「家を作ることにしました」
空が落日ったので仕方なく作業を再開する。
目指すは丸太小屋……いわゆるログキャビンだ。材料はなるべく木だけがいい。木と木を噛み合わせる楔を使った建築方法を目指してみる。出来るかどうかは置いておいて、兎に角やってみよう。生前はそんな機会に恵まれなかったので、年甲斐もなくわくわくが止まらない。
最初にするのは木材の乾燥だ。流石に生木をそのまま加工したり家に使ったりはしないだろう。しない筈。まあ間違えたら作り直す。どうせ時間は幾らでもある。あるよね?あるだろう。なければ持ってくればいい。
切ったばかりの生木から水分を取り出し、集めて口に含む。うむ、少々木の香りが強いが、十分美味い。
しかし、個人的には川の水の方が美味しく感じた。自然の濾過装置である木の澄んだ水より、ある程度、雑菌だの微生物の雑味があった方が美味しいのだろうか。
完全に乾かせるのは当然アウトなので、ある程度水分を持たせつつ、触って感触を確かめながら調節する。
乾燥させたら加工に移る。丸太を残しつつ、噛み合わせる部分を削っていく。皮は……どうするんだ?流石に剥がすか。
交差する部分、重ねる部分。足場や屋根の部分。噛み合わせに必要な細かいパーツ……、ゲボだったかダボだったか、も削り出す。
木屑や木片、剥いだ皮なんかは後回しだ。火を点けるのに使えるだろうが、集めておくものがない。埋めるか?自然に還るな。
必要な数は揃ったが、思ったよりも時間が掛かった。丸太は兎も角、噛み合わせに必要な部品が多い。
頭の中で想定したものなので、実際に幾つ使うと安定するのか、逆に負荷が掛かり過ぎて割れる原因になるのかがわからない。感触を確かめながら試行錯誤するしかないだろう。
最悪寝てる間に棲み家が崩壊するやも知れんが、必要経費だ。細かいことを気にして発展は認められん。
組み上げている間に夜が明けそうだ。しかしここまで来ると最早眠気は無い。深夜のテンションはもう何者にも止めることはできない。ふぅーははははは。
木材を揃え、ある程度の目処が立った為、拠点付近にある木々を伐採してスペースを作る。
今度は根こそぎ、耕しても木の根が出ないくらい深追いする。
周りを回り、家を建ててもなるべく目立たないように気を使いながら容赦なく木を引っこ抜いていく。スペースを空けたら、根を張っていた部分を一度掘り返して、均してしっかりと固める。
いよいよ丸太小屋を組み上げる。待ちに待った瞬間だ。
巷ではプラモデルやなんかが子供にも大人にも受けていると聞くが、成る程。その良さが少しわかる気がする。いつか作ってみたいものだ、機動兵器とか。工学系は完全に門外漢だがね。
作る前から思っていたことだが、今回は窓を諦めるしかない。それに、丸太小屋と言えば暖炉だが、木材では無理だ。木だけで作る家というのが理想だったのだが、素人には難しいものだな……。
そして問題なのは出入口。そのものずばりドアである。
蝶番は頑張って作った。木を削ったので、細か過ぎると簡単に割れる恐れがあったので大きく作った。ら、少し固くなってしまった。
ドアと言えば一枚板であるが、この森の木々は小屋にはうってつけのサイズであるが、出入口になるくらいの板が作れそうなサイズの木は近場には無い。仕方ないので噛み合わせを使って、三つの木材を並べてみる。例によって強度の心配があるので、もう板と言うより角材だ。幸い噛み合わせを徹底したので隙間は無いが、随分厚みのある重いドアになる。
ドアノブも作った。……回らないので、単なる取っ手であるが。
板よりも分厚いので、そのまま嵌めると、蝶番で引いても動かない。よって、出入口の前に置かれた角材のような見た目になった。許容範囲内である。
森の動物なら熊くらいしか開けることは出来ないだろう。それも偶然取っ手を掴んで引っ張る必要がある。安全性的には結果オーライだ。普通のドアより優れているくらいである。
……わかってる。今度落ち着いてから直す。急拵えではこんなものだ。我慢して欲しい。
同様に屋根も、理想は三角屋根だが、出来たのは平べったい。雨漏りなんかはしないように、水路に使うくらい噛み合わせを徹底したが、平屋根では雪の重みに耐えかねない。
この辺りがどれ程積もるかわからないが、見た目的にも三角屋根にしたいので後で作り直す。寝るだけならこれで十分だ。
しかし……家なんぞ作ったのははじめてだが、空気穴って必要なんだろうか。みんなはどうしてるんだろう。
普通は暖炉とかあるし、上下に風は吹かないと高を括って吹き抜けなのか?横に作ったら隙間風だよな……二重構造にして風を散らすとか?それとも木造建築なら木が呼吸するから大丈夫だとか?
……まあいいか、寝苦しくなったら考えよう。アバウトでいい。
結局楔とか使わなかったしな……。簡素な丸太小屋には必要ないのやも知れんが、余計な手を加える必要はなかろう。
そんなことより、いい加減、一周回って眠気がピークである。
作った家も細かい改善点を言い出したら切りがないが、いい加減眠い。正直、家なんて作ってないで、その辺で寝てた方が良かったんじゃないかと思うくらい眠い。なんだかんだと言って、死んだり、異世界に来たりと、疲労が溜まってるんじゃないかってくらい眠い。第二の人生がはじまったばかりだが、死ぬほど眠い。
家を作っている間に夜が明けて、太陽?が頂点に来るぐらいの時間は経っている。目を覚ました時間はわからないが、日差しから24時間は経っているだろう。一日が24時間かどうかは知らないが。
兎に角……寝よう。一度始めたら、区切りまでやろうと思って結局完成まで頑張った自分が憎い。生まれ変わって早々オールをやらかした身には、燦々と照り付ける太陽?が恨めしい。
窓のない丸太小屋に籠って寝よう。今となってはそれが救い。
出入口を以外に一切の灯りがない小屋の真ん中にはベッドの木枠が置いてある。
家を作っても寝具がなければ意味はないと、試行錯誤して作った。当然、時間が掛かった一因である。あの時はまだオールのテンションだった。今はただ辛い。
シーツの上に横になる。苦労しただけあって、木の香りがすばらしい。
すぐに枕に頭を預け、毛布を被って身を委ねる。すると一瞬で思考は闇に溶け、疲労は最高の寝具とばかりに眠りに落ちていった。
すやあ。




