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重度カードゲーマー女子、過労死転生した異世界でも恋愛をプレミして詰んだ件  作者: 酣睡


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97/119

伝説を屠る巨矛と、天空を裂く流星

ドォォォン――ヴォォォォン――!


平原全土の大気が、荒れ狂う高圧電弧によって無残に引き裂かれた。


全長数十メートルに及ぶ墨玉の電磁加速レールの両脇で、数百基の超伝導コイルが肉眼では捉えきれぬ極限速度で狂乱の如く蓄電を重ねていく。


それはありふれた機械の駆動音などではない。鼓膜から血を噴き出させんばかりに重く、巨大に響き渡る、超低周波の地響きのような咆哮であった!


大気中の水分は瞬時に電離し、腕ほどの太さの蒼白い雷蛇が無数にレールを伝って狂い爆ぜ、周囲の極限たる深藍の永久凍土と激突しては、白濁した蒸気の柱を次々と噴き上げる。


天の半分は、フェニックスの撒き散らす万度の劫火。煮えたぎる赤蓮の火海が津波の如く頭上へ圧し掛かる。


地の半分は、エターナル・スノウフラワーが神性の氷晶と臨界拘束解除をもって打ち立てた万古の凍土。骨の髄まで凍てつかせる霜白の吹雪が、利刃の如く薙ぎ払う。


猛火と極寒が生々しく両断されたこの狂乱の戦場の中心で、巨大な射出レールは天地を穿つ神殺しの槍の如く屹立し、破滅的な物理加速エネルギーを解き放って前哨平原の大陸棚そのものを激しく軋ませていた!


そして、金属の高圧悲鳴を上げ、いつ音障壁を突破してもおかしくない射出スライダーの上には、一人の橙髪の少年が特製の水銀弾トレイに無様極まりない格好でへばりついていた。


頭上には、スクラップとなった機甲の外殻を急造で叩き出し、歪んだ反射テープを貼り付けた極めて場違いな黄色いトタンの安全ヘルメット。全身を安全拘束ベルトで幾重にも縛り上げられ、まるで頑丈なちまきのようである。


荒れ狂う電磁の乱流がガルクの頬肉を激しく波打たせる。普段は怖いもの知らずの狂戦士の双眸も、足元で億万ボルトの雷光を明滅させる墨玉レールを見下ろし、上空一万メートルで天を覆う火の鳥を見上げた瞬間、思わず生唾を力任せに飲み込んだ。


ガルクは首をぎこちなく捻り、ヘルメットの風防越しに、喉を引き裂くような裏返った声で発射台の制御盤に立つルシアへ怒鳴り散らした。


「待て! 待ってくれアネさん! ここにへばりついてて急に我に返ったんだがよ――この戦術、本当に大丈夫なのかよッ?! これ魔法の戦闘じゃねえだろ! 俺、大砲に詰め込まれるただの鉄球にしか見えねえぞッ!」


制御パネルの前に立ち、錬金光幕の上で十指の残影を躍らせるルシアは、視線すら上げない。


冷淡なポーカーフェイスを崩さぬまま、手袋の縁を無造作に押し上げ、部下に定時報告書を督促するかのような平然とした声音で言い放つ。


「無駄口を叩くな。物理質量加速、ローレンツ力による直接駆動よ。多重位相偏折被膜の対Gダンパー計算に狂いがなければ、頂点に到達する前に肉体が四散することはないわ。それに、私の良心で特製のヘルメットまで誂えてあげたでしょう。ここまでの安全対策を施してやったというのに、男のくせに何を怯える必要があるの?」


「ヘルメットだとォ?! これ、ただのトタンバケツじゃねえかッ! 神話級の天災を相手に現場の工事用ヘルメットで挑む狩猟団がどこの世界にいるってんだよォッ?!」


ガルクが絶望の悲鳴を上げる。


ルシアは冷ややかに鼻を鳴らし、吹き荒れる風越しに氷の如き墨緑の瞳で彼を一瞥すると、起動レバーへ容赦なく掌を叩きつけ、嘲弄と叱責の混じった声を浴びせた。


「口を開けば大言壮語ばかり。酒場のテーブルを叩いて『世界樹の頂へ登りつめる男になる』と喚いていたのは誰だったかしら? この程度の高度で腰を抜かすようなら、とっとと田舎へ帰って畑でも耕していなさい!」


レールのチャージ率はすでにピークの九十九パーセントに達していた。迸る雷光が少年の橙髪を蒼白に照らし出し、狂暴な推進圧がガルクの顔面を無慈悲に歪ませていく。


射出される最後のコンマ一秒、この大剣の天才は全身の力を振り絞り、消え入りそうな、果てしない理不尽を滲ませた抗議を絞り出した。


「……だ、だけどよアネさん……たとえ世界樹だって……こんな登り方しねえよォォォォォッ――!」


言葉の終わりを待たず、ルシアは無表情のまま発射キーを押し込んだ。


「――全電圧解放。行きなさい、世界樹へよじ登る勇敢なる男。」


「――やめろォォォォォアネさ――んッ!!」


ガルクの肺腑を抉る悲鳴は、大気の中へ広がる間すら与えられず、瞬時に暴力的な轟音によって塵芥へと擂り潰された。


ルシアの煤けた手袋に覆われた細い掌が、最後の過負荷リミッターを限界の底まで無慈悲に押し切る!


ドガァァァァァンッ――!!!!


それはもはや単なる爆発などではなかった。この宙域の物理法則そのものが力ずくで踏み虙かれたことに対する悲鳴であった。


全長数十メートルの墨玉レールの両側に沿って、数百基の超伝導コイルが同一のマイクロ秒で破滅的な極限電流を解き放つ。


数億ボルトに達する蒼白の雷撃が、受肉した咆哮の巨蟒の如く牙を剥き、荒れ狂うローレンツ力をもって水銀スライダーと生体弾トレイを前方へと爆圧射出した!


バチィッ! ドォォォンッ――!


計り知れぬ恐怖の運動エネルギーが、同心円状に地表を爆ぜ散らかす。数メートルの厚みを持つ永久凍土も、その下で熱波に炙られ硝子化していた大陸棚の岩盤も、推進の反作用を喰らった瞬間、脆弱な焼き菓子の如く粉々に陥没していった!


直径百メートルを超えるすり鉢状のクレーターが虚空から抉り取られるように穿たれ、底知れぬ亀裂が蜘蛛の巣の如く走る。


周囲一キロメートル以内の焦土が一斉に天空へと巻き上げられ、肉眼で見えるほどの灰白の衝撃波リングが、左右から殺到していた魔獣の群れをその場で血霧へと粉砕した!


音の壁? その程度の定命の限界など、発進の一寸目にして粉微塵に消し飛んでいた。


三倍、十倍、三十倍音速――大気は逃げ惑う暇すらなく、ガルクの肉体の真正面で極限まで圧縮されて高温プラズマ状態へと変貌し、天罰の如き真空の爆裂音を轟かせた!


ドォォォォォォンッ!


観衆の網膜に焼き付いたものは、もはや射出された「人間」などではなかった。


それは蒼穹を貫く、純白の破滅光線であった!


熾白にして獰猛、稲妻の弧光を帯びた極限のエネルギーピラーが、冥府の深淵より湧き上がる逆流レーザーキャノンの如く、万象を粉砕する覇道をもって大気圏を真っ直ぐに刺し穿った!


光柱の通った航跡から灼熱の空気は根こそぎ排除され、直径数丈に及ぶ真空の暴風トンネルが削り出され、渦巻く万度の火雨と鉛色の暗雲を真っ二つに両断していく!


その閃光は天地の色彩を暴力的に奪い去り、この灼熱の煉獄を核爆発の中心の如く染め上げた。


上空一万メートルから万象を見下ろしていた不死の怪鳥の、獰猛な赤の瞳にすら、逆流して神を屠らんとする破滅の白光が鮮明に映り込んでいた!


そして、このレーザー光の最先端にあって、狂気の摩擦熱に真っ赤に焼かれた工事用ヘルメットを被り、狂暴な重力加速度によって顔面を原型を留めぬほど引き攣らせ、噴き出た涙と鼻水を高熱で一瞬にして蒸発させながら、橙髪の少年はこの大陸史上最も高価で、最も凶悪な「生体徹甲弾」と化していた――


神聖なる機娘の倍加された霜雪の神能を纏い、天災の頭蓋を貫かんと絶叫の咆哮を上げて疾走する!


天空を逆流した熾白の光柱が一万メートルの雲海で轟然と弾け飛び、雷霆と霜雪によって鍛え上げられた神罰の槍となって、燃え盛る天幕に巨大な真空の風穴を穿ち抜いた。


光の奔流の頂点にあって、烈風に橙髪を激しく乱れ散らす少年は、すでに血走った眼で限界を超えていた。


「――死に晒せェェェェッ!」


ガルクは黒焦げに歪んだトタンの安全ヘルメットを強引に押し込み、灼熱と慣性の下で顔面を狂気じみて歪め、両腕の筋脈を大蛇の如く浮き上がらせながら、狂戦士の血潮とエターナル・スノウフラワーから授かった倍加の霜雪神能のすべてを、握り締めた大剣の切っ先へと狂乱のままに注ぎ込んだ!


それは、彼の全生涯における至高の一撃であった。


大気すら切っ先に凝縮された途方もない運動エネルギーを支えきれず、大剣の先端に幾重もの歪んだ光の輪を押し広げ、神の頭蓋を刺し違えても穿つという決死の殺気を纏って、フェニックスの巨大な眉間へと真正面から突き刺さる――!


大地の上、全土中継の光幕を通して息を呑み見守る数億の生霊も、防衛陣地の背後に控える帝国軍も、そして冷静なるルシアですら、この「生体徹甲弾」が天災の面前に神殺しの火花を炸裂させるその瞬間を待ち侘びていた――


だが、予想された鋼鉄と骨肉が激突する天地崩壊の轟音が響くことはなかった。


大剣の白熱する切っ先が、フェニックスの瞳まで残り半寸に迫ったまさにその瞬間――


太古の時代より万象を見下ろし、万度の劫火を吐き散らしてきた神話の天災の、獰猛な赤金の巨瞳の奥底に、極めて人間臭い嘲弄と警戒の光が過った。


不死鳥たるもの、血に飢え傲慢ではあれど、愚鈍では決してない!


真正面から迫り来る暴虐な物理的質量エネルギー、そして大気すらひび割れさせる極限の霜雪。生存本能を持つ生物であるならば、狂気の特装徹甲弾をみすみす脳天で受けてやる道理など何処にもないのだ!


フェニックスの千メートルに及ぶ天を覆う紅蓮の翼が、その巨体からは到底考えられぬほどの軽やかさをもって、空中で極めて優雅に翻り、身を捩った。


フッ――!


まるで指の隙間をすり抜ける一陣の熱風の如く。


巨大な神躯がミリ単位で微かに傾いだその身のこなしは、あまりに滑稽なほど軽妙で、風に吹かれた一枚の赤い羽のように、涼しい顔で大剣の切っ先を掠めて滑り抜けていった!


躱された。


数万年を生き抜いた天災の巨鳥は、数億の視線が注がれる中で、正面から受けて立つプライドなど微塵も見せることなく、極めて恥知らずにも――あっさりと身を躱したのだ!


全土が完全な静寂に包まれた。


「……は?!」


ガルクの張り裂けんばかりに見開かれた双眸が、掠め違うフェニックスの、底冷えする嘲笑を湛えた赤瞳とコンマ一秒交錯した。


空を切った!


電磁砲台の全出力のすべてを注ぎ込み、エターナル・スノウフラワーの二倍化出力を上乗せし、三十倍の超音速で撃ち出された極限の一撃が、そのまま、何の手応えもなく……虚無の空へと突き刺さったのだ!


「終わったァァァァァッ――?!」


大地の上、固唾を呑んでいた前線の精鋭騎士たちも、観覧艦上の皇太子クロードも、さらには上空に浮遊していた不敵なカエサル侯爵ですら顎が外れんばかりに絶句し、前哨平原全域から息を呑む悲鳴と戦慄が噴き上がった。


考えてみれば当然のことだ。他人の必殺技をプライドのために真正面から受けてやるような馬鹿は人間にしかおらず、神獣がそんな面子に付き合う義理などあろうはずがなかった。


だがこの瞬間、常識を粉砕された観衆以上に絶望の淵へ叩き落とされていたのは、他ならぬガルク自身であった。


三十倍音速の致死的な慣性モーメントは、そう簡単に止まれるものではない。標的を見失った瞬間、この破滅の推進力は彼を黄泉へと突き落とす死神の鎌へと反転した――


激突による減速を失ったガルクは、長大な白煙の尾を引く制御不能の流星と化し、大気圏の天頂へと無慈悲に吹き飛ばされ、纏っていた多重位相偏折被膜は極限の慣性ストレスに悲鳴を上げ、パキパキとひび割れ始めていた!


そして無傷の火の鳥は、攻撃を躱した身の翻りをそのまま利用して天頂で倒立し、深紅の毒炎を孕んだ細長い巨嘴を微かに開くと、発射の反動でオーバーヒートを起こし停止した、完全無防備の前哨平原へ冷酷な視線をロックオンした!


攻撃は完全に失敗。


切り札の突撃手は大気圏外へと放り出され、地上に残されたルシアたち全員は、今この瞬間、天災の爪牙の前に抗う術もなき生きた的へと成り下がったのだ!


ルシアの深い墨緑の瞳が、一瞬にして凍てつく刃の如く細められた。


上空一万メートル、弾道を外れた生体徹甲弾は雲海の頂に達し、推進力を完全に使い果たした。


ガルクの身体が一瞬静止し、直後、重力の捕縛を受けて千切れた白煙を引きずりながら、惨烈な速度で地上へと墜落し始める。


これが最後の死線であり、最後の勝機。崩壊の代償は全滅のみ!


猛吹雪と劫火が乱れ狂う太古の絶嶺の戦場を、ルシアは何の躊躇いもなく、すでに魔力を使い果たして神経を針で刺されるような激痛に軋む華奢な身体を引きずり、凍土を蹴って疾走した。


宙に浮遊するカエサルの側を駆け抜ける際、彼女は挨拶の一瞥すら寄越さず、走る勢いのまま素手を電光石火で伸ばすと、「パチンッ」と乾いた音を立てて、カエサルの腰に佩かれていた古風な角笛を強奪した!


「おいッ?! それは儂の秘蔵の……」


カエサルの呆気にとられた声が喉に詰まる間に、ルシアの小柄な影は氷屑を蹴散らし、冷却の過負荷に軋み電弧を弱々しく散らす墨玉の発射台へと飛び乗っていた。


焦げ付いた錬金手袋の右手を水銀弾トレイの窪みへ深々と食い込ませ、自身の華奢な肉体を射出レールへと強引に固定する。


レールガンの蓄電は先の一撃で完全に底を突き、通常の手段で再起動することなど不可能だ。だが歴戦のカードゲーマーは手札が尽きた時、仲間の盤面を素材として暴力的に解放する術を誰よりも心得ている!


「エドワード! ロバート!」


硝煙を切り裂く凛とした鋭い叫びが、セリフィア帝国の双璧たる皇子の名を正確に指名した。


遥か防衛線の上、陣形を維持していた二人の皇子の心背が激しく震えた。最高位の貴族にして武人たる彼らの本能的な戦場勘は、一瞬にしてルシアの狂気の意図を看破した――


この無茶な女に足りないのは技術ではない、己の身体を天空へと叩き上げるための外部の力だ!


「行くぞ、ロバート!」


「受けて立つ、兄上!」


刹那の間、エドワードとロバートの体内に眠る皇家の闘気が一切の枷を外して爆ぜ上がった!


純陽にして覇道の金光と、極限まで冷徹な蒼藍が虚空で交錯し、魂を揺さぶる竜鳴の長嘯を轟かせる。


大気を引き裂く闘気は一金一藍の長大な巨竜へと結実し、天地を覆す衝撃波を伴って、二重螺旋の奔流となって電磁砲台の基部へと叩き込まれた!


「――双竜演武殺ッ!!」


ドォォォォンッ――!


無類の闘気の奔流が一瞬にして直上への垂直推力へと変換された。墨玉レールが粉微塵に四散した刹那、ルシアの小柄で痩せこけた身体は、銃身を飛び出した第二の神殺しの弾丸と化し、降り注ぐ火雨を引き裂いて、落下してくるガルクの軌跡へ向かって一直線に暴進した!


一方は頭上より狂乱の自由落下。一方は下方より逆流の超突撃。


生と死が交差する垂直の交叉点がすれ違うその瞬間、ルシアは血の混じる熱い空気を深く吸い込んだ。


体内に残された最後の魔力の一滴まで絞り尽くし、神経回路が焦げ付く悲鳴を上げようとも厭わず、錬金手袋を纏った右の掌を、眼下の大地へ向けて容赦なく反転させた。掌の中で、極限まで圧縮された超小型高圧錬金陣が内側へ向けて爆縮する!


「最後の一撃よッ――!」


ドガガガガガァンッ!


これまでの如何なる術をも凌駕する極限の反発が、至近距離で起爆した重航空爆弾の如く炸裂した。


垂直に叩きつけられた衝撃波は、下方に殺到していた数百頭の凶暴な魔獣を肉片へと擂り潰したのみならず、その暴力的な反作用の推力は、ルシアの上昇速度をさらに桁違いの領域へと跳ね上げた!


大陸中の数億が息を呑む注視の中、その細い黒の影は天を刺す短剣の如く、あり得ない角度で落下する橙髪の少年に追いついた。


次の瞬間、ルシアは空中で身を翻し、重装甲など一切持たぬ華奢で薄い己の「背中」を、天空から叩き落とされるガルクの鉄靴の靴底へと寸分の狂いもなく差し入れた!


己の身を足場とし、この一万メートルの虚空において唯一の跳躍台へと化す!


「跳べッ!!」


ルシアは歯の隙間から引き裂くような咆哮を絞り出した。墨緑の双眸に恐怖の色など微塵もなく、あるのは背水の狂気のみ。


無重力の混乱の中にいたガルクの瞳孔が縮み上がった。


彼は誰よりも理解していた。狂戦士たる己の千鈞の体重に加え、全身で逆巻く重剣の闘気を乗せて、支えのない空中で全力の踏み込みを叩き込めば、木の葉のように薄いルシアの肉体など、骨も内臓も粉砕骨折を免れないということを!


だが……これこそが命を賭けた戦場であり、無条件に背中を預け合った者同士の絆と暗黙の了解!


跳ばねば二人揃って肉塊となり、地上の防衛線は天災の業火に呑まれて全滅する。跳べば、神に人の刃が届く!


「生きて……いろよォォォォォッ――!!」


ガルクは眦を引き裂き、死に瀕した野獣の如き悲愴な咆哮を轟かせた。


心の底の躊躇いをすべて怒火へと変え、狂戦士の真紅の闘気を靴底で爆裂させ、膝を深く曲げると、全身のすべての力と殺意をルシアの背中を介して無慈悲に解き放った!


バキィッ! ドォンッ――!


極限の踏み込みが、鈍い肉体の衝撃音を響かせた。


ルシアの口から鮮血の飛沫が噴き上がり、その身体は神に投げつけられた黒い流星の如く、落下の数倍の恐怖の超速で焦土の大地へと叩き落とされ、大陸棚に直径十数メートルの大クレーターを穿って粉塵を巻き上げた!


そしてこの命懸けの「空中二段ジャンプ」によって、すでに燃え尽きかけていたガルクは、虚空で大気を粉砕する衝撃波を踏み鳴らし、舞い散る赤蓮の火羽を逆流しながら、嵐を引き裂く狂気をもって再び跳ね上がった!


熱波が渦巻き、火の舌が狂い踊る。


空中で倒立し、嘲弄の笑みを浮かべて下界へ劫火を吐き出そうとしていた不死の巨鳥の、赤金の神性の瞳が驚愕に見開かれた。


真正面の大気が、一振りの冷徹な漆黒の大剣によって強引に両断される。


煤けてへこんだ黄色い工事用ヘルメットを被り、血まみれになりながら白い歯を剥き出しにした狂戦士が、地獄の底から這い戻った悪鬼の如く、雲海を切り裂いてその鼻の先へと瞬間移動のように再降臨していた!


少年は驚愕に凍りつく神の双眸を見据え、獰猛な笑みを浮かべてその手の大剣を振りかざした。


「よォ――! また会ったな、この雑種鳥がァッ!!」

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