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白き花のアクアマキナ ~男の俺が女性専用機に乗って無双するまで~  作者: 山下 六月
第二章 『初陣』

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006 リンクシステム



 東京遺構沖の端、水没したビル群を望めるような位置にて。

 先行していたクレイアが、先陣を切って機体を人型へ移行させた。それに続くように、フィンティとリララもモードチェンジをしてゆく。

 

 俺もそれに倣ってコンソールを叩き、機体の転換を指示。

 するとすぐに座っていた椅子が跳ね上がり、自然と直立の姿勢になる。

 手元のコンソールは仮想のものへと置き換わり、代わりに武器ラックが両手の近くにそれぞれ用意された。

 この間、わずか2秒足らず。

 

 このコクピット内の模様替えの間に、機体は自動でニクスモードなる人型形態へと転換しているらしい。

 そして移行が完了し次第、俺の四肢は機体と完全にリンクするとのこと。

 

 試しにラックから、いつぞやこめかみに突きつけられたものと同じ形状のライフル銃を取り出す。すると機体も同じように、そのライフル銃を握りしめた。

 両手で抱えて前へと構えると、同じように前へと構える。

 ……そう、このラックに刺さっているイミテーションの数々は、言わばコントローラー。俺が扱うとおりに、機体がその武器を動かしたり、引き金を引いたりしてくれるわけである。

 

「なるほど……」


 思った以上にレスポンスが良く、思わず唸ってしまう。

 

 ――パイロットリンクシステムという大仰な名前が付いているこのシステムは、しかし試してみれば非常に簡単で、何より分かりやすかった。

 なんせ基本はコンソールを叩く必要などもなく、ただやりたいように体を動かすだけで機体が動かせるからだ。


 アクセルやブレーキは左右の薬指の動きに紐付けられていて、力を入れることで自在に操作が可能。

 重心移動で方向転換が行えるのはジェットボートと同様で、つまりどんな姿勢でも機体の操作が出来るようになっている。

 また足下の円形の床がランニングマシンのようにもなっているから、その場にいながら縦横無尽に歩いたり走ったりも出来る。

 もちろんその動きもまた、機体へと反映される仕組みだ。

 

 つくづく、良く出来ていると感心するばかりである。

 ユーザビリティを評価するなら、満点を付けたくなる出来だった。

 

「どう? デルフィニクス独自のシステムは。最初、メチャクチャ感動しない?」


 まるで自分が作ったかのように、リララがドヤ顔を見せてくる。

 苦笑しながらもそれに首肯を返すと、横からフィンティが真面目な補足を入れてきた。

 

「他のモビルフレームはもちろん操縦桿とコンソールでの操作ですから、たとえ歴戦のパイロットが相手だったとしても、確実に相手より一手以上早く攻撃が出来ます。また人間としての本能的な防衛反応を、そのまま防御や回避に活用も出来ます。これがデルフィニクスが他を圧倒する戦績を残せる、大きな要因の一つなんです」

「なるほどな……」


 そんな解説を聞きながら、廃墟からわらわらと出てきた汎用モビルフレームを改めて眺めてみる。

 なるほど確かに、あのやけに硬い……ともすれば「ウィーン、ガション」という音でも当てはめられそうな動きと、目の前のデルフィニクスのまるで生身のようななめらかな動きを見比べてみれば、その差は一目瞭然である。

 

無人(AI)機が6割、後は全部フラッド型……それもハウンド、ですか」

「けど数だけはやけに多いねぇ。ホントにこれ全部でただのフローターシティに攻め込もうとしてたなら、何というか、加減を知らないお馬鹿、って感じもするけど……」

「あはは……まぁワンダードは、どこも血の気が多い傾向があるから……。ただ、元はと言えば自分たちの住んでる船が、曳航されてたフローターシティにちょっと擦られた、っていうだけだったんだよね?」

「あーそうらしいねぇ。ま、それでこれだけの機体をかき集めたんだから、よっぽど腹の虫が治まらなかったんだろうね~。……ちなみにその時の当て逃げ騒動、誰が担当したんだっけ?」

「……私です」

「あぁクレイアじゃあ仕方ないや。どーせ仲裁という名の暴力を振るっただけだろうし」

「リララにだけは言われたくありませんが。そもそも誰が出向いていても、結局は力でねじ伏せるしかなかったでしょうし。あまりにも野蛮で、話が通じない連中でしたから」


 そうしてため息をつくクレイアを余所に、リララは唐突にこちらへ水を向けてきた。

 

「まぁそんな野蛮なクレイアはさておいて。……どう? アシュリーちゃんはさ、これから初陣ってことになるわけだけど。緊張とかしてない?」

「緊張というよりも……今はワクワク感の方が勝ってるな。あと、何度も言ってる通り、ちゃん付けでは呼ばないでくれ。背筋がぞわついて仕方ない」


 そう明確にたしなめたが、しかしリララはわざとらしく伸ばした手を口に当て、ニヤけ面を晒してくる。

 

「え~だってさぁ、胸からそんなメロンぶら下げてるのに、くん付けで呼ぶだなんて……ご立派なメロンに失礼だと思わない?」

「……。お前の小玉スイカみたいな胸と比べたら、みんな誤差みたいなもんだろう」

「あっセクハラだ」

「お前が先に言ってきたんだろうが‼」


 敵を前にしている状況にもかかわらず、思い切りがなり立ててしまう。

 しかし、これは帰還後にでも猛抗議しなければ、と思ったところで。フィンティが何だかくつくつと苦笑していることに気づく。

 

「……フィンティ?」

「あ、えっと。……リララちゃん、優しいなって」

「え?」

「なんだかんだ言って、リラックスして欲しいんだと思いますよ。リララちゃんは」

「……ああ……」


 ……なるほど。リララなりにこちらに気を回してくれていたらしい。

 ただ、こちらを心配した結果がこんなトラッシュトークというのも、正直どうかとは思うのだが。

 

「あの~、フィンティさん? いまネタばらしされちゃうと、ホントに新人をセクハラしただけになっちゃうんだけど……」


 そして当の本人は、ネタばらしをしたフィンティを半目で睨んでいた。

 するとクレイアも、そんなリララに苦言を呈してくる。

 

「リララ。いくら有象無象とはいえ、敵機を前にしているんですから、少しは緊張感を持って下さい。……準備はいいですね? 警告、出しますよ」


 そのままクレイアはガーネットを操り、皆の一つ前へと歩み出ていく。

 

「――こちらは、世界融和連合アクアルタです! ただちに敵対行動をやめ、解散して下さい! この指示に従う限り、こちらから危害を加えることは一切ありません‼」


 そんな最後通告に対し、無線を介して返ってきたのは、切羽詰まった野太い声だった。

 

「ふざけんな! こっちはまだ何もしてねえんだぞ⁉ なのにそっちはメタルマーメイドを4機も並べやがって……やる気満々じゃねえか‼」

「……まぁ、当然そう捉えるよな、この状況なら」

「むしろ敵さんたら、こんなに来て度肝抜かれちゃったんじゃない? この程度なら、普通デルフィニクスが来ても1機だけだろうし。背中にびっちょり汗かいてそ~」

「ともあれ、これでやるべきことは済みました。後は……各個撃破していくだけです!」


 そうして前掛かりになるクレイアに対し、慌てて呼び止める声が一つ。

 

「あっ、待ってクレイアちゃん! ワダツミがいるときは、指示を仰がなきゃ……!」


 そうしてフィンティが乗ったアイビーがチラリと振り返ったその先に、いつの間にか重厚感のある戦艦がたたずんでいるのが見えた。

 ……あれが話には聞いていた母艦、『ワダツミ』なのだろう。

 

 と、そこでふと通信に割り込んできたのは、金髪の将校だった。

 

「いや、こちらは気にしなくていいよ。やりたいようにやってくれて構わないさ」

「……えと、良いんですか?」

「もちろん。そもそもデルフィニクスに長年乗ってきた君たちに対し、細やかな指示など出来るわけもないからね。戦局を俯瞰しなければならない時は、色々とお願いをさせてはもらうけれど、どうやら今回はそんなケースでもないし」


 苦笑を浮かべる金髪イケメン。

 するとリララは感心したとばかりに声色を変えた。

 

「へぇ……やっぱ分かるクチだねぇ。前の石頭とは大違いだよ」

「り、リララちゃん、こんなところで悪口言わなくても……」


 慌てながらたしなめに掛かるフィンティだったが、それにリララが答えるよりも先に、クレイアが鋭い声を上げていた。

 

「そういう無駄話は、帰った後にでもたっぷりとして下さい! ……来ましたよ‼」


 そんな叫び声と同時に、ミサイルの接近を警告するアラート音が鳴り響く。

 一拍遅れ、まばらにこちらの方へと飛んでくるそれらをひょいひょいと避けていると、敵機が続いてこちらへと向かって来るのが見えた。

 それを皮切りに、クレイア達は一斉に散開してゆく。




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