第16話 殺戮の森
部隊はウルリスマーの森林地帯へと突入した。
そこからは、戦争ではなく、一方的な「殺戮」だった。
タタタタタタッ!
フィンランド軍のサブマシンガン(スオミ KP/-31)が、近距離から火を噴く。
森の木陰、雪の小山、あらゆる場所から弾丸が飛んでくる。
ニコライの隣を走っていたイワンが、突然、糸が切れたように前のめりに倒れた。
「イワン!」
思わず駆け寄ろうとしてか、ニコライは息を呑んだ。
イワンの胸から腹にかけて、一直線に赤い穴が開いていた。ハチの巣だ。
彼は何か言いたげに口をパクパクさせ、血の泡を吹き、そして動かなくなった。
「進め! 止まるな! 死にたいのか!」
後ろから政治将校が怒鳴る。
ニコライは泥まみれになりながら這い進んだ。
涙も出ない。恐怖で叫ぶ声も枯れた。
ここは人間の来る場所じゃない。
俺たちは、巨大なミキサーの中に飛び込んでいる挽肉だ。
混乱の中、ニコライは部隊からはぐれていた。
硝煙で視界が白い。
自分がどこにいるのか、前がどっちなのかも分からない。
ただ、目の前にある灌木地帯に向かって、本能だけで足を動かした。
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