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幽囚葬列  作者: 或鏡α
第一章 軌道と言う名の鎖

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8/10

第六話 原点回想

 私の視界に飛び込んできたのは、あの時の殺人鬼だった。

六年前。

私がまだ、小学校三年生だった時の事。

当時の親友、氷室光ひむろひかる君が生きていた時。

私達はとても仲が良かった。

この頃は皆性別で別れて遊ぶ子供たちのほうが多かったけれど、私達は違った。

お互い絵を描くのが好きで、よく光君の家に遊びに行って絵を描かせてもらった。

私の家に来ることもあった。

「蒼ちゃんは絵が上手だねぇ、好きっていう気持ち、伝わってくるよ」

「へへへへ、ありがとう。光君。光君こそ、楽しそうに描いてていいじゃん」

こんな会話を繰り返してた。

光君は「男子なのに、絵を描くのが趣味とか気持ち悪い」ってよく言われてたけど、その度に怒って言い返してた。

気弱ではあったけれど、ちゃんと言い返せてたのは今でも凄いと思える。

「言いたいことをハッキリと言う」っていうのは、大人でも難しいから。

そんな感じで仲が良かった私達。

あの時、あんな事件さえ起きなければ、今も親友でいられたハズなのに。

七月一日。

暑い夏の日。

悲劇が起きた。

事件当日、私は光君の家に泊まることになっていた。

七月一日は光君の誕生日で、お祝いするという話だった。

私は光君を驚かそうと、約束よりも早く家へ向かった。

窓から家の様子を覗いた時、私は見た。

見てしまった。

三十代位のおじさんが返り血で顔が真っ赤になっていたのを。

光君を、お母さんを、お父さんを、滅多刺しにしているところを。

怖かった。

必死に息を殺して物陰に隠れた。

やがて、男は慌ただしく出ていった。

それを見た私は、急いで近所の人に伝えて、通報してもらった。

私は必死に犯人を見たことを伝えた。

けれど、大人達は真剣に対応してくれなかった。

「きっと、気が動転しているんだね」とか。

「ショックでアニメの内容と混じってるんだね」とか。

特に警察がそうだった。

だから、子供扱いされるのが嫌い。

私の話を真面目に聞いてくれたのは母だけ。

同級生に話しても、揶揄われるだけだった。

唯一の救いといえば、光君の妹であるあかりちゃんが殺されずに済んだこと。

この時ばかりはうちの学校が休日に遠足がある事を感謝した。

事件の後、灯ちゃんは親戚に引き取られた。

だから、その後は分からない。

私が大嫌いな警察によると、金品を狙った無差別殺人だったらしい。

母から聞いた。

今思い返すと、自分でもよく無差別殺人とか分かったな、と思う。

なんで光君達が死ななければならなかったのか。

それが知りたかった。

私は犯人を恨んでいたが、警察はもっと恨んでいた。

いや、恨みを通り越して憎んでいた。

だって、まだ犯人が捕まっていないから。

私は何よりその事実に腹を立てた。

そして、小学生三年生でありながらも、必死に犯人について調べた。

絵を描くことを捨てて。

パソコンにかじりついて。

今日までずっと調べてた。

 何の情報も得られなかった犯人が、今、私の視線の先――モニターの中にいる。

老いてはいるが、確かにあの犯人だった。

両手両足が椅子に縛り付けられている。

そして時折、「おい!何なんだ!ココから早く出せ!」と叫んでいる。

「橘さん、驚いた?これがプレゼントよ」

ニコリと笑い、そう言う。

「あなたに二つの選択肢を与えるわ」

スッと左手の人差し指を立てる。

「一つはこの列車から出るということ。出たいならそこにあるブレーキを引きなさい」

右手でそう指差す。

そして、右手の人差し指を立てる。

「もう一つはこの男に報復すること。私がそれだけの力を与えるわ。ただし、この選択をするなら一生私の下につくこと」

それは、駒へと成り下がることを意味していた。

どちらか一方のみ。

私は必死に悩んだ。

この列車から降りたい、ただそれだけ。

この気持ちはたった今吹き飛んだ。

私以外の人ならきっと、迷わず出るだろう。

でも、私は違う。

この六年間、男について、本当に必死に探した過去がある。

ここで降りたとして、日常が戻ったとしても、報復のために生きてきた私の人生はどうなるの。

光の敵を討とうと頑張ってきた私はどうなるの。

私は――。

言いかけた瞬間。

ドォォォォォン!

大きな落雷でもしたかのような音にかき消された。

「あら、このタイミングで着いてしまったの」

困り果てたように顎に手を当てる。

そして、ブチ破られた車掌室の扉の奥から、黒煙の中から、栞音が現れた。

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