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重度カードゲーマー女子、過労死転生した異世界でも恋愛をプレミして詰んだ件  作者: 酣睡


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98/120

未来の子供たちへ語り継ぐ、勇気と栄誉の物語

上空一万メートル――大気は極限の摩擦と熱量に焼かれ、猛り狂う劫火の坩堝へと化していた。


蒼穹を覆い尽くしていた鉛色の暗雲は、万度を超越する神鳥の怒火に触れるや否や、水蒸気の欠片すら遺さず灰燼へと蒸発した。


その背後より露わとなった天幕は、あたかも灼熱の黄金を溶かし流したかのように、神々しくも毒々しい赤金の光輝を滴らせている。


鋼鉄すら瞬刻にして気化せしめるこの絶対不可侵の神罰領域――その灼熱の渦のただ中にあって、煤と火の粉に塗れたトタンの工事用ヘルメットを被った橙髪の少年は、すでに生と死の境界線をはるか彼方の忘却へと蹴り飛ばしていた。


「――死に晒せェェェェッッ!!」


狂戦士(バーサーカー)の咆哮が、大気圏を揺るがす熱波の怒涛を粉々に叩き割る。


体内に宿る狂戦士の血脈が、この臨界点において神代の火山のごとく噴騰した。全身の筋肉は鋼索の如く軋み、骨節の一本一本が破滅的な過負荷に耐えかねて雷鳴の悲鳴を上げる。


彼の靴底から、ルシアの華奢な肉体を唯一無二の跳躍台として踏み抜いた刹那の衝撃波に伴い、血の海を思わせる凄絶な真紅の闘気が丹田より爆ぜ狂った。


直後、神聖機娘【天刻剋星・エターナル・スノウフラワー】が少年の肉体へと遺贈した純白の霜雪神能が、この燃え盛る狂戦士の血潮と触れ合い――轟然たる誘爆を引き起こした!


紅蓮の狂戦闘気と、絶対零度の霜白神性。


相反する二極の暴力が大剣の周囲で狂乱の螺旋を編み上げ、喰らい合い、超高密度に凝縮され――やがて百丈の威容を誇る、片側から血汐を滴らせ、片側に神威の霜刃を抱く、前代未聞の「混沌の巨刃」へと結実した!


それは、脆弱なる定命の矮小なる存在が、太古の神話天災へと叩きつける究極の逆罰。


不死鳥フェニックスの赤金の神瞳の奥底に、悠久の神代を経て初めて、明確なる「恐怖」の感情が色濃く刻み込まれた。


怪鳥は本能的な戦慄に駆られ、天を衝く紅蓮の巨翼を翻して退避を試みようとする。しかし、命を賭した二段跳躍がもたらした零距離の猛突進は、神明に身じろぎ一つ許す猶予を与えはしなかった。


巨剣が巻き起こした絶対真空の暴風圧は、形なき重力の枷となって、天災の神躯を天と地の狭間へと完全に縫い留めていたのだ!


ヴォォォォォン――!


巨刃が天幕を切り裂いた刹那、天地の森羅万象が音を失った。


数万キロ四方に満ちていた爆音と暴風が、この一瞬の静寂の中へと無残に呑み込まれる。人々の網膜に焼き付けられたのは、ただ息を呑むほどに美しく、魂を揺さぶって涙すら誘う、残酷なる絶対の絶景。


山岳の如き巨躯を誇り、万古の劫火を翼に宿した神話の巨神が、喉を引き裂く悲鳴を上げて仰け反る。


その喉元へ向けて、微塵の如く小さき定命の人間が、蒼穹を貫く赤白の巨刃を天高く掲げ、一切の退路と躊躇いを焼き尽くした凄絶と壮美を纏い――眉間に座す星屑の神核へ向かって、全存在を懸けて斬り落とされる!


巨剣の切っ先が、烈日の如き輝きを放つ神核に接触した瞬間、天幕を真一文字に両断し、数十里を円環状に薙ぎ払う超新星の如き光輪が炸裂した!


神殺しの刃は、物質と概念の抵抗を寸分たりとも許さず、力ずくでその深奥へとめり込んでいく。


神核の表面に刻まれた、太古の不滅と永遠を象徴する神性の紋様が、命を削り尽くした狂戦士の闘気と、世界を凍てつかせる霜雪の重圧に耐えかね――この星のあらゆる大地へ木霊する、澄み渡る破砕の悲鳴を上げた。


ピキィィン――バギィッ!


極限の純白が万メートルの虚空を呑み込み、超新星爆発の残滓が天空を埋め尽くす。


その眩い輝きは、燃え盛る太古の絶嶺を、壮麗にして凄惨極まる光の墓標へと塗り替えていた。


十数メートルの深さに穿たれた、黒煙燻る巨大なクレーターの底。


巻き上がる土煙と焦土の煤煙が、鉄錆のような生々しい血の臭気とともに立ち込めていた。


「ゴホッ……カハッ……!」


紅蓮の鮮血が唇の端から零れ落ち、ルシアは左の脇腹を片手で力任せに押さえつけた。華奢な指先は激痛と痙攣によって白磁のように青ざめている。


彼女は奥歯を砕けんばかりに噛み締め、傷だらけになりながらも、決して折れぬ芯の強さをもって、崩落した瓦礫の底からその痩躯を寸刻ずつ起こしていった。


骨肉が軋み、内臓がねじ切れるような激痛が神経を焼き尽くす。


最後の瞬間に己の背中へ緊急展開した三重の緩衝錬金陣は、ガルクの放った狂暴な踏み込みをまともに受け止め、脆い氷細工のように砕け散っていた。


だが、作用反作用の公差を極限まで計算し尽くしたその防御術式は、本来なら肉体を粉微塵に消し飛ばしていたはずの致死の衝撃を、その九割以上まで完璧に受け流していたのだ。


代償は、肋骨二本の完全骨折と、重度の内臓震盪。


一人の重剣狂戦士による「空中二段ジャンプ」の足場となった損害としては――社畜の冷徹なる損益計算書の上において、奇跡的なまでの「大黒字」と断じるほかなかった。


頭上より、大気を震わせる微弱な高周波の魔力共鳴が降り注ぐ。


ルシアが煤煙に塗れた蒼白な面を上げると、その墨緑の瞳がわずかに眇められた。


平原の上空に浮かぶ超大型の転写浮遊水晶が、冷酷な機械の瞳を、彼女のいるクレーターの真上へと寸分の狂いもなく据え付けていたのだ。


天の頂に投影された、三大帝国を股にかける幅数十丈の全域中継光幕。


泥にまみれ、血の滴る唇を引き結びながらも、氷の刃の如き冷徹さを失わぬ彼女の横顔が、寸分の遅延もなく、世界中の数億の民の眼前へと映し出されていた。


今この瞬間、この世界、この戦場そのものが、彼女の言葉を待つメガホンであった。


平原には、吹き荒れる風が灰を巻き上げる擦過音の他、恐ろしいまでの静寂が横たわっていた。


遠方に布陣していた無数の重装騎士、高名な魔術士、各帝国の貴族私兵たちまでもが、魂を根こそぎ奪われた泥人形のように立ち尽くし、上空一万メートルで星屑の如く崩壊していく神話の巨鳥の残光を呆然と見上げ、思考の全てを麻痺させていた。


フェニックスの神核は確かに撃ち砕かれた。しかし、神話が刻み込んだ絶望の爪痕はあまりに深すぎた。


万度の劫火が消え去ろうとも、燻る余熱と焦土が、戦士たちの心根を底知れぬ虚脱と恐怖で侵食し続けている。


彼らは完全に腰を抜かしていたのだ。今この瞬間にその折れかけた背骨を叩き直さなければ、平原を埋め尽くす残存の凶暴な魔獣の群れが、立ち竦む敗残兵たちを一人残らず貪り食うことになる!


ルシアは、焦げ付いた硫黄の熱風を肺腑の奥底まで深く吸い込んだ。


胸を刺し貫く激痛を意志の力でねじ伏せ、暴風にさらわれる細い背筋を、鋼の誇りをもって真っ直ぐに伸ばす。


口元の血を拭うことすら排し、頭上の転写水晶との魔力共振を介して、彼女は氷柱の触れ合うような冷涼にして透徹した声を、天地万象の隅々へ向けて容赦なく叩きつけた。


「我が名はルシア――ルシア・グラフィエン・シルヴィア!」


凛冽たる宣告が、平原を揺るがす雷霆の如く轟き渡った!


驚愕と茫然自失に固まる万衆の視線の中、煤に塗れた黒髪の少女は、眉一つ動かさずに帝国の二大支柱たる家名を己が防弾の鎧として纏ってみせた。


この戦いが終わった後、いかなる政治的追及と清算が待ち受けているかなど、彼女自身が骨の髄まで弁えている。


だが今、この「鉄血の北境公爵」と「帝国元帥の侯爵」からなる絶対的な名声の看板こそが、全土を覆う恐慌を力ずくでねじ伏せる唯一の覇権であった!


「そこにいる者たちは、己の背骨と佩剣を、先ほどの火雨と共に溶かし尽くしてしまったのか?! ――狩猟祭は、未だ何一つ終わってはいない!」


少女の冷笑混じりの嘲弄が全域光幕を透過し、鋭利な氷の楔となって太古の絶嶺、そして三大帝国の観覧席にいる者たちの鼓膜を冷酷に貫く。


天幕に座す巨大な砂時計の術式は冷徹な魔光を湛え、最後の金砂をさらさらと零し続けている――終局の鐘が鳴るまで、厳然として最後の一時間が残されていた。


しかし、フェニックスの無慈悲なる神罰の火海によって陣形はズタズタに引き裂かれ、血溜まりと四肢が散乱し、負傷者たちの呻きが凍土を満たしている。


神の威圧から辛うじて生き延びたという虚脱感は、「絶望」と「退意」という名の劇毒となり、戦士たちの魂を蝕んでいた。


「戦士たちよ! 貴様らは今、歴史が不可逆の変革を刻むその門前に立っている!」


ルシアの声が一段と高く吹き上がり、その小さな身体から放たれる凄烈な気迫が、平原を吹き荒れる猛吹雪を圧し伏せる。


「この期に及んで負け犬の如く両手を空のまま垂らし、太古の伝説を弑逆し、神殺しの戦場を駆け抜けたという至高の栄誉を、自らドブ川へと投げ捨てる気か?!」


一言一句が、重い鉄槌となって数億の胸板を粉々に打ち据える。


絶嶺の平原で焦土に膝をつき震えていた若き騎士たちの瞳孔が収縮し、尾骶骨から頭頂へ向けて、戦慄の奔流が駆け抜けた!


「十年後! 二十年後! お前たちの未来の我が子が戦史の絵巻を抱き、純真な眼差しで見上げて問いかけてくるだろう! 『父上、母上、不死鳥フェニックスが地に堕ちた後の最後の一時間、貴方たちはあの戦場で何をしていたのですか?』とな!」


ルシアは一歩を踏み出し、焦土の後に凍てついた大地を踏み砕いた。


その墨緑の瞳は飢えた鷹の如く鋭利に研ぎ澄まされ、光幕の向こうにいる数億の命の深奥を射竦める。


「その時、我が子の前に立ち、恥じることなく告げられるのか――戦士たる己は、死の恐怖に怯え、手にするはずだった栄誉に背を向けたのだと、そう誇りなく吐き捨てられるのか?!」


ドォォォォンッ!


魂の深淵を抉り出す冷徹なる審判の言葉が、戦士たちの枯渇した胸奥に狂乱の津波を巻き起こした!


「……否だ。」


佩剣をへし折られたセリフィア重装騎士が、血の滲む拳を握りしめ、咆哮を漏らす。


「……誰が、誰が臆病者などに甘んじるものかッ!」


法衣を焼き焦がされた高位魔術士が、泥水の中から震える両脚で立ち上がった。


一つ、二つ、そして数百――


死に絶えかけていた闘気と魔力の輝きが、荒野の上で燎原の猛火の如く爆ぜ広がっていく!


「貴様らの敗北を嘲笑い、逃げ出すと見下したすべての愚者どもへ咆哮を叩きつけよ――貴様らは決定的に見誤ったのだと!」


ルシアは右腕を天高く掲げ、カエサルの腰から奪い取った古風なる角笛を構え直した。猛嵐に長き黒髪を激しく乱舞させ、鋼鉄の如き確信をもって宣告する。


「武器を執れ! 鎧を磨け! 三大帝国の全土へ、未来の血脈へ証明してみせよ――後世の子供たちがこの激戦の記録を紐解く時、貴様らが刻み遺した武名と足跡から、この現世に傲然と立ち向かう勇気と栄誉を授かるのだと!」


言葉の結びと同時に、ルシアは角笛を蒼白な唇へと押し当てた。


胸郭の中で折れた肋骨が極限の呼吸に軋みを上げ、肺腑を千切らんばかりの激痛が走る。


だが、その双眸に宿る孤高の狂熱は微塵も揺らぐことはない。体内に残された最後の血気と魔力の全てを注ぎ込み、悠久の眠りについていた帝国の角笛を、力任せに吹き鳴らした――


プォォォォォォォォォォ――ッ!!!!


それは沈痛なる挽歌などではない。雲を穿ち、大地を裂き、天を討つ――高らかにして凄絶なる神殺しの行進曲であった!


雄渾なる調べは神が雲海を断ち割る号令の如く、覇道に満ちた不可視の音波を撒き散らし、黒焦げの大陸棚を越えて太古の絶嶺の果てまでを瞬時に席巻する!


反撃の狼煙たる角笛が、ルシアによって吹き鳴らされたのだ。


次の瞬間、死に瀕していた平原は、狂乱と憤怒が沸騰する雷海へと変貌を遂げた!


「殺せェェェェェッッッ!!!」


「栄光のために! 帝国の威信のためにッ!!」


返り血を浴びた無数の戦士たちが天を仰いで野獣の如き咆哮を轟かせ、あらゆる属性の闘気、灼熱の紅蓮、凍てつく氷藍の魔力光が、平原のありとあらゆる亀裂から天空を穿って噴き上がった。


それは絶望の淵から蘇った人類の逆鱗であり、残存する魔獣の群れを根こそぎ呑み込む怒涛の海嘯となって解き放たれた!


角笛の余韻が大気の彼方へと消えゆく頃、少女の手によって火を点けられた反攻の暴風は、すでに焦土の平原を呑み尽くしていた。


しかし、全霊の宣告を遂げたルシアの墨緑の瞳からは、急速に光が奪われつつあった。


視界は灰色の砂嵐と二重の残影に覆われ、耳を劈く無数の勝鬨と肉弾の轟音は、深い水底の向こう側のように遠く、朧げに霞んでいく。


パタリ。


重厚なる角笛が脱力した指先をすり抜け、砕石の上を転がった。


深層の魔力を最後の一滴まで絞り尽くした反動、そして呼吸のたびに胸を抉る二本の肋骨骨折の激痛が、張り詰めていた精神の糸が切れた瞬間に錆びた鉄槌となって意識を粉々に打ち砕く。


彼女は、真に……限界の向こう側へと到達していたのだ。


異世界の底辺で足掻き続ける一人の社畜として、術式の公差を計算し尽くし、あらゆる素材を使い倒し、己の命すら歯車を回すための消耗部品として躊躇なく投げ込んだ。


死線(デッドライン)は越えた。


今日もまた、無事に生き延びたのだ。


膝から力が抜け、ルシアの華奢な肉体は、吹雪に散る枯葉のように碎石とぬかるむ凍土の大地へ向けて力なく崩れ落ちていく。


その身体が冷たき大地に激突する寸前――


長年武具を握り込んできた硬い蛸のある、温かく逞しい腕が風雪を貫き、半空からその細い身体を優しく抱き止めた。


紫の長髪が視界の端をかすめる。


カエサルは息を呑むほどに軽い黒髪の少女を片腕でしっかりと抱き寄せ、もう一方の手で詠唱すら挟まず、すぐ側のクレーターで空気を吸い込み再燃を図る不死鳥の神核へ、掌を虚空にかざした。


フォォォン――!


半径数丈に及ぶ、極限の深藍の光を放つ絶対真空の多重魔法結界が瞬時に構築され、堅牢なる硝子の鐘の如く神核を真下へ封じ込めた。


結界内の酸素は完全に消滅し、神火が再び息を吹き返す可能性は永遠に断たれた。


それを成し遂げた後、大陸に名を轟かす帝国元帥は視線を落とした。普段の不敵な嘲弄の色は消え去り、そこには溢れんばかりの賞賛、動容、そして年長者としての深い情愛だけが湛えられていた。


血と硝煙に汚れた少女の頬を見つめ、カエサルは唇の端を微かに持ち上げ、初雪を撫でる風の如き低く柔らかな声を紡いだ。


「儂はそなたを誇りに思うぞ……ルシア・グラフィエン・シルヴィア。」


戯言の響きは一切なく、彼は帝国を揺るがすであろうその複合姓を、厳かに口にした。


腕の中の少女はその声を聞き届けたのか、長い睫毛をかすかに震わせたが、鉛のように重い疲労が彼女の意識を底知れぬ深淵へと引きずり込んでいった。


小さな頭が脱力してカエサルの腕へと預けられ、微かで穏やかな寝息が零れ落ちる。


彼女は、真に疲れ果てていた。


角笛の雄渾なる残響が太古の絶嶺に木霊し、不死鳥の神核が真空の結界に沈黙した瞬間、戦場の攻守は一瞬にして逆転した!


フェニックスの神威という庇護を失った億万の魔獣たちの瞳に、上位捕食者の死を悟った本能の恐怖が初めて浮かび上がる。


そして彼女らを迎えたのは、絶望の深淵から蘇った人類軍団の苛烈なる逆鱗であった!


「殺せェェェッ!!!」


セリフィア重装騎士団の盾陣が、移動する鋼鉄の城壁となって最前線を押し潰す!


直後、バルトーク帝国の重装戦士たちが大盾を掲げ、平素は反目し合っていたノーランドやセリフィアの兵たちを庇うように立ち塞がった。


今この瞬間にあって、三大帝国の確執など霧散していた。すべての者の胸底にあるのは、ルシアが語った栄誉であり、未来の我が子へ示すべき武勇の証明であった。


返り血を浴びた数千の騎士が手綱を締め直し、破魔のルーンを刻んだ重騎槍を構え、軍馬の鉄蹄で凍土を踏み砕いて雷鳴の進撃を刻む。


グラフィエンとシルヴィアに連なる騎士たちからも、凄まじい闘気が吹き上がった。


「ルシア卿のために! グラフィエンとシルヴィアの栄光のために!」


「この魍魎どもを叩き潰せ――突撃ィッ!!」


陽光の如き黄金の闘気と、霜雪の如き蒼藍の光刃が連なり、暴風の幕を形成する。二人の皇子が率いる王家近衛騎士団は、灼熱の鑿の如く魔獣の奔流の最深部へと真っ直ぐに突き刺さった。


騎槍が鋼岩巨蜥の咽喉を貫き、体内で炸裂した闘気が重装甲の変異種を肉片へと四散せしめる!


鋼鉄の奔流の背後では、大陸最高峰の魔術士軍団による壊滅的な絨毯爆撃が幕を開けた。


数百の複合高位詠唱陣が焦土の上で星座の如く連鎖して輝き、薄暗い絶嶺を白昼の如く照らし出す!


「全領域展開――【紅蓮煉獄・天火崩落】!」


「全縦深を覆滅せよ――【深海狂瀾・千刃氷牙】!」


ドガガガガガァンッ――!


天より降るは神罰の火雨にあらず、人類の魔術士たちが解き放つ破滅の激流。


数十メートルに及ぶ巨大な隕石が黒煙を曳いて虚空から墜落し、大地に熔岩の裂け目を穿ち抜く。


凍土の底からは深青の氷刃が逆巻いて突き上がり、疾走する双頭魔狼の群れを次々と氷漬けにしては衝撃波で粉々に砕き散らした!


氷と炎、雷霆と疾風。人類が工芸と魔術の極致をもって研ぎ澄ました生命の爆発は、一方的な死の収穫機と化していた。


傲慢を極めた魔獣の群れは断末魔の悲鳴を上げ、黒い血飛沫が焦黒の大陸棚を修羅の煉獄へと染め変えていく。

退却などない。防戦など存在しない。


あの細腕の黒髪の少女が己を足場とし、反撃の角笛を響かせたその衝撃に突き動かされ、平原のすべての戦士は疲れを知らぬ神殺しの執行官となり、残存する魔獣を鉄と血の濁流へと呑み込んでいった。


全域光幕の向こう側で、三大帝国の数億の生霊が息を呑み、歴史に永遠に刻まれるであろう大反攻の神話を見つめていた。


落日は血の如く赤く、硝煙と霜雪が絶嶺の頂で交錯して吹き荒れる。


絶え間なき獣の慟哭と天地を揺るがす勝鬨の轟音の中、九死に一生を得た狩猟祭の最重要局面たる「第三戦」は、最も壮絶にして、凶暴極まりない血塗られた華麗なる終幕を迎えたのであった。

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