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転生した黒猫は悪役令嬢を改造したい 〜極悪非道のはずのお嬢様が、ただの不器用ポンコツだったので断罪エンドを全力で回避します!〜  作者: ゼロブロ
第3章 黒猫、ヒロインいじめイベントを潰す

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16/58

第16話 運命のヒロイン、登場

完結確定。

毎日朝7時に更新します。

よろしくお願いします。

 シルビア・グランベルが七歳だった頃から、八年が経った。


 八年、猫にとっては長い時間である。

 人間にとっても、まあまあ長い。


 元二十六歳Webプログラマーの私にとっては、プロジェクトが何度も炎上し、何度も仕様変更され、何度も「今月こそ落ち着く」と言いながら、まったく落ち着かないくらいの年月である。

 その間、私はずっとシルビアのそばにいた。


 黒猫ノワールとして。

 悪役令嬢断罪エンド回避担当として。

 そして、シルビア・グランベル専属の言語出力監視猫として。


 八年間で、シルビアはずいぶん変わった。

 まず、ありがとうが言えるようになった。

 最初は、蚊の鳴くような声だったから、相手に聞こえないことも多かった。

 言ったあとに必ず顔を赤くし、「今のは礼儀として当然のことですわ」と余計な補足をつけた。

 だが今では、かなり自然に言える。

「ありがとう」

 この一言が出るだけで、屋敷内の空気はずいぶん変わった。


 次に、ごめんなさいも言えるようになった。

 ごめんなさいは、今でも少し苦手だ。

 謝る前に一度、必ず言い訳の顔をする。

 私がじっと見上げると、ようやく渋々口にする。

「……ごめんなさい」

 進歩である。


 さらに、命令形もだいぶ減った。

 ゼロではない、ここは残念ながらゼロではない。

 油断するとすぐに出る。

 しかし最近では、そのあとに続くことがある。

「……お願いできるかしら」

 この追加修正が入るようになった。

 大進歩である。


 黒猫式・悪役令嬢改造計画は、着実に成果を上げていた。

 では、シルビアはもう悪役令嬢に見えなくなったのか。


 答え。

 そう簡単にはいかない。


 シルビアは十五歳になった。


 七歳の頃からすでに完成されかけていた美貌は、八年かけてさらに磨かれた。

 淡い金の髪。

 白い肌。

 紫の瞳。

 整いすぎた顔立ち。

 まっすぐ伸びた背筋。

 公爵令嬢として完璧に叩き込まれた所作。

 美しい。

 だが、美しすぎる。

 国宝級美少女。

  ただし、近寄りがたい方の国宝である。


 しかも目つきは相変わらず鋭い。

 視力問題は、完全には解決していないのが、とても痛い。

 一応、遠くを見るための小さな補助鏡は手に入れた。

 手持ちの片眼鏡に近い道具だ。

 いわゆる眼鏡に近い道具なのだが。

 シルビアは人前ではあまり使いたがらない。


「淑女が人前で顔をしかめて物を見るなど、はしたないでしょう」

 と言う。

 いや、顔をしかめているのは、見えないまま頑張っている今である。

 私は何度もそう思った。


 しかし猫なので、説得には限界がある。

 結果、シルビアは少し離れた相手を見ると、今でも目を細める。

 そして周囲は今でも思う。

 睨まれた、と。


 さらに、緊張すると表情が固くなる癖も残っている。

 普段から美形の圧があるのに、緊張が加わると完全に氷の女王である。


 会話もだいぶ良くなった。

 だが、心が揺れると古い言語バグが再発する。


 善意が命令になる。

 心配が叱責になる。

 照れ隠しが高慢になる。


 八年かけても、ポンコツは完全には直らなかった。

 根が深い。

 教育とは長期戦である。


 そんなシルビアが、ついに学園へ入学する日が来た。

 とても感慨深い。

  ……と、言いたいところだが、それどころではない。


 星降る学院。

 乙女ゲーム『星降る学院と運命の恋』の主な舞台。

 王侯貴族の子女、特別な才を持つ平民、神殿から推薦された聖女候補などが通う、華やかで危険な場所。


 危険。

 そう、危険である。

 ゲーム本編では、ここからシルビアの悪役令嬢ルートが本格的に始まる。


 ヒロイン登場。

 王太子との距離。

 嫉妬。

 取り巻き。

 悪評。

 嫌がらせイベント。

 そして、断罪。


 いよいよ物語の中心に入ってしまった。


 私は、シルビアの馬車の座席で丸くなりながら、内心かなり焦っていた。

 馬車の中には、シルビアと私だけがいる。

 本来、猫を学院へ連れていくのはどうなのか。

 当然、問題になった。

 だが、シルビアは堂々と言い放った。


「ノワールは、わたくしの心の安定に必要です」

 心の安定。

 非常に正しい。


 表情があまりにも真剣だったため、父グランベル公爵は少し黙ったあと許可した。

 公爵夫人は微笑んだ。

「ノワールが一緒なら、少し安心ね」

 レオンハルトは、すでに学院を卒業しているが、彼は私を見て、少しだけ笑った。

「シルビアを頼むぞ、ノワール」

 私は鳴いた。

「にゃ」

 任せろ。

 公爵家では、猫への信頼がぶ厚い。


 ここからの相手は学園イベントである。

 難易度は跳ね上がる、気を引き締めねばならない。


 馬車の窓から、星降る学院の門が見えてきた。

 白い石造りの門。

 両脇に立つ高い塔。

 広い庭園。

 奥には大きな校舎。

 私はその景色を知っている。

 画面越しに何度も見た。


 ログイン画面。

 イベント背景。

 ヒロインが初めて学院に足を踏み入れる場面。

 攻略対象たちとの出会い。

 そして、シルビアの断罪イベントが起きる大広間。

 背中の毛が、ぞわりと逆立った。


 来てしまった。

 本当に、ここまで来てしまった。

 シルビアは窓の外を見つめている。

 表情は落ち着いている。

 いや、落ち着いているように見える。

 だが、指先が少しだけドレスの布を握っていた。


 緊張している。

 私は彼女の膝に前足を置いた。

「にゃ」

 大丈夫だ。

 たぶん。


 シルビアは私を見る。

 十五歳になった彼女は、七歳の頃よりずっと大人びていた。

 けれど、近い距離で見ると、昔と同じ顔をすることがある。

 不安を隠しきれない、少しだけ幼い目。


「ええ。大丈夫ですわ」

 シルビアは自分に言い聞かせるように言った。

「わたくしは、グランベル公爵家の娘ですもの」

 出た。

 自分を支える呪文。


 八年経っても、彼女は不安になるとこの言葉を使う。

 私はしっぽを揺らした。

 その呪文で立てるなら、今はそれでいい。

 ただし、無理はしすぎるな。


 馬車が止まった。

 扉が開く。

 シルビアは背筋を伸ばし、ゆっくり降りた。

 その姿に、周囲の視線が一斉に集まる。

 無理もない。

 公爵家の長女であり、王太子の婚約者。

 美しく、気高く、隙のない令嬢。

 それが、外から見たシルビア・グランベルだ。


 新入生たちが小さくざわめく。

「あの方がグランベル公爵令嬢……」

「王太子殿下の婚約者でしょう?」

「すごい迫力……」

「綺麗だけど、少し怖いわね」

 怖い。

 やはり言われている。


 私はシルビアの足元で耳を伏せた。

 シルビアは聞こえていないふりをしているが、たぶん聞こえている。

 この子は、聞こえていないふりがうまくなっただけだ。

 そこへ、よく知った声がした。


「シルビア嬢」

 アレクシス王太子だった。

 十五歳になったアレクシスは、攻略対象らしく成長していた。

 金の髪。

 青い瞳。

 整った顔。

 穏やかな笑み。

 顔はいい。

 非常にいい。

 成長して、顔面偏差値はさらに上がった。


 ついでに、八年の教育により、人の顔色もだいぶ見られるようになった。

 だが完全ではない。

 私からすれば、まだたまに足りない。

 とはいえ、少なくとも七歳の頃よりは、シルビアを見ようとしている。


 アレクシスはシルビアの前で足を止めた。

「入学おめでとう」

 シルビアは完璧な礼を返す。

「殿下も、おめでとうございます」

 声は落ち着いている。

 だが、少し硬い。

 アレクシスはそれに気づいたのか、柔らかく微笑んだ。


「ノワールも一緒なんだね」

「ええ。ノワールは、わたくしの……」

 シルビアは言いかけて、一瞬止まる。

 私は足元から見上げた。

 わたくしの猫ですもの、ではないぞ。

 シルビアは少しだけ頬を赤くして言い直した。


「大切な家族のようなものですから」

 よし。

 大変よし。

 私は満足して彼女の足元にすり寄った。

 アレクシスは少し嬉しそうに笑った。


「相変わらず仲がいいね」

「当然……」

 私は見上げる。

「……ええ」

 シルビアはぎりぎり修正した。

 危ない。

 学院初日から油断ならない。

 アレクシスは私を見て、小さく笑った。


「ノワールも相変わらずだ」

「にゃ」

 そちらもな。

 王太子。

 観察力はまだ監視対象である。


 そのとき、周囲のざわめきが少し変わった。

 私は耳を立てる。

 学院の門の方から、一人の少女が歩いてきていた。


 質素だが清潔な制服。

 明るい栗色の髪。

 大きな琥珀色の瞳。

 緊張した様子で、けれどまっすぐ前を見ている。

 周囲の貴族令嬢たちとは少し違う雰囲気。

 華やかさではなく、素朴さ。

 気品ではなく、素直さ。

 守られて育った貴族の子どもではなく、自分の足でここまで来た少女の強さ。


 私は固まった。

 知っている。

 彼女を知っている。


 乙女ゲーム『星降る学院と運命の恋』の主人公。

 平民出身の聖女候補。

 リーナ。

 運命のヒロインが、そこにいた。


 来た。

 ついに来た。

 ゲームでは、ここからシルビアのヒロインいじめが始まる。


 最初は小さなすれ違い。

 次に、周囲の噂。

 ドレス破り事件。

 階段での転落未遂。

 悪評。

 王太子たちの不信。

 そして、断罪。


 私は全身の毛が逆立つのを感じた。

 まずい。

 非常にまずい。


 リーナ本人は、ゲームで見る限り悪い子ではない。

 むしろ素直で優しい主人公だった。

 だからこそ危険なのだ。


 良い子であるがゆえに、周囲は彼女を守ろうとする。

 シルビアのきつい言葉は、より悪く見える。

 そのため誤解が一気に広がるだろう。


 ここからは、屋敷の中とは違う。

 使用人たちのように、シルビアの変化を長く見てきた人間ばかりではない。

 学院には、シルビアの噂だけを知っている者もいる。

 クラリスのように、柔らかい毒を混ぜる者もいるかもしれない。


 私はシルビアを見る。

 シルビアも、リーナに気づいたようだった。

 いや、正確には、周囲のざわめきに気づいて視線を向けた。


 少し離れている。

 当然、目を細める。

 睨んでいるように見える。

 リーナはその視線に気づいた。

 びくりと肩を揺らす。

 まずい。

 初手から誤解。


 私はすぐにシルビアの足元で鳴いた。

「にゃ」

 見るな。

 いや、見るなら柔らかく見ろ。

 目を細めるな。

 シルビアは私を一瞬見下ろした。

 だが、周囲の令嬢たちの声が聞こえた。


「あの方、聖女候補の……」

「平民出身だとか」

「本当に学院に入るのね」

「王太子殿下もご存じなのかしら」

 王太子。

 その言葉に、シルビアの表情が少し硬くなった。


 リーナは緊張しながらも、案内役の教師に従ってこちらへ近づいてくる。

 アレクシスもリーナに気づいた。


「ああ、彼女が神殿推薦の聖女候補だね」

 何気ない言葉だった。

 だが、シルビアの指先がかすかに動いた。

 八年前、王太子が聖女候補の話をしたときの小さな痛み。

 私はそれを覚えている。

 シルビアも、きっと覚えている。

 本人は忘れたふりをしているだけだ。


 リーナが近くまで来た。

 教師が簡単に紹介する。

「こちらが、神殿より推薦を受けて入学されたリーナ嬢です」

 リーナは緊張しながら頭を下げた。

「リーナと申します。よろしくお願いいたします」

 声は少し震えているが、きちんとしている。

 良い子だ。

 私はそう思った。

 だからこそ、絶対に敵にしてはいけない。


 シルビア。

 ここだ。

 最初が肝心だ。

 優しく。

 普通に。

 できれば笑顔で。

 無理ならせめて、怖くない声で。

 お願い!


 シルビアはリーナを見た。

 目を細めて。

 表情を固くして。

 口元をきゅっと結んで。


 ……終わった。

 私は内心で頭を抱えた。


 シルビアは一歩前に出る。

 周囲の視線が集まる。

 王太子も見ている。

 貴族令嬢たちも見ている。

 教師も見ている。

 リーナは緊張している。

 シルビアは口を開いた。


「あなたが噂の聖女候補ですの?」

 声が硬い。

 高圧的に聞こえる。

 リーナの肩が小さく跳ねた。

「は、はい」

 シルビアは続ける。


「ずいぶん頼りなさそうですわね」

 私は固まった。

 出た。

 最悪に近い第一声。

 違う。

 違うのだ。

 たぶんシルビアは、リーナが緊張して顔色が悪いことを心配した。

 慣れない場所で不安そうだから、大丈夫かと気にした。


 だが、口から出たのは。

 ずいぶん頼りなさそうですわね。


 悪役令嬢ポイント、爆加算。

 周囲がざわめいた。

 リーナの顔色がさらに悪くなる。

 アレクシスも、少し驚いたようにシルビアを見た。

 まずい。

 非常にまずい。


 学院初日。

 ヒロインとの初対面。

 王太子の前。

 貴族たちの前。

 ここで悪役令嬢ムーブを決めるな!


 私は即座にシルビアの足に飛びついた。

 噛むほどではない。

 まだ噛むほどではない。

 だが、前足で強く叩いた。少し爪を出して。


「にゃっ!」

「いたっ」

 シルビアがはっと私を見る。

 私はじっと見上げた。

 言い直せ。

 今すぐ。

 今ならまだ間に合う。

 シルビアは唇を引き結ぶ。


 周囲の視線。

 王太子の視線。

 リーナの怯えた顔。


 そのすべてを受けて、シルビアの表情がさらに硬くなる。

 まずい。

 緊張で固まっている。

 私はもう一度鳴いた。


「にゃあ」

 シルビア。

 頑張れ。

 八年間やってきただろう。

 ありがとうも、ごめんなさいも、お願いも。


 できる。

 あなたは悪役令嬢じゃない。

 シルビアは深く息を吸った。

 そして、リーナを見た。


「……顔色が悪いですわ」

 お、軌道修正した。

 声はまだ硬い、表情も怖い。

 が、意味は少し伝わる。


「慣れない場所で倒れられては困ります。無理をするくらいなら、早めに休むことです」

 また困ります。

 だが、内容は心配である。

 リーナは戸惑ったように目を瞬いた。


「え……」

 シルビアは顔をそむけた。

「それだけですわ」

 惜しい。

 非常に惜しい。

 でも、最初の発言だけで終わるよりはましだ。

 アレクシスも、少しだけ表情を和らげた。


 彼は、最近ようやくシルビア語を少し理解し始めている。

 頼む。

 王太子。

 ここで誤解するな。

 アレクシスはリーナに向き直った。


「シルビア嬢は、君の体調を気にしているんだと思う」

 私は耳を立てた。

 おお、言った。

 王太子が通訳した。

 観察力、成長。

 リーナは驚いたようにアレクシスを見たあと、もう一度シルビアを見た。


「そう、なのですか?」

 シルビアは真っ赤になった。

「そ、そこまで心配しているわけではありませんわ!」

 なぜ否定する。

 心配しているだろう。

 しかしリーナは、少しだけ緊張を解いたようだった。

「ありがとうございます。少し、緊張していて」

 シルビアは言葉に詰まる。


 ここだ。

 返せ。

 優しく。

 シルビアは一瞬、私を見る。

 私はうなずく気持ちで鳴いた。


「にゃ」

 シルビアは視線を戻す。

「……初日から堂々とできる者ばかりではありませんもの。仕方ありませんわ」

 言い方は少し上から。

 だが、内容は悪くない。

 リーナはぽかんとしたあと、小さく笑った。

「はい」

 初対面としては、ギリギリ。

 かなりギリギリ。

 だが、完全な敵対にはならなかった。


 私は心の底から息を吐いた。

 危なかった……。


 その後、教師が新入生たちを案内し、リーナもそちらへ向かった。

 去り際、リーナは一度だけこちらを振り返った。

 その視線は、シルビアではなく、私に向いていた。

 黒猫がシルビアの足に飛びつき、鳴いた場面を覚えているのだろう。

 リーナは不思議そうに、少しだけ首をかしげた。

 まあ、普通はそうなるよな。

 学院に猫がいるんだもん。


 運命のヒロイン。

 あなたは敵ではない。

 少なくとも、私はそうしたくない。

 シルビアのそばに立つべき人になってほしい。

 敵ではなく、友達に。


 リーナが去ったあと、シルビアは小さく息を吐いた。

 アレクシスが苦笑する。

「少し、驚かせてしまったかもしれないね」

 シルビアはむっとした顔をした。

「わたくしは、ただ事実を申し上げただけです」

 私は見上げた。

 シルビアは言葉を止める。

 そして、少しだけ小さな声で言った。


「……言い方が、よくなかったことは分かっていますわ」

 お、自己認識あり。

 これは大きい。

 アレクシスも少し驚いたあと、柔らかく笑った。


「うん。でも、言い直していた」

 シルビアの頬が赤くなる。

「ノワールがうるさかったので」

「ノワールは今日も優秀だね」

「当然ですわ。ノワールは……」

 シルビアは私を見る。

 私は見返す。

 彼女は少しだけ笑った。


「……とても賢い猫ですもの」

 よし。

 私は満足した。

 尻尾が揺れる。

 だが、安心はできない。


 リーナが登場した。

 これで本来のシナリオは本格的に動き出す。

 そして、シルビアの最初の一言は、やはり危険レベルだった。

 このままでは、少しのすれ違いで簡単に悪役令嬢ルートへ戻ってしまう。

 私は学院の門を見上げた。


 ここからが本番だ。

 屋敷の中で積み重ねてきた改善が、どこまで通じるか。

 王太子がどこまでシルビアを見てくれるか。

 リーナがシルビアの本心に気づけるか。

 そして、クラリスやマリナのような者たちが、どう動くか。


 課題は山積みである。

 私はしっぽを立て、前を見据えた。


 黒猫式・悪役令嬢改造計画、学園編。

 第一目標。

 リーナとの対立イベントを、絶対に潰す。


 必要なら、ドレスにも飛びつく。

 靴ひもも狙う。

 机の上の証拠品も落としてやる。


 私は猫である。

 猫にできることは少ない。


 だが、ヒロインいじめイベントをひっかき回すことくらいなら、十分できる。


 断罪エンドまで、あと二年。

 ここから先は、一つの失敗が命取りになる。

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