第四章 黒き覚醒と家族の絆 34話 【紅蓮の決意、奪還への進撃】
「葵ッ……!」
藤堂平助は、目の前で葵が冷酷な軍の兵たちに引きずられていく光景に、地団駄を踏んで悔しがった。
軍が持ち出した「罪人」という大義名分。ここで軍と正面から斬り合えば、葵が「人間を殺した罪人」として、軍に公式な処刑権を与えることになりかねない。藤堂は、愛刀に手をかけたまま、葵を守るために何もできないもどかしさに歯を食いしばった。
「……連れて行く。あいつを盾にされるわけにはいかねぇ」
藤堂は、連行されていく葵の背中を見送り、すぐさま屯所へ駆け戻った。
その頃、事の顛末を聞いた近藤勇、土方歳三、そして山南敬助の表情は、怒りを超えて静かな氷のようになっていた。
葵が抱えていた女の正体が「軍の実験体」であったこと。そして、軍が葵を「殺人鬼」として利用し、刀ごと奪い取ろうとしていること。そのすべてが、新選組という組織の心臓を抉る行為だと悟ったのだ。
「……俺たちの仲間を、あの腐った実験材料にするだと?」
近藤の言葉は低く、しかし天幕を震わせるほどの殺気を帯びていた。
土方は既に愛刀を腰に帯び、山南は軍の施設への最短ルートを示す地図を広げている。
「軍上層部が隠している汚物、すべてこの際、富士の麓で焼き払う」
土方のその一言が、新選組の総攻撃の合図となった。
夜の帳が下りる中、新選組の隊士たちが集結する。一番隊から五番隊まで、隊長格が先頭に立ち、鬼の形相で軍の隔離施設へと向かう。
かつては共に戦うこともあった軍の陣営だが、今は迷いなど微塵もない。




