↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24/25

Code23

 ――……イ。

 ――ル……い。


 ――アイル先生。


 アイルは呼ばれている気がした。洗濯物を干す準備をしていた手を止める。カイルが帰って来たのかと周囲を見渡してみたが、誰もいない。おかしいわね、気のせいかしら? と首を傾げる。


 ――聞こえていますか?

 ――アイル先生。


 もう一度、聞こえてくる。呼吸は苦しそうだったが、カイルの声だった。


「カイル……くん」


 ――話しかけているのが、ようやく僕だと認識をしてくれましたね。


「この大バカ者―!」


 カイルだと分かった瞬間に、叫ばずにはいられなかった。心臓が煩いほどの鼓動を立てている。全身の血圧が上がっても気にもしなかった。


「怪我がまともに完治していなくて、診察に行っている間に騎士団に合流するなんて何をしているの……! 勝手な判断をするのはやめて……!」


 ――先生、声が大きいです。

 ――魔法石が壊れてしまいます。


「魔法石よりも自分を優先させなさい!」


 ――だって、先生の声が聞こえなくなるじゃないですか。

 ――せっかく聞けたのに。


 アイルの耳が小さい声をひろった。この無自覚の人たらし……! 憎めないじゃないと! と言いながらも表情が緩む。いじらしくてかわいらしい。年甲斐もなくときめいてしまいそうだ。エリスとサラに嫉妬されてしまいそうだ。


 内緒にしておこう。



「無事でよかった……!」


 ――勝手な判断をしてごめんなさい。

 ――でも、魔物に飲み込まれていく町を、見ているだけなんてできませんでした。


 ――エリスやサラさん、ケアハウスの子どもたちの未来すら守れなかったら、僕は親として後悔をしてしまうでしょう。

 ――そう思いました。


 ――そうね。

 ――あなたはそんな子だったわよね。


 アイルは先ほどとは一転して、切実なカイルの声に声を詰まらせた。そういえば、こんな子に成長したなと実感をする。意思の強さには勝てないなと洗濯物の準備を再開する。


 ――サラちゃんやエリスちゃんとは話せたの?

 ――ええ。


 ――怒られてしまいましたが。


 二人に怒られているカイルを想像してしまう。特にエリスの性格はサラによく似ている。それなりのダメージは大きいだろう。まぁ、家族の仲はいいからよしにしましょう、と結論付けた。


「それはそうでしょう。怪我の調子はどうなの?」


 すぐに、医者としての表情に戻る。


 ――今はライエル騎士団長に手当をしてもらって、落ち着いています。


「ねぇ、カイル君」


 ――アイル先生?


「奇麗な空をしているわね」


 ――僕はこの日を忘れないと思います。


「私も。じゃあ、受け入れ準備をしておくわね」


 ――ありがとうございます。

 ――それでは、後ほど。


 通信を終了する。


 ――カイル君のお父様、お母様。

 ――この子の成長が見えていますか?


 ――届いていますか?


 ――安心してください。

 ――人思いの素敵な子に育ちましたよ。


 アイルは窓から入ってくる零れ日に、瞳を細めるのだった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。