の咆哮
PR
4/62

第一章 紅蓮の咆哮 3話 【試練とイレギュラー】

入団試験が始まって数時間。演習場内は、異形たちの断末魔と新人の荒い息遣いで満たされていた。


新人の額には冷や汗が滲んでいたが、その瞳は冴え渡っていた。

「瞳」を通して見る世界は、異形たちの死角を鮮明に教えてくれる。ここまで、彼は傷ひとつ負わず、群がる中級個体を次々と討ち取っていた。


だが、空気が――変わった。


演習場の奥、霧の向こうから、重苦しい威圧感が押し寄せてくる。

地響きが、先ほどまでとは比較にならない強さで地面を揺らした。


「……なんだ、これは」


新人の視界の端に、信じられない光景が映り込む。

本来いるはずのない、数メートルを優に超える巨大な腕を持つ個体――「大型個体」が、霧を切り裂いて姿を現したのだ。

本来であれば、隊長クラスが総出で挑むような脅威。それがなぜ、新兵の試験場にいるのか。


(ありえない……!)


新人の脳裏に、試験を観戦しているはずの土方副長や参謀の山南の声が蘇る。彼らの表情には驚きはない。これは、偶然の事故ではないのか、それとも――。


逃げろ、と本能が叫ぶ。

しかし、大型個体の巨大な爪が、逃げ惑う他の受験生を虫けらのように叩き潰した。絶望的な光景を前に、新人の足は止まった。


大型個体の虚ろな眼球が、新人を捉える。

獲物を品定めするようなその視線に、恐怖で全身が凍りつきそうになる。だが、新人の胸の奥には、昨日見た近藤局長の笑みが焼き付いていた。


「……ここで死ねるかよ!」


新人は、錆びついた太刀を構えた。

その時、彼の「瞳」がかつてないほど熱を帯びる。


相手の動きが完全にスローモーションに沈んだ。

大型個体が振り下ろす巨大な腕の軌道。その合間、核が宿る胸部へと続くごくわずかな、針の穴を通すような「死角」が、赤く光って見えた。


「見える……!」


新人は地を蹴った。

死の匂いが漂う演習場で、少年は禁断の扉をこじ開けるように、巨獣の懐へと飛び込んでいく。


観戦席では、土方がその様子を静かに、しかし鋭く見つめていた。

「……面白い。試験官を出し抜くとはな」


その言葉が意味するものは何か。試験場という名の地獄で、少年の真の覚醒が今、始まろうとしていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ