表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
紅蓮の絆 —果てなき戦記—  作者: 縷禾
第二章 龍の頂へ
PR
26/62

第二章 龍の頂へ 25話 【神殺しの代償、戦いの終わり】

いにしえより語り継がれてきた伝説の存在――ドラゴン。

その首を地に落とし、新選組はついに「神殺し」という神業を成し遂げた。


勝利の歓声が遠くで響く中、葵の身体からは急速に熱が引いていった。刀に力を吸い取られた反動で、指一本動かす力も残っていない。唇を動かそうとするが、喉からは掠れた吐息が漏れるだけだった。


そんな葵の背中を、近藤の分厚く大きな手が力強く叩いた。


「よくやった、葵」


その声には、部下というよりも、誇るべき仲間を見守るような温かさがあった。

傍らに立つ土方は、整った顔立ちに珍しく柔らかな笑みを浮かべ、少し乱れた髪を指で梳きながら、いつもの毒気を含んだ口調で労いの言葉を投げた。


「やればできるじゃねぇか。……死ぬんじゃねぇぞと言っただろ、生きて戻ってきて正解だ」


二人の言葉が、葵の凍えかけた心を溶かしていく。

土方はそれ以上何も言わず、ドラゴンの切り離された首へと歩み寄った。そこに深々と突き刺さっていた自身の愛刀を、力強く引き抜く。冷徹に血を振り払うと、土方は流れるような動作で刀を鞘へと納めた。


カチン、と硬質な音が静かな山頂に響く。


土方はそのまま、力なく横たわるドラゴンの巨体の胸元へと歩を進める。鱗を切り裂き、その深淵から、激しく鼓動を続けていた核を鷲掴みにした。

ずぶり、と肉から引き抜かれたドラゴンの心臓――それは、新選組がこの地で戦い抜いたことの証であり、新たな戦いへの楔でもあった。


「局長。終わりましたね」


山南が静かに歩み寄り、戦場の全景を見渡す。

空は薄明を迎え、富士の頂を染め上げている。葵は、空を見上げる余力すらなかったが、土方の手に握られた「核」の温もりを感じながら、ようやく深く、長く息を吐き出した。


神を殺した男たちの背中に、朝陽が降り注ぐ。

伝説が終わったのではない。新選組という組織の、真の伝説がここから始まるのだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ