第11話 希望の崩落
小隊がパニックに陥りかけたその時、後方から増援が到着した。
その中に、一人の男がいた。
特殊な迷彩服を着て、手には高精度のスコープ付きモシン・ナガンを持っている。
「安心しろ、同志たち」
男は不敵に笑った。
「噂の『幽霊』を退治しに来た。俺は本国の射撃大会で優勝した男だ。奴がどこに隠れていようと、このスコープで見つけ出してやる」
カウンター・スナイパー(対狙撃手)。
軍司令部が送り込んだ切り札だった。
ニコライたちは安堵のため息をついた。そうだ、我々には数だけでなく、技術もあるのだ。
そのスナイパーは慎重に位置取りをし、倒木のカモフラージュを利用して身を隠した。
「奴がもう一度撃ってくれば、その瞬間に仕留める」
頼もしい言葉だった。ニコライたちは固唾を飲んで見守った。
時間が過ぎていく。
太陽が傾き、夕暮れが近づく。
西日が森をオレンジ色に染め始めた。
その時、キラリと光るものがあった。
友軍のスナイパーのスコープが、西日を反射したのだ。ほんの一瞬の輝き。
――ターン。
乾いた音が響いた。
ニコライが振り返ると、頼みの綱だったエリートスナイパーが、仰向けに倒れていた。
スコープのレンズが粉々に砕け散り、その奥にある右目を、弾丸が貫通していた。
「あ……あぁ……」
ニコライの口から、言葉にならない悲鳴が漏れた。
勝負は一瞬だった。
相手は、こちらの切り札が「見る」よりも早く、「見つけて」いたのだ。
スコープの反射光すら利用する怪物。
希望は、血糊と共に雪の上にぶちまけられた。
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