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赤き星の震える指 ——死神を撃った男の告白  作者: beens
第4章 3月6日の銃声

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第19話 虚ろな勝者

 ニコライが一歩、確認のために踏み出そうとした時だ。

 

 森の奥から、数人のフィンランド兵が飛び出してきた。

 彼らは倒れた「死神」に駆け寄ると、躊躇なくその身体を担ぎ上げた。

 

「シモ! しっかりしろ!」

 

 彼らはニコライの方を一瞥もしなかった。

 撃ち返すことさえせず、ただひたすらに、倒れた仲間を救うことだけに全力を注いでいた。

 彼らはそのまま、森の奥深くへと消えていった。

 

 残されたのは、ニコライ一人と、雪の上に残された大量の血痕だけだった。

 ニコライはその場にへたり込んだ。

 吐き気がした。

 喜びは微塵もなかった。

 

 彼は見てしまったのだ。

 マスクが吹き飛んだ後の一瞬の素顔を。

 それは、悪魔でも怪物でもなかった。

 ただの、自分と同じくらいの年齢の、小柄な若者だった。

 

「……人間じゃねぇか」

 

 ニコライの声が震えた。

 俺たちが「死神」と呼び、恐れおののいていた怪物の正体。

 それは、ただ国を守ろうと必死だった、一人の人間だったのだ。

 

 俺は、怪物を倒したんじゃない。

 俺は、人間を……あの小さな若者の顔を、この手で吹き飛ばしたのだ。

 その事実が、鉛のように重くのしかかった。

 遠くで勝鬨かちどきのような声が聞こえる。防衛線が突破されたのだろう。

 戦争は終わる。

 だが、ニコライの中の戦争は、この瞬間、永遠に終わらない呪いへと変わった。

 彼は血の滲んだ雪を見つめ続け、涙を流した。

 それは恐怖の涙でも、安堵の涙でもなく、取り返しのつかない罪悪感の涙だった。

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