一章 隠者の旅路 ③
冬も、終わりの時期だった。
日暮れ時に、ようやく一つの村にたどり着いた。…開拓者の村。顔見知りとなれば、何のてらいもなく、受け入れられる。
村長格の男に挨拶に行き、師が身罷られたことを伝えると、たいそう驚かれ、嘆かれた。その話は瞬く間に一帯に伝わり、次々といろんなところから質問攻めに合う。できるだけ丁寧に答えたつもりだが、はっきりとは覚えていない。とにかく、治療の準備を始めたかった。焦る俺の対応に、不審を抱かれなかっただろうか?だが、それも気にしている余裕はなさそうだ。急ごう。ここではもう少し本式に、自己を清めなおすことが必要だ。そう見て取れた。この村には、一見して病魔が拡がり始めている。
師が編み出した医術のすべは、魔法の理論と混合し、一種独特のものとなっている。本式で癒すとなればこちらにもそれなりの準備がいる。すでに三日ほど前から菜食に切り替えていた。この体躯で菜食のみ、というのは事実こたえるのだが、旅に耐えうる体を維持しながら、食をコントロールしていた。
治療中、我々は患者と衣食住を別にする。いつも通りに断って、村のはずれにテントを張り、野営の準備をする。―――空を見たが、しばらくは雨も降りそうにない。河原でも大丈夫だろう。
設営をしながら、ふと、すぐそこの繁みに、獣のような気配を感じた。
……?
…獣のようだが…、人の匂いがする。自分と同じ獣人だろうか。だがそれにしては妙な気配だ。何食わぬ顔で、目だけをそちらに走らせた。
すると、草葉の陰に二つ並んだ小さな瞳と目があった。子供だった。…犬?…犬種の…獣人の子供?警戒しながら、こちらをうかがっている。
……その顔には、はっきりとひどい皮膚病変が見て取れた。さきほど村人たちのそこかしこに見たものと、同じ病変。
…目にした中でも、この子は特にひどい。右側の目から耳を覆う一帯が禿げていて、瞳は色を失いかけている。だがそこだけでなく、四肢のいたるところが禿げちょろになっていた。毛色もよくない。毛の抜けたところは皮膚があらわになっていて、赤い発疹が見えている。皮がぼろりとめくれているところもあった。垢と泥で汚れていても、下に肉が露出しているのがはっきりとわかる。
あまり記憶にはないが…、この村の子供だろうか。声をかけようとした矢先、その子供は姿を消した。
短いですが、場面が変わるのでここで区切ります。




