「害獣駆除をしました(土竜編)」
星明かりしかない暗い獣道。夜目が利く私は苦もせず歩く。
むしろ、日の下の方が眩しくて辛い時がある。これから海に向かうこと一つ取っても、日差しが強いイメージがあって少し憂鬱だ。引きこもりは海と相性が悪い。
普通に考えれば、海=行楽。海レジャーと言えば夏、ということで日差しと繋がっているのだろう。
だが、冷静に考えると、遮蔽物のない船の上なども、季節に関わらず余裕で日差しとお友達なのだ。海=太陽というのは最早確定的に明らか。例外は深海くらい。
様々な見解でサブカルチャーに擦り倒されている私たちではあるが、最近メジャーになった一ジャンルと併せて、『吸血鬼海賊』とかいうのを寡聞にして聞いたことがないのも、海との相性の悪さからだろう。
しかし、深海魚との相性は良さそうだ。幸い人魚というジャンルもあることだし、深海に棲む人魚、日の当たる表層には出られない吸血鬼人魚というのなら、十分ありではなかろうか。とんと聞かないが。
……ひょっとしてもしかすると、吸血鬼というのは重いんじゃなかろうか。いや、愛とか付き合う上でとかなく、コストとして。付き合っていくのに重いのも否定することはまったく出来ないが。
なんてこった。美少女魔王とか竜魔王とかスライム魔王とか、同じジャンルにしても様々な幅広さを見せるというのに、私たちと来たら、属性が渋滞しているのか、大体吸血鬼は吸血鬼で完結している。
いやでも、吸血鬼は種族だからなぁ。職業とは比べられんか。だが、巨乳エルフだのロリドワーフだの、種族ものでも幾らか属性が足されているものはある。本来の姿とは違うギャップが受けるのだろう。
吸血鬼はギャップなんてないからな……。強いていうなら、大体吸血鬼は貴族とワンセットという辺りか。私は一般人だが。貴族的なギャップと言うなら、貧乏吸血鬼とか、河川敷ダンボールハウス吸血鬼だろうか。メジャーにはなりそうもない。吸血鬼に関して言えば部屋の気密性は命に関わる。生態的に、貴族でもなければ生存が出来ないくらい貧弱な生き物なのだ。私たちは。
……なんの話をしていたんだっけ。ああ、夜目がどうとか。
猫も夜目が利く。耳も鼻も触覚も、人間よりも余程優れている。私の知らないはじめて会った種族、獣人である彼女らがどれ程のスペックなのかはわからないが、人間とのギャップに戸惑ったことはないんだろうか。
……なさそうだな。産まれた時から少年と一緒だったという。すり合わせは済んでいるだろうし、その能力は少年のために使われるだろう。あまり参考にはならない。
人間になったとはいえ、やはり私は他の人間とは合わないのだな。
それを残念とは思わない。
別に選民思想があるとかではない。私は、性質的に言えば劣性だ。私たちの多くはそうだと思う。それに気付いてないだけで。
人間は、人間というカテゴリに嵌められているだけで、個々人は違う生物だ。それが多少顕著で分かりやすくとも、思うところはない。
問題なのは、メリットとデメリットを測ることだ。
生前の私は、人と付き合うことのメリットとデメリットを加味し、引きこもることを選択した。私はそうやって生きて来た。生きることのメリットとデメリットを秤に掛けて、死ぬことを選んだのも私だが。
一人というのは凄い楽だ。ストレスが無いが、身を震わす感動も悦びもない。人類の産み出した、サブカルチャーという擬似体験は中々に罪深いとは思う。
他人といるストレスを背負ってまで、共に在りたいと思う程の体験が出来れば良いのだが。
人と人の関係は努力だ。それを怠れば必ず崩壊する。その面倒が上回った際には、今までのように逃げてしまえばいい。私はそうやって生きて来たのだから。
幸か不幸かわからないが、今の私は、引きこもって、完全に人付き合いを遮断しても生きて行ける。
……考えたことがなかったが、私はいつ死ぬのだろうか。
生前の私は、老いて死ぬ、という感覚がわからなかった。目の見えないものに、空の色を伝える術がないのと同じように、老化することがない私に自然死はわからない。
今の私は人間だ。だのに、一年経った今も、私には成長というものがない。
果たして私は老衰するのだろうか。私に寿命はあるのだろうか。
今度も自死を選ばない限り、終わらないんだろうか。
まあいい。先の話だ。どの道殺されれば死ぬのだ。そちらの覚悟ならとうに済ませている。飽きてから、その時のことを考えよう。
今の私は生まれ変わったばかりで、色んなことが新鮮に映る。
しばらくは退屈することはないだろう。とりあえずは、あの人間どもと馴染むことからはじめなければな。
数十年でも数百年でも、飽きるまで付き合おうか。
私は地面の匂いを確かめながら、街道を逸れて奥へ奥へと進んでいく。無駄な思考にリソースを割きながらも、既に手頃な獲物は捕捉している。
何か、獣の匂いを感じるのだが、匂いが疎らだ。大きい獣臭がするのだが、空か、地の下か……。
地面を掘り返したような後があるが、獲物を掘り返しただけかも知れない。抉れた幹に匂いが残っているが、雑食なのか。草食という可能性もあるか。
ん? そういえば草食動物って実は食べるのか? 牛はカボチャやにんじんも食べるよな。雑食だっけ? 胃が四つあるから草食か?
なおも痕跡を追って歩くと、地面の下から微かな振動を感じる。夜行性なのか、この時間でも動いているようで何よりだ。
地面に手を置いて振動を追い掛ける。……でかいな。大型犬くらいはある。
もぐらかと思ったが、異世界ものは随分と発育が良いらしい。木の幹を齧るくらいだから、予想通りと言ってしまえばそれまでなのだが。
地面の中にいる暫定もぐらの位置を把握しつつ、物質創造によって隆起させ、地面ごと暫定もぐらを引っ張りだす。
地層を砂に変えると色々と面倒だったので、暫定もぐらの上、地表まで穴を空け、その分の土を暫定もぐらの下に回して、土の柱を伸ばして暫定もぐらを押し出した。暫定もぐらの周りは、掘ったであろう柔らかな土がまとわりつき、宙に投げ出された時にかるく空に飛び散る。
出て来た暫定もぐらは、陸に打ち上げられた魚よろしくびったんびったんしていた。……もぐら?
いや、地面の中にいる獣だからもぐらかと思い、暫定もぐらと呼んでいただけだが……。あまりもぐらには見えない。
魚というか、ワニというか……。まず、後ろ足がない。
前足は魚のヒレというより、ウミガメのヒレのように前に向けての可動域が広く、土を掻き出し易く。
胴体に対して頭がでかく、目はなく、大きな口を開いて、……口なのかこれ。クリオネのバッカルコーンというか、エイリアンというか、八つに分かれて開いた様は花とかヒトデっぽい。びっちりと牙が咲き、中心には雄しべだか雌しべだか、舌のような長いものがフラフラしている。
後ろ足の代わりに尾びれ……私にはどうにも蛇の二枚舌に見えるものがくっついていた。
鱗はない。毛もない。哺乳類ではあるが、水棲生物のようにつるつるはしておらず、日に焼けない皮膚はハダカデバネズミのように醜い。
総じて形容し難い何かだ。面倒なので暫定もぐらで通す。地面を掘る哺乳類はみんなもぐらだ。
前足を添え、口を開いて動かない姿は花に擬態しているようにも見える。
私が気にせず近付くと、フラフラしていた暫定舌が蠢いた。
私に狙いを定めて伸ばされたので、手のひらで受け止める。
貫通狙いか、巻き付けるのかわからないが、攻撃能力は高くない。そもそも勢いよく伸ばす性質上、余程視野狭窄していなければ巻き付かれることなんてないだろう。鎖鎌とか巻き付けるシーンとかあるが、鎖が伸びきったところで、相手が横から力を加えた友情コンボでもしないと長さ的に不可能だ。鎖の先についた重りで頭を砕くのはわかるが。
重りすらない触手を伸ばして巻き付けるなんて、それこそ先端から新しいのが生え続けない限り厳しい。余白がないのだ。物理的に。
横に逸れた後にも伸ばし続けた時のみ可能性があるので、先端で止めてしまうのが、絡みつかれない正しい対処方法となる。
暫定舌が力を失ったように下に落ち、地面に食い込んで、そこを支点に暫定もぐら本体が跳ねる。これが本命か。
本来は、突き刺すか、絡めてからしたかったであろうジャンプアタックを、こちらから踏み込んで、脇を抜けつつ横原に手のひらを押し当てる。
掌底ではない。内部構造がどうなっているかわからない以上、下手に傷付けて味を落としたくない。
血液操作で、外傷を付けずに血液だけ奪う。始末と血抜きを同時に行えるので便利だ。
吸血鬼に血を吸われて干からびる、という表現がたまにあるが、哺乳類には血以外の水分が多分に含まれているので、見た目には然程影響は出ない。血液以外の肉汁を間違って取り除くなど、ミスをする程血液に対する造脂は浅くはない。
奪う際、血液の流れから、内臓の位置や筋肉の作り、脳や心臓を掌握し、早めに息の根を止めるために優先的に奪い取る。
血液を失えば哺乳類は動けなくなる。とはいえ、最後の力を振り絞って抵抗される可能性がある以上、命を奪うのは早い方がいい。
程なくして、暫定もぐらは外傷一つなく動かなくなる。抜いた血液は私が美味しくいただきました。
人間になって、人間が食べる食事の美味しさを認める私ではあるが、昔とった杵柄というか、相変わらず血液を飲むことに躊躇いはない。
人間の料理に比べると味は劣るが、なんというか、昔から馴染んだ味というか、故郷の味のような安心感がある。
生きた人間の血以外、代替品にはならなかったので、生前は動物の血など飲んだことはない筈なのだが。
口の一本を千切って味を確めてみる。んー……、哺乳類。ワニっぽくはない。イルカのような水棲とも違う。強いて言うなら、柔らかい猪肉だろうか。食ってるものが似てるからだろう。少々獣臭が強い。
特に急ぐ理由もなかったので、辺りを見ながらのんびりと野営地に帰る。生姜とかないかな。香草がいくつか見付かったので臭み消しに使ってみよう。
革袋を貰ったので運ぶのが凄い楽だ。腕力があっても、どうしても力の入れ方には限界がある。お姫さま抱っこが、首と腰に過剰な負担を強いる試練であるのと同じように。花嫁をファイヤーマンズキャリーすれば、運ぶのも簡単だろうて。
戻ると、火の番をしているのは少女だった。
聞くと、持ち回りの一番最後は少女で固定らしい。当たり前だが、交代で見張りをする場合、最初と最後は中途で起こされることがないため、一番楽となる。
甘やかしてるな。新入りとは言え、特別扱いすると負い目を感じさせるだろうに。と思ったが、ヒーラーはパーティの生命線だ。体調を万全にするのも仕事の内かも知れない。
「おかえりなさい。もうすぐ日が昇りますけど、ずっと起きていたんですか?」
「ああ。心配をして貰わんでも、休息は十分に取っているから眠気はないよ」
まだ寝ている面子に気を遣ってか、小声で話し掛けて来る少女に、同じ音量で返して腰を落ち着ける。
物質創造で椅子を出し、焚き火から離れて本を読む。少女が薪を足している時に出したので見られてはいないが、流石にスルー出来るほどではなかったようだ。
「……あのぅ。暗いところでは、読みづらくありませんか?」
「問題ない。私は夜目が利く」
へぇーと感心する少女。気にするところはそこなのか。
猫どもも夜目が利くので、夜間でも視界があることに疑問はない。エルフもそうなんですねと朗らかに笑うが、私はエルフではないのでなんとも言えない。私を一般的なエルフと思って覚えると、いざ本物のエルフと接触した際に、問題がありそうで少し心配だ。
その後、私が何を読んでいるかと訊ねて来る。マイペースというか、動じないな。どうにも。
旅で、嵩張る本を持ち歩いているのか、という疑問を突っ込まれるかと思ったんだが。因みに答えは否だ。
私は記憶力があまり良くない。だが、人間の記憶というのは、引き出せないだけで、情報は脳に蓄積されているのだという。
ここで私の物質創造が役に立つ。
私が思い出せない知識も、具現化することで思い返すことが出来るのだ。今回は、読みやすいように写真多め、雑誌を物質創造している。
内容は初級の調理方法に関する基礎的なもの。生前の私に人間の食事は必要が無かったが、人間の赤子を拾った際に、子供の栄養を考えて、自炊くらい出来るようになった方がいいと覚えたのだ。
味見が出来ないので濃かったり薄かったり、アレンジやより美味しさを追求するあまり、血の滴る生食が一番! となってしまい、コンビニって便利だねというオチがついたのはご愛嬌ということにしておいて欲しい。深夜も開いてる。私たちも御用達だ。
お陰で、ワインに合うつまみばかり好む子供になってしまい、私に子育ての才能はないと痛感したものだ。水は腐るから、酒を与えたのは仕方ないんや。私しか悪くない。
完全に豚肉と同じではないが、似ているので、同じ調理方法で試してみよう。
少女が、私の読んでいる雑誌を覗きに来るが、生前の言語のため、何が書いてあるかは読めない。写真がふんだんに盛り込まれているので、じっくり読めば内容は理解出来るだろう。私の手から離れてしまえば雲霧の如くなのだが。
聞くと、起きる時間は日が昇ると同時、だという。
もう調理に入って問題なさそうな時間なので、革袋から戦利品を取り出す。肉、スイカ、カボチャ、そして香り付けのハーブ。
香草は、匂いを確めながら暫定もぐらと合うものを選んだつもりなので、素人特有の余計なアレンジにはならないと思いたい。
因みに、スイカやカボチャは当たり前のように噛み付いて来ようとしたので、逆に齧り返してやったら、同じ蔓の輩は大人しくなった。ガタガタ震えて野菜の振りをしたとも言う。当然、採集したもの以外はこちらに水が向かないよう空気に徹していた。
出した辺りで、私が帰還した時にはもう目を覚ましていた少年が、わざとらしく起きて来る。気を遣わせてしまったな。
だからといってどうしようもない問題なので、この件については仕方ない。もしも行動に支障が出るならフォローしよう。彼もプロだから、心配はしていないがね。
「もぐらか、また大物を仕留めたな」
……やっぱりこれもぐらなのか。ニュアンス的に魔物というより動物っぽい。見た目は今生で一番モンスターっぽいのだが。
これで大物という辺り、然程厄介ではないのだろう。
そう思ったが、食害という意味では厄介な存在らしい。狂暴ではないのでこっそり作物を狙う。そこそこ大きいのでがっつり食べる。土壌も荒らすので被害が大きくなる。
戦闘能力もあるプロの農夫なら返り討ちにも出来るが、農家の子供など、襲われたら洒落にならない場合もあるので、冒険者にも討伐依頼が出る厄介者なのだ。
一般的には罠を張るか、使い捨ての感知結界を使い、出てくるまでひたすら待機。パフォーマンスは大丈夫なのかと思ったが、人間が強いというのは戦闘能力のみならず、一徹二徹程度ではびくともしないし、畑から離れて待機してても逃がすことがないくらい機敏に動けるらしい。
罠を張って逃がさない、探知を使って見付ける。近くには出てこないので矢や飛び道具で牽制する。ここまではわかるが、その気になれば剣だけでも仕留められるくらい人間は強い。流石に走って行って切るわけではなく、剣を投げて致命傷を与えるらしいが。大概である。
何はともあれ、食材として普通に食べられているようで問題はない。
血液の流れから、身体構造の粗方の目処は立っている。首を外すために咽から包丁を入れ、腹を裂いて内臓を取り除く。
包丁は物質創造で用意した。血は取り除いたが、ドリップは出るし通過菌もある。水は近くの木から奪い取った。
内臓は手を出さなくていいだろう。絹の風呂敷で包んで退けて置く。
皮を剥ぎ、肉を外し、あっという間に骨と枝になる。シカの解体を見ていて良かった。参考になる部分が多く、美味しく捌けたと思う。後は数をこなせば詰められるだろう。
頭は骨付き肉のように使っていいだろう。尾は未知数。齧った感じ豚足っぽい。前足は、これが本当のヒレ肉……いや、なんでもない。
さて、切り分けよう。料理書入門によると、豚肉は中まで火を通すらしい。色々と思うところはあるが、今回はこれに従う。
ブロック肉をステーキサイズに切り取り、ドリップ……はみ出た肉汁の水分を奪い取る。すりつぶした香草で揉み、重さの1%の塩を片面にまぶし、両面に片栗粉を刷り込む。
豚肉の調理は、牛肉や鶏肉と比べると難しいらしい。手頃な食材だけに、難儀なことだ。いや、環境が違えば流通も違うか。
豚肉は中火だ。現代の料理知識はこういうところで無茶を言う。電子レンジで簡単調理とか。
弱火、中火、強火くらいの温度なら、生前のコンロを使った知識でなんとなくわかる。とろ火とかになると何を言っているのかわからん。
焚き火に手を突っ込み、驚く少年少女を無視して火の温度を確める。熱したフライパン程度で火傷するほど、柔な肌はしていないつもりだ。
そのフライパンを物質創造し、ランダム性の強い焚き火で、温度が均一に通るように温める。私の目は、人間よりも温度が見える。
植物油を敷き、もぐらのステーキ肉をぶら下げて、脂身だけ先に焼く。火の通り加減が違うこと、肉と一緒に焼くと縮んで反り返ること。冷蔵庫の肉が常温に戻ることから、こうした方がいいらしい。冷蔵も熟成もしていないけれど。
片面三分、両面焼いたら網の上で一分寝かせ、肉を休ませる。網も物質創造した。我が家の焚き火に魚焼きグリルは併設されていない故。
最後に胡椒を振って出来上がり。予め、水分を抜いた木を物質創造して、皿にしておいた容器に乗せ、少年に差し出す。らしくもなくじっと、調理工程を見ていた少年は、ナイフでもぐらステーキを突き刺し、ワイルドにかぶりついた。
「……うまいな」
お店の味、という謳い文句は大袈裟であろうが、野営地で食べるものとしては十分だろう。というと、そもそも街の外で食う食事なんて、保存食か、仕留めた獲物を雑に焼いた漢の料理ぐらいだと言う。ただの肉でもやり方次第でこんなに旨くなるんだなぁと、しみじみ噛み締めている。
もぐらの方が上手くいったので、今度はカボチャに手を加えよう。
玉ねぎも牛乳もないが、砂糖と塩と胡椒とコンソメとバターがある。冷製ポタージュを作ろう。
工程は省略する。炒めて煮崩してこして冷やして味を整えればいいだけだ。
街で購入した調味料にコンソメがあったのには驚いた。乱暴に言えば、肉や野菜を煮詰めたものなので、そうおかしなことではない。豊かな証拠だ。
スイカはそのままデザートでいいだろう。甘さが足りなければ塩でもまぶせばいい。活きがいいからか、食べた感じ十分だと思う。これもポタージュ同様冷やす。冷やし方は、お風呂に湯を張った時と逆のことをすればいいだけだ。
少女はポタージュが気に入ったようだ。同じく木で作った器に、全員分よそう。
後は肉を焼くだけだ。焚き火に手を加えて火力を増し、フライパンの代わりに鉄板を強いて、肉を焼き続ける。
その匂いに気が付いたのか、テントからもそもそと猫どもが這い出て来る。朝は弱いらしい。単に睡眠が大事で他が二の次なのかもわからない。
おっさんはもう起きてる。野営してるっつーのに、近くで肉を焼いて、気付かなければ冒険者失格だろう。
私が作った朝食はお気に召したようだ。ステーキサイズだと面倒だったので、ブロックをそのまま焼いたりしてみたが、そっちも十分旨いようだ。
食い盛りの冒険者だ。朝から大型犬サイズのもぐらくらい、ぺろりといけた。少食らしい少女も厚切りステーキ三枚はいってた。
子育てをしている時は上手くいかなかったが、自分の作ったものを美味しそうに食べてくれるというのは嬉しいものだね。塩胡椒では飽きるだろうから、焼き肉のタレでも調合したいところだ。どうせ肉主体だろうし。
ひたすら肉を焼いてる私に、少年が「お前は食べないのか?」と聞いて来るが、腹は減っていない。
それで少年も、改めて昨日のことを謝って来た。燃費がいいのを理解して貰えたのだろう。周囲と同調出来ない私にも責任はあるのだがね。人にはそれぞれペースがあるというのを理解して貰えればいいよ。
みんなが食事をしている中、私だけ何も食べないという居心地の悪さは我慢して貰うとして、睡眠をどうしようかな……。私はしばらく眠らなくとも活動出来るが、後に起こる長期睡眠に付き合わせるわけにはいかない。
私自身、ローテーションの見直しが必要かな。ある程度は皆に合わせた体質になる必要がありそうだ。




