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重度カードゲーマー女子、過労死転生した異世界でも恋愛をプレミして詰んだ件  作者: 酣睡


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第一戦の終幕、地球(こちらの世界)より託されし連係

血印と金属の激突によって盟約が結ばれた直後、大気に張り詰めた殺気すらまだ霧散しきらぬその刹那――


異変は唐突に爆ぜた。


ドガァァァンッ!


平原の東側、数百に及ぶ魔獣の焦屍が積み上がった残骸の断崖が、何の前触れもなく内部からの絶大な力によって爆発四散した!


焦土、砕かれた骨、そして内臓が狂暴な黒い驟雨となって天へと吹き荒れ、弾け飛んだ血霧の深淵から、視神経の限界を凌駕する純白の残影が、天外より落着する凶虐の隕星の如く虚空を切り裂き突進してくる。


それは通常の突撃などでは断じてない。大気を力任せに削り取り、真空の軌道を描き出す残虐なる疾走であった。


吼――ッ!


焦げた泥濘から這い出たばかりの、優に二階建ての全高を誇る重甲暴熊の二頭が、満足な咆哮をあげる暇すらなかった。白い残影は、その巨大な巨躯の間隙を瞬く間にすり抜けていく。


刃を交える滞りなど微塵もない。絶対的な暴力によって生身が強引に引き裂かれる、生々しい破裂音のみが響いた。


ブシャァァッ――!


残影の通過した半径数十メートル圏内の大気が、一瞬にして濃濁たる腥紅に染まり上がる。


数寸の厚みを誇る角質の重甲に覆われていたはずの暴熊が、骨も肉もろとも寸分の狂いもなく縦一文字に両断されていた。


黒ずんだ暗赤色の粘稠な血潮が高圧ポンプの破裂のごとく三丈の高さまで噴き上がり、湯気を立てる腸、破裂した胃袋、未消化の骨片の混ざった汚物が、豪雨となって「ザバァッ」と泥濘へと叩きつけられた。


直後、新月の如く冷冽でありながら、刺すような腥紅を放つ半月形の剣気が、残影の掌中から無造作に振り抜かれた!


ズババババァァァン――――ッ!


大気がその剣気によって真二つに両断され、甲高い真空の悲鳴を響かせる。それはルシアが先刻、極限過負荷によって放った超圧縮魔砲すら遠く及ばぬ純粋なる破壊力――


剣気の奔流が薙ぎ払う先、前方に聳えていた三つの小山ほどもある魔獣の焦堆、そして間隙を縫おうとしていた数十の死士の残躯が、断末魔をあげる間もなく骨肉もろとも粉砕され、宙を舞う肉片の驟雨へと変わる!


地表には底知れぬ熱泥と白煙を噴き上げる百メートルの大亀裂が穿たれ、鮮血と肉片と骨粉が滝の如く裂け目の両脇を奔流し、戦場全体を悍ましいまでの鮮血で塗り潰していった。


狂暴な血の雨が吹き付け、ベテルギウスのすでに損壊した白甲を濡らす。


肩甲の上に伏すルシアの瞳孔が激しく痙攣した。暴虐の剣気が戦場を裂いた瞬間、彼女の神経の深淵で、陶器が粉々に砕け散るような澄んだ悲鳴が響き渡る――それは、自身の「領域」が急速に崩壊を始めた予兆だった。


彼女を中心に無形に展開されていたその領域は、前世においてカードゲームのプレイヤーであったルシアが、今生の錬金二重回路と融合させて編み出した絶対の領域。


とあるカードゲームの深層論理を基底として組み上げられた絶対規則の場――彼女の領域の内側において、空間そのものが盤面(ボード)であり、足を踏み入れたあらゆる敵我は、彼女の定めた判定法則に従わねばならない。


反撃型の【プリズム・バリア】であれ、機械爆弾の爪を備えた【悪意の贈り物】であれ、あるいは回路を封殺する【拘束の牢獄】であれ、乱戦の中において神出鬼没にして外力による強行突破を許さなかったのは、それらが単なる防御魔術ではなく、領域規則によって絶対の優先権を付与された「効果の処理」であったからに他ならない。


しかし、その規則場を維持する代償は、残酷極まりない魔力と神経への負荷であった。


今や長時間の死闘によって余力は潰え、体内の二重回路は深刻な過負荷に焼き切れている。ルシアはありありと感知していた――平原の太半を覆い、大気の揺らぎの一切を監視していた規則領域が、針で突かれた気泡のように急速に萎縮、衰退し、瞬く間に自身の周囲わずか三尺を満たさぬ薄弱な死線へと縮退したことを!


領域の衰退。それは盤面における「優先権」と「環境威圧」の完全なる失効を意味し、神経伝達の速度は一気に底へと叩き落とされた。


天から降り注ぐ肉塊の雨の向こう、その純白の影が緩慢に剣を収める。


血の風の中に滝の如く舞い狂う純白の長髪、地獄の熔岩よりも深遠にして、暴虐と冷酷を滾らせる深紅の双眸――ノーランド帝国の頂、女公爵カリーナ・グラフィエン。


「カリー……」


ルシアの渇ききった唇から二文字が零れ落ちた瞬間、網膜に映る空間が不意に歪んだ!


速すぎる。全盛期の領域であれば、カリーナが境界へ足を踏み入れた瞬間に詭計術式の判定が発動していたはずだった。


だが今、数メートルの至近にまで萎縮した領域は、敵襲の警報を脳神経へ伝達することすら間に合わない。音速を超越した純粋なる肉体の暴力が、残存していた脆弱な規則を無残に蹂躙した!


人の領域を外れた美貌がルシアの視界を埋め尽くす。その紅い瞳にはかつての温もりなど欠片もなく、底知れぬ戦慄を呼び起こす暴虐の支配欲のみが宿っていた。


ドォォン――――ッ!


鉄板が破城槌によって正面から貫かれたかのような、重く鈍い破砕音が虚空に炸裂した!


カリーナは何の言葉も発さず、凶悪な気勁を纏った長靴の踵を、一切の虚飾なく、残虐極まる軌道でルシアの無防備な下腹部へ叩き込んだ!


「カハッ――ッ!!」


ルシアの華奢な肉体が、内側へと悍ましい角度でくの字に折れ曲がる。


領域規則による受動的な衝撃緩和を失った内臓は、一瞬にして超重プレスマシンによって押し潰されたかのようだった。胸腔の奥底に溜まっていた逆流はもはや堰き止められず、熱く粘稠な、砕けた肉片の混ざる暗赤色の鮮血が、放射状にカリーナの冷徹な貌と純白の襟元へとまともにぶちまけられた!


だが、カリーナは睫毛一本すら震わせず、頬を伝うその鮮烈な血糊を拭おうともしなかった。その冷徹な眼差しは、檻から逃れようと足掻く獲物を見下ろすそれに酷似していた。


ズドォォンッ!


狂暴な衝撃波が遅れて炸裂し、ルシアの身体は発射された重砲弾の如く、ベテルギウスの肩甲から無残に弾き飛ばされ、道中に残された幾筋もの焦黒の骨格を粉砕しながら宙を薙いだ!


背後に聳える嶙峋たる鋭利な岩壁へと激突し、全身の骨が砕け散ろうとしたその刹那――


しなやかで敏捷な紫の影が、亡霊のように中空を横切った。


クレア・シルヴィアの特徴的な紫髪が突風に乱れ、その紫の双眸に強烈な忍び難さと切迫が走る。


彼女は岩壁を爪先で蹴りつけ、虚空で両腕を正確に差し伸べると、卓越した柔の勁道をもって、岩をも砕く恐るべき衝撃を中空で幾重にも逃がし、泥濘を十数メートル滑りながらも、ルシアの身体をその腕の中へと抱き止めた。


「ガハッ……ゴホッ、ケホッケホッ!」


クレアの柔らかな胸元に崩れ落ちたルシアは、身を丸めたまま激しく痙攣し、大量の血泡を吐き散らした。息を吸い込むたび、折れた肋骨が突き刺さるような激痛を上げ、体内で枯渇していた二重回路はこの一撃によって完全に瓦解していた。


薄く開かれた墨緑の双眸が、血に濡れた睫毛の隙間から、顎から血を滴らせたまま血塗られた長剣を手に歩み寄ってくる白髪の女公爵を捉える。

ルシアはようやく完全に悟った。


この狂女、最初から交渉などしに来てはいない。


カリーナは陣営の得点など歯牙にもかけておらず、教皇の生死など知ったことではないのだ――彼女は、自身が部隊を率いて他者と同盟を結ぼうとしていることを見抜いていた。


だからこそ、この支配欲の化身は、最初からルシアの骨をへし折って不具にし、戦利品のように荷造りして自陣営へ力ずくで連れ去る腹積もりだったのだ!


「……ハ、ハハ……」


ルシアはクレアの頸元に力なく凭れ、顎から滴る血潮をクレアの法衣へと染み込ませながら、渇き切った唇の端を吊り上げ、極度の衰弱と嘲弄を込めた冷笑を絞り出した。


「とんだ……災難ね、カリーナ……記憶を失ってからというもの……手加減ってものを、綺麗さっぱり忘れ去ったみたいじゃないの……」


鮮血がクレアの肩を赤く染め上げる。その胸元に縮こまるルシアは、喉奥からせり上がる熱い鉄の味を抑え込むことすら叶わず、内臓が掻き回されるような激痛とともに、言い知れぬ不条理と理不尽さに胸を締め付けられていた。


……かつてのカリーナは、決してこんな風ではなかった。


あの女の独占欲がどれほど溺死しそうなほど重かろうと、寝所や工房で過ちから自分に痛みを強いてしまったときですら、カリーナは次の瞬間に慌てて腕を縮め、紅潮したルシアの頬に触れては、涙を零しながら取り乱して謝罪を重ねていた。全身を溶かして骨の髄まで愛撫するかのように。


その重苦しく不器用な愛には、確かに温もりがあった。決して今目の前に立つ、虚ろな瞳で全身の骨を砕かんと襲い来る冷血なる鬼神などではなかったのだ!


そして、この息詰まる激変は、もう一つの知性の中においても壊滅的な無限ループを引き起こしていた。


「ホ、ホウッ……?! カチ、カチカチッ!」


泥濘のただ中に佇む純白の機械騎士ベテルギウス。その胸奥の黄銅歯車から、耳を劈く高周波の異音と嘴を鳴らすような硬質な駆動音が軋みを上げた。


高度な自律思考を有する「刻刻」が、この瞬間に完全な論理崩壊へと陥っていた。


機体の中核として、本来であれば主人が攻撃を受けた瞬間に最も残酷な防衛反撃を叩き込まねばならない。


しかし、その認識中枢には、目の前の白髪紅瞳の女に関する膨大なデータが焼き付いていた――【極度危険】、【過去最優先保護対象】、【主人の極めて親密なる者】。


主人を傷つけたカリーナを両断すべきか、それともすべてをかなぐり捨てて吹き飛ばされたルシアを救出に向かうべきか。


戦場における一瞬の迷いは致命を招く。そしてカリーナにとって、その一瞬の論理の乱れこそが、防壁を粉砕する絶好の隙であった。


「――鈍重な屑鉄が」


カリーナは氷のような言葉を吐き捨て、吹き飛んだルシアを一瞥することすらなく、細身の佩剣を逆手に引き抜いた。夜を裂く落雷の如き深紅の剣芒が、下段から上方へと寸分の淀みもなく残酷な弧を描く!


ズシャァァッ――――!


全高二メートル、古竜の灼熱の息吹すら耐え抜く純白の重甲騎士が、股間から肩頸にかけて、華奢にすら見える長刃によって両断された!


断ち切られた黄銅の伝動軸、破裂した蒸気配管、そして噴き出す高温の冷却液が驟雨の如く撒き散らされる。


鋼鉄の巨躯が左右へと崩れ落ちる刹那、カリーナの白革の手袋に包まれた掌は、泥を穿つが如く凶暴に機体の胸部中枢へと突き立てられ、かつて演算中枢として機能し、今は一回り肥大化していた機械梟の胴体を鷲掴みにした!


カリーナは無表情に五指を締め上げ、死に物狂いで暴れる刻刻を無理やりに引きずり出した。


遠巻きに見ていたユリアンの瞳孔が激しく収縮し、背筋に冷汗が伝う。


彼が長らく観察を続け、単騎で古竜と大軍を破砕した規格外の機械創造物が、あの女の一刀すら耐えきれずに乾酪のように切り裂かれたのだ。


さらに彼の目元を引き攣らせたのは、女公爵の手に乱暴に掴まれた黄銅の梟が、暗金の硝子眼をぐるぐると回し、精緻な歯車の面甲を歪めて耐え難い屈辱と苦悶の表情を浮かべていたことだった――その呪われたような有様は、過去においてこの冷徹な女公爵に散々解体と折檻を繰り返されてきたことを雄弁に物語っていた!


戦況は瞬時に崩壊した。結んだばかりの盟約の中核人物は吹き飛ばされ、切り札たる召喚獣は捕縛された。ユリアンは身を低く潜めた。彼とて、ノーランド第一の女公爵の凶刃に自ら飛び込むほど愚かではない。


しかし、クレアがルシアを受け止めたわずか半秒後、極限の死線において筋肉の反射を研ぎ澄ませてきた二つの影が爆発的に跳躍した!


「桃香!」


「合点!」


橙髪の少年ガルクと忍者の少女桃香の反応は、誰にも息を整える隙を与えなかった。ルシアが蹴り飛ばされた刹那、二人は視線を交わすことすらなく、戦術を完全に噛み合わせていた。


桃香の姿は大気の中を屈折する一筋の黒煙と化し、クレアが着地した死角へと音もなく滑り込む。腰元から引き抜かれた数個の特製黒丸薬が地表へと叩きつけられ、鈍い炸裂音とともに、実体を伴うかのような黒紫の濃煙が瞬く間に膨れ上がり、周囲数十メートルを完全なる暗黒へと沈めた!


これは攻勢ではない。全員の生殺与奪を賭けた撤退戦であった!


「刻刻……やれッ!」


神経が焼き切れる寸前の極限で、ルシアは舌を噛み、枯渇した二重回路から絞り出した最後の一筋の灼熱の魔能を、見えざる因果の糸へと変えて刻刻の中枢へと突き刺した!


「ホォォオオオ――ッ!!」


主人の魔力の供給と絶対の指令を受け取った機械梟の硝子眼に、暴虐の黄金のルーンが炸裂する。


高精度の発条で構成された両翼が鋸刃の如く旋回し、鋭利な黄銅の羽刃が甲高い高周波の音爆を伴って、カリーナの万力のような掌からわずかな間隙を切り拓いた。


大気が握り潰される直前、一筋の黄金の流光となって天へと駆け昇る!


そして脱出した刹那、刻刻の雌鳥の構造を模した総排泄腔の甲片が、左右へとスライドした――


カチャ、カチャ、カチャ!


異様な青灰色の光沢を帯びた、極めて重厚な鋼鉄の鳥卵が三つ、甲高い風切り音を立てて焦黒の泥濘へと連環して叩きつけられた!


卵殻が砕け散る。炎は上がらない。だが、仄かに甘く腥い青白の異様な気体が、火山の噴煙の如く猛烈な勢いで大気へと拡散していく。


同時に、黒煙の深淵で桃香が喀血して崩れ落ちるルシアを抱き抱え、両手で電光石火の印を結んだ。足元に暗黄色のルーンが奔流する。


「――忍法・潜伏の術!」


泥土が一瞬にしてすべてを飲み込む深流へと変わり、桃香に抱かれたルシアの二つの影は、クレアが手を伸ばし遮ろうとした直前、何の抵抗もなく地底の深淵へと沈降していった。


戦場の別側では、ガルクが気絶しかけ、断ち切られた首から肉芽を蠢かせる教皇オースを片腕で小脇に抱え込み、大剣を泥へと跳ね上げ、立ち込める煙幕を盾に獣の如く身を屈め、あらかじめ見定めていた岩壁の死角へと狂奔して姿を消した。


「……ッ……この甘い匂いは……」


ガルクによって後方の巨岩の窪みに身を隠され、魔力枯渇により死線の縁にいたヴァレリーが、急速に満ちる青白く甘い気体を嗅ぎつけ、その暗金の双眸を見開いた。


あらかじめ取り決められていた「撤退の一撃」。


ルシアが錬金術によって調合した高危険度の流質が、刻刻の排出した鋼鉄の卵に封じられていたのだ。この極めて重い高密度の気体は通常の炎や低階梯の火球には一切反応しないが、超階梯魔術師の高純度な火核に接触した瞬間、連環する超音速の爆轟を引き起こす。その威力は黄色火薬の数千倍に及ぶ!


「ハッ……本当に、人使いの荒い女ね、村雨……」


ヴァレリーは奥歯を噛み締めて毒づいた。干涸らびた体内の魔力回路に熱湯を注がれたような、八つ裂きの激痛が走る。


だが、その土気色の顔には獰猛な気迫が浮かび上がっていた。


杖を力任せに大地へと突き立て、残されたわずかな風元素を狂暴な二条の風翼へと変え、ふらつく身体を無理やりに黒煙から引き剥がして数百メートルの上空へと飛翔させ、旋回する機械梟・刻刻と空中で合流した!


眼下を見下ろせば、戦場全体はカリーナの放つ圧倒的な威圧と魔獣の咆哮で埋め尽くされている。


ヴァレリーの瞳に冷徹な光が爆ぜた。喉元へせり上がる血塊を力ずくで呑み下し、両手で杖を天へと掲げ、生命力を燃焼させる暴虐の姿勢で虚空を絞り上げる!


「――まとめて地獄へ堕ちくたばりなさい! 暴風域・死線渦流!!」


ゴオォォォォッ――――!


青き嵐が天幕を切り裂いた。周囲へと拡散しかけていた青白の爆薬気体、地表に転がる焦黒の残骸、断末魔をあげる魔獣、沸騰する血泥のすべてが、広域に及ぶ重力竜巻によって中央の窪地へと狂乱の勢いで引きずり込まれ、圧縮されていく! 平原の混沌のすべてが、瞬く間に一つの巨大な肉塊の渦巻へと収束していった!


それを成し遂げたヴァレリーの貌には青筋が浮かび、鼻孔から血が滝のように滴り落ちていた。眼下を睨み据えるその瞳には、狂気じみた決絶のみが宿る。


「――村雨! あんた後で絶対に償いなさいよッ!」


杖頭の宝玉が悲鳴をあげて亀裂を走らせる。上空の大気から熱と光が一瞬にして吸い上げられ、直径数丈、白熾の光を滾らせる微小な「人工太陽」が、大気を歪める超高熱を伴ってヴァレリーの掌の下に凝縮された!


彼女は寸分の躊躇いもなく両手を下方へと押し出した。破滅の気息を撒き散らす白赤の烈日が、甲高い真空の咆哮を轟かせ、暴風によって完全に拘束され、特殊爆薬気体で満たされた中心点へと、一切の容赦なく叩き落とされた!


落下する人工太陽が暴風の核へと接触した刹那、世界は絶対の死寂に包まれた。


大気は白熾の烈日によって吸い尽くされ、超高純度の火核と刻刻の放った重質錬金気体が衝突した瞬間、即座の爆発ではなく、光と音の一切を呑み込む「圧壊」が生じた。


吹き荒れる風の音、魔獣の断末魔、煮え滾る泥の音のすべてが、コンマ数秒の間に完全に圧殺され、平原の中央に視界を歪める真空の暗黒領域が穿たれる。


直後、臨界点が崩壊した。


破滅的な連環超音速爆轟が、その最深部から天地を裂いて解き放たれる!


ドババババババァァァァァン――――ッ!!


それは通常の火薬による爆発などではない。高階梯の火魔術と人工錬金流質が引き起こした、微小なる核分裂であった。太古の絶嶺の第一層平原が一瞬にして視界を奪う白熾に染まり、大地は薄い乾パンの如く捲れ上がり、寸断されていく。


天を突く衝撃波は肉眼で視認できる乳白色の音速環となり、幾重もの同心円を描いて全方位へと吹き荒れた。


暴風によって核へと巻き込まれた数百メートル圏内の魔獣や残存する死士たちは、悲鳴をあげる権利すら剥奪され、肉体が高熱で蒸発するよりも早く、億万ポンドの爆風によって粉微塵に叩き潰され、骨片と内臓は極限まで圧縮された火炎の中で一瞬にして炭化し、黒い灰燼となって霧散した。


深く泥濘んでいた凍土層はごっそりと削り取られて蒸発し、融解した岩石は超高圧によって赤熱するマグマへと変貌し、新たに穿たれた亀裂へと瀑布の如く雪崩れ込んでいく。


続けて、直径数百メートルを超える火柱が天と地を貫いた。


狂暴な赤熱と惨白の火炎が巨竜の如く立ち昇り、数万トンの焦土と大木を巻き上げて千メートルの上空へと逆噴射し、頭上に数百年にわたり滞留していた重厚な雲海を、火の粉を撒き散らす巨大な風穴となって突き破る!


吹き荒れる熱風は暴風雨となって吹き荒れ、上空数百メートルにいたヴァレリーと刻刻すら、その凶悪な上昇気流に激しく揺さぶられ、絶嶺の山々はその天変地異の如き爆鳴に軋み、鳴動を続けた。


火光が極限の暴威を経て暗赤色のきのこ雲へと変貌した時、先刻まで血戦が繰り広げられていた平原の中央には、深さ数丈に達し、全面が硝子化して鼻を突く白煙を吐き出し続ける巨大なクレーターだけが横たわり、あらゆる追撃と殺意を、煮え滾る炎熱の地獄の底へと埋葬し去っていた。

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