表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
恋を必要としない令嬢に、皇帝の執着だけが通じない  作者: 絵宮 芳緒
第三章 囲い込み

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

48/92

第二十一話 外れる枷

静寂は、変わらない。

音はない。

光も、乏しい。


時間の感覚は、すでに意味を失っている。


ノエルは、立っていた。

座っていたわけでも、眠っていたわけでもない。

ただ――

待っていた。


「……遅い」 


小さく、落とす。

誰に向けた言葉でもない。

だが、確信している。

ここで終わるわけがない。

終わる理由がない。


「……」


視線が、わずかに動く。

扉。

そこに、変化はない。


鍵も、音も、乱れもない。

それでも――

十分だった。


一歩、踏み出す。

迷いはない。

止める理由がない。


「……関係ない」


低く、呟く。

拘束。

命令。

家。

すべて、意味を失っている。


残っているのは――


「……セレス」 


その名だけだった。

それでいい。

それだけでいい。


指先が、扉に触れる。

冷たい。

だが、関係ない。


力を込める。

軋む音が、小さく響く。

止まらない。

止められない。


「……」


もう一度、力をかける。

鍵はある。

だが――

意味はない。


外側の理屈は、内側には届かない。

わずかな隙。

それだけで十分だった。


音が、ずれる。

構造が、外れる。


「……行く」


低く、落とす。

確認ではない。

決定だった。


扉が、開く。

外の空気が流れ込む。

止まらない。


そのまま、踏み出す。

足取りは一定。

迷いはない。


廊下は静かだった。

誰もいない。

気配もない。


だが――

関係ない。

視線は前へ。

それだけでいい。

その瞬間――


「そこまでだ」


低い声が落ちる。

止まらない。

止まる理由がない。

一歩。

さらに一歩。


「ノエル」


名を呼ばれる。

それでも、止まらない。


「……遅い」


小さく、呟く。

その瞬間だった。

影が、動く。

複数。

一斉に、間合いを詰める。


速い。

だが――

ノエルの動きも止まらない。


捕らえられる。

腕を取られる。

押さえ込まれる。

床に叩きつけられる。

鈍い音が響く。

それでも――


「……関係ない」


低く、落とす。

抵抗はしない。

必要がないからだ。


結果は、変わらない。

止められたわけではない。

遅れただけだ。


「……行く」


もう一度、呟く。

視線は、前を向いたまま。

その先にあるものを、見据えるように。


拘束が強まる。

動きは完全に止められる。

だが――

止まってはいない。


「……次は」


小さく、落とす。

それだけで十分だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ