第一章 紅蓮の咆哮 2話【鉄の門】
「近藤さん、俺も戦いたいです!」
戦火の余韻が残る中、新人の直訴に近藤は豪快に笑った。しかし、その瞳には局長としての厳しい色が宿っていた。
「いい度胸だ。だがな、新入り。俺たちの隊は、ただの仲良しごっこじゃねぇ。化け物より早く、残酷な死がすぐ隣にいる場所だ。……生き残れるか?」
近藤は背中に担いだ大剣を地面に突き刺すと、傍らで様子をうかがっていた副長・土方へと視線を向けた。
「副長、こいつを入団試験に放り込んでやれ」
「……やれやれ。隊長が拾ってきたからには、相応の覚悟があるんでしょうね」
土方は冷徹な眼差しで新人を見下ろした。その鋭い眼光は、新人の内心の恐怖までも見透かしているようだった。
「新入り。入団試験は明日だ。会場は富士の麓、第一演習場。……生き残って戻ってきた奴だけが、我々の仲間だ」
その試験の内容は、新人の想像を絶するものだった。
入団試験:『地獄の演習場』
内容: 囲い込まれた区域に放たれた、複数の低級~中級の異形を撃破し、制限時間内に生還すること。
生存率: 毎年、受験者の半数以上が命を落とす。怪我で再起不能になる者も少なくない。
試験の目的: 剣の腕前もさることながら、極限状態での判断力と、絶望に屈しない「生存本能」を測るため。
翌日、演習場に足を踏み入れた新人の前には、昨日見たものよりも小ぶりだが、異常に俊敏な動きをする異形たちがうごめいていた。
(近藤さんの背中に追いつくための、最初の関門だ……)
新人は、錆びた太刀を握りしめた。
彼の「瞳」が発動する。周囲の時間がゆっくりと流れ始め、異形たちの筋肉の緊張が、まるで地図のように視界に浮かび上がる。
「……ここだ!」
未来を見切る眼と、憧れがくれた勇気。
新撰組への門を叩くため、少年は初めて自らの手で「死」を切り裂く戦いに身を投じる――。




