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第五話 野ばらよ、咲き誇れ
王妃は、奥庭の薔薇をぼうっと眺めていた。
初夏の風が吹く。
赤も白も黄も、美しく咲いている。
王国には古い伝説があった。
淑女は薔薇のように咲き誇れ、と。
長女は嫁いだ。
次女も嫁いだ。
暗愚と思われた長男は北へ行った。
試みは成功したらしい。
次男は東へ。
三男は南へ。
双子は学園へ。
気がつけば、みな勝手な場所へ散っていった。
庭園の薔薇のようには育たなかった。
けれど。
それぞれの場所で、それぞれに咲いている。
「王妃殿下」
宰相が声をかけた。
「本日の訓示を」
セレスタはしばらく、庭を見ていた。
その隅で、小さな野ばらが風に揺れている。
まだ幼い末娘によく似ていた。
「そうだな」
セレスタは少しだけ笑った。
「野ばらよ、咲き誇れ」
それが、おかん王妃の最後の訓示だった。




