表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
130/166

130 先代侯爵の懺悔

「あれは私がおかしくなったせいで、それに巻き込まれてあなたたちを襲うなどという愚挙を犯してしまった。……本当に、申し訳なかった」

 貴族らしくなく、先代侯爵は頭を下げたまま言った。先輩の親にそんな風にされるというのでも十分あり得ないことだ。私は少し慌てて、

「え、いや、その。私は平気ですから。それよりもマリちゃんもそのとき巻き込まれて」

「シホちゃん、私はもう先代から謝ってもらってるんだよ」

 マリちゃんがそっと言った。

「ストームで、治療しているときにね。先代はクラリィ婆ちゃんにも会ってるよ」

「そうだったんだ?」

「そうだよ。先代はガリエス先輩からいろいろきいて、シホちゃんにも謝りたいって言ってたの」

 マリちゃんの説明に私も納得して言葉を返そうとしたとき、ホリィの声が急に頭上から降ってきた。

「あんたの息子があんたに巻き込まれたってどういうことよー?」

 ホリィは私の顔の横の位置まで降りてきている。馬車を降りた辺りからホリィは姿を消していたのだけど、ここで姿を現すとか。リーシア先生とかルートヴィヒはいいとして、先代侯爵は心の準備できていないのでは?

「あなたが神使様ですか」

 先代侯爵は落ち着いた様子だった。

「あなたにもお礼を。あなたの助力のおかげで私は解放されました」

「まあねえ。主にシホの手柄だけど、私の神具がないとできなかったことだし?それで、あんたに巻き込まれてあんたの息子がシホたちを襲ったってどういうことよ?」

「……私が良からぬものに操られてレオナルドの装置を動かし、ストームを人が立ち入れない地にしたことはご存知でしょう」

「あの腐れ人形にそそのかされたんだってのは知ってるわ。死んだ人間を蘇らせてやるだなんて口車に乗せられたってね。それで?」

「申し開きもできませんな。私はただ、死んだ妻と娘に会いたかっただけで」

「お父様、あなたの娘は後にも先にも私だけです。死んだ娘などおりません」

 リーシア先生がきっぱりと言い、それをきいて先代侯爵は弱々しく笑みを浮かべる。

「そうだな、すまない、どうもそこだけ頭が引き戻されてしまって」

「お父様が間違えなくなるまで何度も言いますから、ご安心を」

「ああ、頼むよ。……本当に、お前またちまでもが巻き込まれなくてよかった。レクスには申し訳ないことをしてしまったが」

「何であの人……レクスっていう人はあんなことになったんですか?」

 私は直裁的に訊ねた。先代侯爵は私を見て、

「私がおかしくなっていくのをあの子だけが察したんだ。そして、私のそばになるべくいて、私がおかしくなるのを止めようとした。だけど、その中で悪いモノと接触し、呪われてしまった」

「呪い?もしかして、あなたも?」

「私はそこまでしなくても、あれが何度も囁くだけて錯乱させられてしまっていたが、レクスは強くてね、あれが何を言おうと跳ね返していた。それで、あれは呪いという方法をとって従わせるしかなかったんだ」

「えっと……先代が言っている「あれ」って、ユゲリアのことでいいんですかね?」

 私は確認を求めてルートヴィヒを見た。ルートヴィヒは頷く。

「ええ、間違いないですよ。イースが言っているのはユゲリアのことです。ユゲリアがイースとレクスを狂わせた。……これについては、私こそが謝らないといけない。私がユゲリアの生き人形を作ったがために」

「おじさま、それも謝らなくていいと言ったでしょう。おじさまはおかしなものを宿らせようと思って作ったわけではない、作ったものにたまたまおかしなものが入り込んでしまっただけだって」

 リーシア先生が言うが、ルートヴィヒは深くため息をついて、

「そうかもしれないが、良いものを作るとおかしなものが宿ることがあるから気をつけないといけないのは人形師たちにとっては常識ですから。なので、あれができたときに神域に奉納しておけばよかった。だけど私はそれを避け、手元に置いていた。あまりに傑作で、まるであの子が生き返って傍にいるみたいで……」

「同じモノを幾つも作ったのはなぜなんです?」

 私の問いに、ルートヴィヒは口元を歪めながら、

「それは、あれに宿ったものに囁かれたからですよ。形あるものはいつかは壊れる。そのときのために、同じものを幾つも作っておいた方がいい、と。私もその気になって幾つも作りました。いつの間にか隔絶された空間に閉じこめられて、人形の材料だけはふんだんに与えられて。私は寝食も惜しんで人形を作り続け、ふと気付いたときには、かなりの時が流れていた。私はユゲリアの許しを得て兄の子孫に会いに行ったりしながらも、ユゲリアの人形を作り続けていた。それでいいと思っていたが、知らない間にユゲリアが仕組み、兄の子孫が大変なことになっていた。それで、私はユゲリアの元を去ることにしたんです」

「ガリエス先輩のお兄さんが人間を襲って神々の煉獄に捕らわれたのを知って目が覚めたっていうことですか?」

「ああ、勘違いがありますね、シホさん」

 ルートヴィヒは軽い調子で言った。

「あのときレクスは神々の煉獄には捕らわれていません。あのときレクスを捕らえたのはユゲリアです。ユゲリアは神々の煉獄が発動したと偽装してレクスを捕らえたのです」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ