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赤き星の震える指 ——死神を撃った男の告白  作者: beens
第1章 レニングラードの行軍

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第1話 約束された花束

 1939年11月下旬。レニングラード軍管区。

 吐く息が白く濁る朝、広場には数千の兵士が整列していた。

 新しい軍服の匂い。銃油の匂い。そして、熱狂の匂い。

「同志諸君!」

 政治将校コミッサールの声が、拡声器を通して広場に響き渡った。

「我々の任務は神聖なものだ。隣国フィンランドの労働者階級は、資本主義の圧政に苦しんでいる。彼らは、我々赤軍の到着を今か今かと待ちわびているのだ!」

 列の中ほどで、ニコライ・ヴォルコフは直立不動の姿勢を保ちながら、その言葉を聞いていた。

 20歳。徴兵される前は、トラクター工場の工員だった。手先は器用だが、人を撃ったことなど一度もない。

 だが、今の彼には微かな高揚感があった。

 

(俺たちは侵略者じゃない。解放者なんだ)

「フィンランド軍など、我々が国境を越えれば、その威容に恐れをなして逃げ出すだろう。諸君を迎えるのは銃弾ではない。花束だ! ヘルシンキでの勝利パレードに備えよ!」

「ウラー! ウラー!」

 

 広場を埋め尽くす万歳の声。

 ニコライの隣で、同郷の友人イワンが小声で囁いた。

「聞いたかニコライ。2週間で終わるってさ。クリスマスまでには家に帰れるぞ」

「ああ。トラクターの修理の続きをしなきゃな」

 二人は顔を見合わせて笑った。

 彼らの背後には、地平線を埋め尽くすほどのT-26戦車や火砲が並んでいた。

 誰が見ても勝負は明らかだった。象がアリを踏み潰すようなものだ。

 しかし、彼らは気づいていなかった。自分たちの軍服が、鮮やかなカーキ色であることに。

 雪の降るフィンランドの森で、その色がどれほど目立つ「的」になるのかを、誰も想像すらしていなかった。

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