表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
自称現実主義者の異世界トリップ  作者: GUOREN
自称現実主義者、従騎士になる

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

256/256

256.

セラ小隊長の締めの言葉で、長い会議が終わった。

私たちは一斉に立ち上がり、退出する隊長クラスを敬礼で見送る。


身分の高い者から順に、重厚な扉の向こうへ消えていく。


その際、近衛隊の面々がこちらをちらちらと見てくるのだが……

やはり女子が珍しいのだろうか。

いや、これだけ美形揃いの近衛なら、見慣れているはず。


隣のナリアッテを盗み見る。

なるほど、納得だ。

彼女の愛らしさなら、歴戦の猛者たちが見惚れるのも当然である。


どうだ、うちのナリアッテは可愛かろう?

だが、やらん。


そんな気分になりかけた瞬間――


ガタンッ!


前の椅子を、シンヴァーク様が蹴った。


……なぜ、そんなに怒っている?


鋭い音に、退出しかけていた者たちがびくりと肩を揺らす。

けれど、近衛隊は蜘蛛の子を散らすどころか、じっとこちらを見ている。

ナリアッテを先に退出させようと促した瞬間――


シンヴァーク様は黙って立ち上がり、私にだけ聞こえる低い声で。


「……そういうとこだぞ」


見上げると、眉間に深い皺を刻んだシンヴァーク様が。 

険しい表情。

けれど、その瞳の奥に、さっき壇上で感じたあの熱がまだくすぶっている。


耳に思わず手をやる。

……近い。

 

彼の纏う冷徹な気と、それとは裏腹な、焦げるような体温。

微かに香る、彼特有の――


以前、口づけられた時に香ったあの匂いが、私の思考を麻痺させていく。


「え?」


渾身の意思でもって聞き返すと、彼は小さく息をつき、視線を逸らした。


「さっ、ルイ様。参りましょう」


ナリアッテに背中を押される。

廊下に出ると、石壁に反響する足音がやけに大きく感じた。


そして、私の隣に――

いや、肩が触れそうな距離にシンヴァーク様が立った。

近衛の視線を遮るように。


部屋に戻り、任務の荷造りを始めようとする。

が、ナリアッテに「邪魔ですわ」と追い出された。


程なく、ウェルフさんがにこやかな顔で現れる。


「同期会のところまで行きましょう。任務で一週間離れますから」


シンヴァーク様もついてくるらしい。

ウェルフさんは苦笑い。


「なんだ、文句か?」


「滅相もございません」


「貴殿には丁度よかったのでは?」


ウェルフさんは笑顔でかわす。

男たちの応酬を横目に、ナリアッテへ伝える。


「ナリアッテ。今から同期会の食堂へ行くんだけど、一緒にどうかな?」


「かしこまりましたわ」


歩き出すシンヴァーク様の雰囲気が、ひどく重い。

さっきの会議での視線、壇上での熱。

それがまだ、私の肌に残っている。


「ルイ」


不意に呼び止められ、顔を上げる。

シンヴァーク様が、すぐ横に立っていた。

吐息のかかる距離で。


「任務中、無理はするな」 


掠れた声。

その瞳は、さっきの疲れ顔ではなく、真っ直ぐ私を捉えている。


「命を張るのは騎士の務めですから」


軽く笑うと、彼の眉が僅かに動いた。


「……その顔で、そういうことを言うな」


指先が、私の頬に触れそうで――


触れない。


その距離に、胸の奥がざわつく。


そう思った瞬間、胸の奥に鋭い痛みが走り刹那


――揺れる。


揺れた自分を即座に切り捨てた。

私の器の問題じゃない。

応えないと、決めている。


「気を抜くなよ」


シンヴァーク様の手が、そっと私の肩に落ちる。

一瞬、重い温もり。

すぐに離れた。


けれど、その感触が消えない。

指先が、勝手に疼く。


「ルイ様」


ナリアッテの声にハッとする。

彼女の視線は、いつものように――


私の動揺を見透かしていた。


「行きましょう。同期会が……お待ちかねですわ」


シンヴァーク様は小さく舌打ちし、それでも共に歩く。

その姿に、抑えきれない苛立ちが滲んでいる。

その起因がたとえ私なんだとしても―― 

思考を、断ち切る。











ヴォイド……!
























……会いたい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ