LAST Code
あれから、数ヶ月たってフレイルの復興はあっという間だった。魔物の襲撃から避難していた人たちも、フレイルじゃないと落ち着かねぇ、と戻ってきていた。緑豊かな土地は復活して、季節の野菜や果物がたくさん実っている。
花が咲いて蝶が舞っている。支援してくれる国もあって、以前の活気を取り戻していた。
『フレイルの住民は強いから大丈夫ですよ』
カイルはライエルの言葉通りだったなと、思いながらサラと手をつなぎながら夏祭りに来ていた。
エリスは私が預かっておくから、二人で行っておいでとアイルの言葉に甘えさせてもらった。屋台を出している住民たちとも話ながら見て回る。
皆笑っている。
笑顔で溢れている。
相変わらず、底なしに明るいなと思った。出来立てのスープを飲みながら表情が緩む。ヒュー、ドンッと音を立てて花火が上がり始めた。カイルは花火に彩られるサラの表情を見て、過去を思い出していた。
新緑のドレスを着たサラの姿が。
瞳は涙で潤んでいる。
そうだ。
五年前の僕たちは――。
『ごめん。サラさん、ごめん』
『会いたかった――会いたかったですわ! カイルさん! よかった――生きていてくれてよかった! 生きていてくれてありがとうございます!』
『僕も会いたかったです。サラさん。聞いて。僕はサラさんが好きです』
『私もカイルさんが好きですわ』
カイルは懐かしいな、とサラに言った。二人に再会の場所でもある。会いたいと願った。願いが叶ってお互い告白をした。交わした口づけ。
五年前の記憶が鮮明に蘇る。
あの時も今みたいに花火が上がっていた。あれから、もう五年がたつのかと見ながら思う。
時がたつのは早い。
迷って傷ついた時期もあった。
お互いがお互いを強く思ってしまった故に、すれ違いもあった。
今は視線を合わせて。
時に泣いて。
怒って。
素直になれる。
一歩一歩前に進んでいける。例え行きつく先が、地獄でも愛しい君となら、大地を踏みしめていける。それが、残された者の宿命ならば歩調を合わせて踏みしめていこう。
道を間違うなんて二度とない。
「カイルさんに報告がありますの」
「サラさん、もしかして?」
カイルの質問にサラはにっこりと笑う。そうか、と涼やかな目元が綻ぶ。また、名前を考えなければいけないと、その声が弾んだ。
だが、ハッとした。
プロポーズとエリスの妊娠の時も、あれだけ騒ぎになったのだ。今回も騒ぎにならないわけがない。しかも、発覚したのは男女の双子である。
喜びも大きいだろう。
「カイルさん。皆さんに報告をするかどうか悩んでいまして?」
「あの騒ぎになるかと思うと頭が痛くて」
「あら? カイルさん。私は皆に知ってもらえた方が嬉しいですわ」
「サラさんがそう言うのなら、僕はかまいませんが」
「おーい! サラちゃんにカイル!」
カイルとサラを呼ぶ声がする。
サラがいて。
エリスがいて。
アイルがいて。
ケアハウスの子どもたちがいて。
メフィスがいて。
気まぐれのジャンク屋がいて。
新しい命もあって。
仲間たちとの絆があった。
確かにそれはここにある。
存在する。
結んだ糸は簡単にはほどけなしない。君たちとならどこへでも歩いていける。
「そんな端にいなくても、こっちに来いよ!」
「カイル先生! サラお姉ちゃん! 早く! 花火が終わっちゃうよ!」
「さぁ、行きましょうか? お姫様。皆のところへ」
カイルはサラへと手を差し出した。
「ええ。喜んで。あなたとならどこへでも行きますわ」
「今、行きます!」
カイルが返事をする。
――あえて聞きましょう。
――カイル・コールエン。
――はい。
――サラ・コールエン。
――はい。
――あなたたちは今『幸せですか』?
――私は『幸せ』ですわ。
――僕も『幸せ』です。
色とりどりの花火が上がり続ける。
復興を祝うみたいに。
希望と願いをのせて。
ざわざわと、木々が揺れた。
二人の間に風が吹き抜けていった。




