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恋を必要としない令嬢に、皇帝の執着だけが通じない  作者: 絵宮 芳緒
第七章 隠さない想い

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第一話 決定される未来

皇城、執務室。


「承諾は得た」


低い声が、静かに落ちる。

室内にいた者の手が、わずかに止まった。

書類をめくる音。

ペンの動き。

すべてが、一瞬だけ途切れる。


向かいに立つのは、宰相アルベルト。

その表情は変わらない。

だが――


「……確認いたします」


わずかに間を置く。


「娘の意思によるもの、という理解でよろしいでしょうか」


視線は真っ直ぐだ。

探るのではない。

確かめる。

レオニスは、迷わない。


「ああ」


短く、肯定する。

それだけで、十分だった。

アルベルトは、ほんのわずかに目を伏せる。


(ついに、か)


内心で呟く。

だが、それを外には出さない。


「では――」


顔を上げる。


「婚約の手配を進めます」


即座に、切り替える。

レオニスは、頷く。


「早い方がいい」


迷いはない。


「不要な横槍が入る前に、確定させる」


淡々と告げる。

だが、その言葉には重みがあった。

アルベルトは、それを受け止める。


「承知いたしました」


短く答える。

だが――

一つだけ、言葉を加える。


「……陛下」


レオニスは視線を向ける。


「公の場においては、相応の距離を」


静かに告げる。

否定ではない。

忠告だ。

レオニスは、わずかに目を細めた。


「分かっている」


短く返す。

それで終わり――のはずだった。

だが。


「必要以上に隠すつもりもない」


続ける。

アルベルトは、わずかに息を吐く。


(やはり、そうなるか)


予想はしていた。


「……程々に、お願いいたします」


控えめに言う。

レオニスは、わずかに口元を緩めた。


「善処する」


まったく信用できない返答だった。

アルベルトは、それ以上は言わない。

無駄だと知っている。


「では、失礼いたします」


一礼し、踵を返す。

足音が、静かに遠ざかる。

扉が閉まる。

室内に、再び静寂が戻る。


「……」


レオニスは、窓の外へ視線を向ける。

光が差し込んでいる。

変わらない景色。

それでも――

わずかに、空気が違う。


「……」


思い出す。

あの時の視線。

あの距離。

そして――

小さく返された言葉。


「……はい」


短く、息が落ちる。

それだけで、十分だった。

ペンを手に取る。

だが、すぐには動かさない。


「……遅くはないな」


ぽつりと、落とす。

誰に聞かせるでもなく。

それから――

再び、手を動かし始めた。


決定は、すでに下された。

あとは、進めるだけだった。

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