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白き花のアクアマキナ ~男の俺が女性専用機に乗って無双するまで~  作者: 山下 六月
第六章『ファーストコンタクト』

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033 仲間



「……えっ? 叱る……?」


 俺の腕の中で、思わずこちらを見上げてくるノウェンベル。

 俺は安心させるよう笑みを浮かべながら、続けた。


「自己犠牲の精神は立派だけどな。君はさすがに、自分の身を省みなさすぎだ。全部一人で抱えてさ。それで沈んでいく様を目の当たりにする周りの気持ち、一度でも考えたことはあるか? 独りよがりだって言われて、反論が出来るか?」

「……」

「君は一人じゃない。フィンティも、リララも、クレイアもいる。だからな……一人で悩まなくていい。もちろん、いつも全てを周りと共有しろ、とは言ってない。でも時には周りに悩みを打ち明けて、相談してさ。そうして色んなものを、分かち合ってもいいんじゃないか?」

「……色んなものを、分かち合う……」


 ノウェンベルが俺の言葉を、ぼんやりと復唱する。

 そんな胸の中にいる、不器用な頑張り屋に向けて。俺は窓辺に視線を向け、過去を思い出しながら告げてゆく。


「フィンティは、泣いてたぞ。肝心なときに、力になれなかったって。頼りになれなくて、ごめんなさいって」

「……‼ そんな……私の方が、よっぽど謝らなきゃいけないのに……」

「リララもな、珍しくしょげてた。まだ整理がついてないって。それから反省もしてたな。君のこと、ちゃんと分かろうとしてなかったって」

「……あのリララが、そんな事を……?」

「クレイアも、やっぱり思うところはあるみたいだった。君のことを問いかけたら、少し寂しそうにしていたし」

「……クレイア……」

「せめて3人には、事情を言っておくべきだったと思うぞ。ちゃんと話して、共有して、それで一人で背負いきれないものがあったらさ、少しずつ肩代わりして貰って。……それが、仲間ってもんじゃないのか?」

「……」


 俺の腕の中で、ノウェンベルは弱々しくうつむく。

 そして、ぼそりと口にした。

 

「……やはり、余計な気苦労を与えてしまうだけじゃ、ないですか? もし話して、それでデルフィニクスに乗るだけで、私みたいに全身が震えてしまうようになったら……」

「だからって、君一人が背負わなきゃいけないってことでもないだろう? 多分な……フィンティ達にとっては、疑心暗鬼に陥ることよりも、君に話して貰えないことのほうが、よっぽど堪えることなんだと思うぞ。だからこそずっと、ずっとずっと、君がいなくなったことを引きずっていたんだろうし」

「……っ」


 ノウェンベルが静かに息を呑む。……その言葉で、やっとフィンティ達の気持ちに気づけたのだろうか。

 俺はようやくその肩を掴み、ゆっくりと彼女を離していく。

 

「何も知らないはずの俺ですら、見てられないくらいだった。それに比べたら、周りに敵が潜んでるかも知れないーとか、デルフィニクスに細工されたかもーとか、なんてことないんじゃないか? ほら、リララなんていつもの調子で、謀ったなー⁉ とか言いそうだろ?」


 肩をすくませながら冗談めかせば、ようやくノウェンベルはクスリと笑ってくれる。

 

「……そう、ですね。確かにそういう事、言いそうです」

「だろ? だから……」


 そこで一拍置いた後。

 俺は彼女の肩に手を置いたまま、面と向かって告げた。



「俺も。――仲間だと思ってくれて、良いからな」



「……え?」


 俺が今までしたこともない、目をまん丸に広げた表情を浮かべるノウェンベル。

 それに柔らかく笑いかける。

 

「今まで君のことを、間接的に知ってきた。すごく優秀で、優しくて、でも頑張りすぎるところが玉に瑕だってことも、全部知ってる。……だからもう、他人じゃない。他人とは思えない。なんてったって……体、交換してるぐらいだしな」

「……あっ、えと、そう……ですね」

「そして。そんな君が押しつぶされそうになってるところを、黙って見過ごせるほど、ドライな性格でもない。……確かに、ついさっき初対面だったさ。けどな、俺にとってはもう……リララや、フィンティや、クレイアと同様に。君もまた仲間だと、そう勝手に思ってる」

「……!」


 息を呑む、かすかな音が聞こえてくる。

 俺はため息をつき、彼女の肩に置いていた手を腕を下ろし。そうして視線を窓の先に向けながら、続けていく。

 

「正直さ。俺は君と違って、人々の安寧を守りたいだとか、そんな高尚な理由でデルフィニクスに乗ってるわけじゃないんだ。……以前、教官にも言った話なんだけどな。リトルマザーから半強制的に乗せられて、妹たちの食い扶持を稼いでるってだけだ。けどさ、もちろんそれじゃダメだって事も分かってる。きっと肝心なところで間違えたり、あるいは競り負けたりすると思う。だから――君の想いを、俺に受け継がせてくれないか?」

「……え?」

「君の使命感も、後悔も願いも、君の代わりに俺が全部任務に持ってってさ、ぶつけてきてやるよ。それなら……君がこれ以上、重荷に苛まれることもなくなるだろう?」

「……」

「もちろん、君がちゃんと立ち直れるまでの、期間限定の話だけどな」


 そう付け加え、会話のボールをノウェンベルに渡す。

 


 ――そう。俺は全人類のために、命なんて張れない。

 けれど親しい人の為なら、いくらでも命を投げ捨てる覚悟くらいは持っている。

 そして、今の話を聞かされて。

 つい目の前の子を、そんな括りの中に入れたいとも思ったのだ。

 

 つまりは――頑張り屋の、この子のためならば。

 命も、プライドも、魂も。全部懸けられる気がしたのである。

 


「……なんで、そこまで……」


 思わず口をついて出るそんな疑問に、俺は大げさに肩をすくませて見せる。

 

「おいおい、体を交換するくらい、親密な仲じゃないのか? 全世界どこを探したって、似たような奴らすら見つからないぞ」


 そんな冗談に、二度三度瞬きを繰り返したノウェンベル。

 口を押さえ、ひとしきりクスクスと笑い……。


 それでも、真剣な表情で告げてくる。

 

「私……それでもやっぱり、犯人を見つけ出せなければ、前には進めないと思います」

「良いんじゃないか? 自分をはめた相手に落とし前をきっちり付けるのも、賢い方法の一つだと思うしな」

「……そう、ですか」


 その答えを受け、一つ深呼吸をし。

 そうしてから、ノウェンベルは俺の瞳をじっと見つめた。

 

「……なら。ちゃんとけりを付けるまで、私の想いを、あなたに託させてください。――よろしくお願いします。アシュリーさん」

「ああ。――よろしくな、『ベル』」

「……! はい‼」


 正直な話、いつ愛称で呼んで良いか聞きそびれていて。ちょうど良い機会だと思ったので、一か八か呼んでみたのだが。

 ノウェンベル……いやベルは、憑き物が落ちたような顔で、それに満面の笑みを浮かべてくれたのだった。

 



「ん。じゃあベル、早速聞きたいことがあるんだが、良いか? ――メルクリウスソードを、振るった時のことなんだが……」







ここまでお読み頂き、ありがとうございます。

ようやく、一番お見せしたかったものをお届け出来ました。

後はクライマックスまで駆け抜けるだけ。

この後も是非、お付き合い下されば幸いです。


また重ねてのお願いではありますが、評価やブックマークでの応援、何卒よろしくお願い致します。

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