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恋を必要としない令嬢に、皇帝の執着だけが通じない  作者: 絵宮 芳緒
第三章 囲い込み

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第六話 止められている者

皇城の門前でのことだった。


「やめろ」


低く、押し殺した声が落ちる。


ノエルは足を止めた。

振り返る。

そこにいたのは、父――リグナス侯爵だった。


表情は硬い。

だが、それは怒りではない。

焦りだった。


「ラディア公爵家だぞ」

短く言う。


それだけで十分だった。

その意味を、知らないはずがない。

ノエルは何も答えない。

視線だけが、わずかに揺れる。


「お前は長子だ」

言い聞かせるように、続ける。


「お前が動けば、家が終わる」


静かな声だった。

だが、その言葉は重い。

事実として、そこにある。


ノエルは、ゆっくりと息を吐いた。


「……分かっている」

短く返す。


理解しているからこそ、それ以上の言葉はいらない。

その沈黙に、わずかな焦りが滲む。


「ならば――」


言いかけた、その時だった。


「やめておけ」

別の声が落ちる。


空気が変わる。

ノエルの視線が向く。

そこにいたのは、ラディア家の嫡男――セレスティナの兄であるディオンだった。


無駄のない立ち姿。

視線はまっすぐに向けられている。

逃がさないように。


「……なぜ、お前がここにいる」

低く問う。


それに対し、答えは短い。


「必要だからだ」


感情はない。

ただ、事実だけを置く。


ノエルの空気が、わずかに張り詰める。

ディオンは、静かに続けた。


「陛下は、すでに把握している」


一瞬、時間が止まる。

言葉の意味が、重く落ちる。


「父上も同様だ」


それだけで十分だった。

説明は不要。

それが何を意味するかなど、考えるまでもない。


ノエルの指先が、わずかに動く。

だが――止まらない。


「一度目は警告で済む」

静かに告げる。


「二度目はない」


確定だった。

そこに例外はない。

沈黙が落ちる。


ノエルは動かない。

すべてを理解している。


一歩踏み違えれば、終わる。

家も、立場も、何もかも。


(……次もいる)


ふと、よぎる。

消えない現実。

だが――それでも。


「……関係ない」

低く、落とす。


侯爵の顔色が変わる。

セレスの兄は、表情を動かさない。


ただ、見ている。

止まらないことを。

理解しているからこそ。


ノエルは顔を上げる。

視線は前へ。

もう、戻らない。


「行く」


それだけだった。

確認ではない。

決定だった。

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