「やらかしたので干されました」
棲み家まで戻って来た。
毟った羽はシルクの袋に入れて持って帰った。行きに袋は持っていなかったが、桑の葉を忍ばせていたので物質創造した。
中身の詰まった袋を担いでいると、某、赤い服で夜な夜な幼児の住居に侵入する初老男性を連想した。一年に一度のことなので、夜な夜な、ではなかったな。ついでなので、物質創造した衣服も真っ赤にしてみた。某赤い聖人は何故か血のように赤い衣を好んで身に纏うという。赤ちゃん、鳥居、ポスト。赤は血の色、命の色。つまりはそういうことなんだろう。
袋の中身はスカスカの綿、というか羽毛なので、プレゼントを期待してたらとんだ詐欺もあったものだが。これ自体が最高のクッションみたいなものなので、私にとってはお宝だ。
行きはのんびりしたので、帰りは急ぎ……たかったのだが、獲得物があったので気を遣った。ぶちまけたらことである。
行きより時間が掛かり、帰りには五日。その間、袋を慮って狩りはしなかった。そのため、わりと小腹が空いてる。羽毛を小屋に置いたら、ちょっと腹ごしらえしよう。近場で狩ると寂しいことになりそうなので、少し歩いて。安全面では間引きした方が好ましいかも知れないが、いざという時の非常食が見付からなければ不味かろう。何が起こるかわからないのが人生なのだから。
ーーイノシシ。そう、食わず嫌いは良くない。
案の定悪くない。大食らいだから、イノシシだけ残して他ばかり食べたら生態系に悪影響が出そうだし、そういった意味でも差別は良くないだろう。将来的に。
イノシシは大きいので腹は満たせた。早速獲得物に手を加えよう。
野生のものだし、煮沸と天日干しだろうか。それで虫が湧いたらその時だ。
煮沸……、湯を沸かす必要がある。やはりここに戻ってくるのだな。人類と湯は切っても切れぬということか。
火を起こすだけなら簡単だ。木屑も枯らした木も、摩擦棒も簡単に用意出来る。なんならレンズを物質創造して太陽頼りにも。付きっきりになるが。
水を熱する器も、石でも削れば作れるだろう。
ん? じゃあやるか? 石の熱伝導と温度のムラが心配ではあるが、煮沸なら一定の温度が必要ということもなかろう。火力が高くなり過ぎて、羽毛が焦げるのに気を付ければ……。うん、いけそうな気がして来た。
石の耐久性が心配だった為、厚さ別に幾つか削り、熱して割れなかったものを採用する。削る際にうっかり割ったもの以外、熱耐性は万全だった。
耐性チェックの際に思ったよりも木材を消費し、ついでに実験台としてうさぎのトゲとシカの角を煮沸した。
羽毛を煮沸して、水分を取って干す。台は木製、飛ばないようにするために、少し悩んで、網を物質創造した。そのため、一緒に干されることになった。……今度があれば、木材か石で網目状の不思議物体でも物質創造してやろうか。
ともあれ作業は終了だ。水を沸騰させるために、結構な大気を汚染してしまった。stop、自然破壊。私のために。
しかし暖炉は欲しいな……家っぽいし。後はお風呂。文明人として。
別に環境破壊とか生っちょろいことをほざくつもりはない。黒煙が思ったより臭かった、それだけである。
ここは水や空気が美味しい。毒されて来たかな、私も。
桑の葉で物質創造した布団の外見に、羽根を除いた胸毛を入れる。……これでいいんだろうか? まあいいか。市販の羽毛布団もそんな奇抜な造りはしていないだろう。自力で詰め替えとか出来るだろうし。
後はこの羽毛布団を干して、お日様の匂いを付与すれば完成だ。
しかし、出来立てほやほやではダニをこんがり上手に焼けましたも出来ないだろう。一度使用済みにする必要がある。というか眠い。私は眠い。もう一度干すなんて面倒臭い。お日様の匂い付き布団と、通常汎用決戦布団のビフォーアフターも検証する必要がある。そう決めた、私が。
布団を袋に詰めて、屋根裏部屋に置いて小屋を出る。
寝る前に腹ごしらえと、小屋の掃除、そして水浴びが必要である。私の快適な睡眠のために。
……結果として、布団を洗う、干すという費用対効果が釣り合わなかったので、エンチャント布団は、気が向いたときにたまに使う、レベルに留まった。元々私はものぐさで、怠けるために、こうして引きこもり生活をエンジョイしているのだ。確かに悪くはないのだが、手間が増えるのは本末転倒である。肌に合わなかったのか、私にはそこまでの魅力は感じない。ちょっと物質創造が便利過ぎたな。
無論、いつでも使えるように手入れは欠かさない。これが、たまの贅沢、というものだね。うむうむ。




