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勇者殺しの勇者 〜ヤサグレ勇者は青ヘビと旅をする〜  作者: 零壱
第1章

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第27話 ヤサグレ勇者は青ヘビと旅をする。




「主様、魔女キライです?」

「そーいう話じゃねーんだよ」


 木々の間を走る。

 襲ってくる魔物は片っ端から倒して解体だ。肉も素材も欲しい。

 解体するときだけ立ち止まり、あとはひたすら駆ける。距離を稼いでおきたい。

 俺の首に尾を巻き付けている青ヘビが、わざとらしいため息を吐いた。


「やっぱり赤髪……」

「ちげーわ」


 背後から振り下ろされた斧。

 身体を反らして回避する。

 ついでに剣も振る。

 ゴブリンの上位種であるオークの身体が横にずれた。


(オークは金になんねー)


 肉も食えないから、解体は必要ない。

 トン、と浅く着地した俺は、また走り出す。


「大丈夫ですよ」

「何が」


 深層から中腹、中腹から浅瀬(あさせ)へと。

 また大鷲が探し回っていないかと、時々空を確認しながら進む。

 魔女を帰してから一気に駆け抜けてきたおかげで、カバンの中身がずいぶんと潤った。上手く捌けばかなりの金額になるだろう。買い叩かれないように小出しにするのがコツだ。素材買い取り先のギルドは慈善団体じゃない。


「主様、話したらモテないですよ」

「おまえ、俺がキライなの?」


 この青ヘビはただ単に俺を貶(けな)したいだけだ。けっとヤサグレて、追いかけて来る蟻型魔物の大群に火を放つ。

 本気を出した俺はわりと速い。

 どんどんと過ぎていく景色を見ながら、速度に慣れた青ヘビが口をパカリと開いた。


「キンキラ~イケメン~のぉ、持ち腐れ~ぇ~」

「うるせーよ」


 先に道が見えた。

 大きく踏み込んで一息に抜ける。

 

「はらへり~、はらへり~」


 ザッと土が鳴った。

 抜いていた剣を鞘に納める。

 青ヘビからはいつもの催促だ。

 黒髪を背に払ってから、カバンの中からクコの実を取り出す。魔女が青ヘビに貢いだものだ。


「オヤツ!」

「汁飛ばすな」


 すかさずかぶりついた青ヘビの顔を水で流し、自分が出した水で肩まで濡れた。まだ暖かい季節だ。放っておけばそのうち乾くだろう。

 右に、左。

 森に沿った街道に出たことは間違いないが、日が暮れてきたせいか人影は見当たらない。ついでに街らしきものも案内の立札もなく、ただ砂利混じりの道がどこまでも続いている。完全にハズレだ。


「今日は野宿だなー」

「テントで寝るです?」

「おう。寝袋も出すぞ」

「寝袋」


 ウキウキと揺れる青ヘビの頭を撫でた。

 ブーツを前へ踏み出す。


「次はどこ行くです?」

「さぁな。近くに街か村でもありゃいいけどよ。しばらく歩いて見つかんなかったら、また森ん中突っ走んぞー」

「はいです」


 返事だけはいい青ヘビの口元へ、二つ目の実を寄せる。食いついた。

 橙から藍色へ、下から染まっていく空を見上げる。

 俺の脳裏に焼き付いているのは、抜けるような青空。

 トゥーリアの腕に包まれて見た、あの青だ。

 あの日あの時、俺の世界は確かに終わった。


(でも、まぁ……)


 頬に擦り寄ってくるアクティの頭を指の腹で撫でる。心地良さそうに細められた緑色の瞳と目が合った俺は、喉を鳴らした。


「のんびり歩くのも悪くねーか」

「お肉狩り頑張るですよ、主様」

「散々狩ったろ」


 呆れ、鼻っ面を指で押し、笑い合う。

 俺を殺す次の勇者(うんめい)を探す旅だ。

 この青ヘビが成体になるくらいまで持てばいい。

 それだけで、いい。




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