第6話 白い幽霊たち
襲撃は、いつも唐突に始まった。
ヒュッ、ヒュッ、という風を切る音。
それはスキーの滑走音だった。
「敵だ! スキー部隊だ!」
森の中から、白い悪魔たちが現れた。
彼らは真っ白な雪中迷彩服を着て、目にも留まらぬ速さで木々の間を滑り抜けていく。
ソ連軍の重装備では、深い雪の中を走ることすらできない。だるまのように着膨れしたニコライたちは、ただの的だった。
タタタタタッ!
フィンランド製の「スオミ KP/-31」短機関銃が火を噴く。
至近距離からの掃射。
雪の上にいた歩兵たちが、次々となぎ倒される。
「撃て! あの白い奴らを撃て!」
将校が叫ぶが、ライフルを構える頃には、彼らはすでに木陰に消えている。
そして別の方向から、また銃声が響く。
見えない。捕まえられない。
まるで幽霊と戦っているようだった。
ソ連軍が誇る重戦車も、森の中を高速移動する歩兵には無力だった。砲塔を旋回させる間に、彼らは死角へと回り込んでしまうのだ。
ニコライはトラックの下に潜り込み、耳を塞いだ。
頭上を銃弾が飛び交う。悲鳴と怒号。
誰かの血が、雪を溶かしてトラックの下まで流れてきた。
(なんでだ……なんでこんな森の中で、俺たちは殺されなきゃならないんだ)
解放軍? 歓迎?
全部嘘だ。ここは地獄だ。緑と白の地獄だ。




