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僕はまだ、この本を書いていない  作者: 岐阜昌志
黒く滲む七月

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幕間10 優しくする方法

 七月七日の夜。


 美月は、自分の部屋でスマホの画面を見つめていた。


 本屋から帰る途中、兄に小さな声で言われたことが、ずっと気になっていた。


 帰ったら、少し話がある。


 それだけだった。


 最初は、何の話か分からなかった。


 文芸部のことかと思った。


 今日、昌志先輩に本屋へ付き合ってもらったことかもしれないとも思った。


 けれど、家に帰ってから兄と話した内容は、少し違っていた。


「午前中、昌志と司ちゃんの話になった」


 兄はそう言った。


「司ちゃん?」


「ああ」


 美月は、そこで少しだけ動きを止めた。


 司のこと。


 その言葉だけで、何となく悪い予感がした。


「司ちゃんが、自分のことを嫌ってるんじゃないかって、昌志が少し思ってるみたいだ」


「嫌ってる?」


「そういう言い方をしたわけじゃないけどな。ただ、勝手に部屋に入ったり、何か言うと反発されたり、お前の名前を出して文芸部に行けって何度も言われたりして、かなり戸惑ってる」


 美月は、すぐには返事ができなかった。


 司が昌志先輩を嫌っているとは思わない。


 むしろ、逆だと思う。


 司は、昌志先輩のことを心配している。


 黒い本のことも、最近の昌志先輩の行動も、放っておけないのだろう。


 けれど、昌志先輩から見れば、それは違う形に見えているのかもしれない。


「司ちゃん、そんなつもりじゃないと思う」


 少し迷ってから、そう言った。


 兄はすぐに頷いた。


「分かってる。俺もそう思う」


 けれど、続いた言葉を聞いて、美月は胸の奥が少し重くなった。


「でも、このままだと逆効果になる。司ちゃんが心配して動いてることまで、昌志には警戒する理由になりそうだ」


「警戒……」


「ああ。それに、美月」


「何?」


「これは司ちゃんだけの問題じゃない。お前にも少し関係あると思う」


 美月は息を止めた。


「私に?」


「お前が悪いことをしたって意味じゃない」


 兄は先にそう言った。


「でも、お前は最近、昌志に少し近づきすぎてる。文芸部に来てほしい。本屋に付き合ってほしい。昌志と一緒にいたい。そう思うのは分かるけど、その分、司ちゃんが動いてる」


「司ちゃんが」


「司ちゃんは、お前のために昌志へ文芸部に行けって言ってくれてるんだろ。毎日何回も、何度も」


 美月は何も言えなかった。


 その通りだった。


 司は美月のために、昌志先輩へ文芸部へ行くよう言ってくれていた。


 美月が喜ぶから。


 美月が昌志先輩と同じ場所にいられるから。


 だから、司は動いてくれていた。


「お前がそう思ってるのは分かる」


 兄は、少しだけ声を落として言った。


「司ちゃんも、お前も、昌志のために動いてる。それは分かる。でも、大事なのは昌志がどう受け取ってるかだ」


「昌志先輩が……」


「昌志は今、司ちゃんに信用されてないんじゃないかって感じてる。もう分かってることを何度も言われて、しかもそれが毎回お前のためだと、余計にそう見えてしまうんだと思う」


 美月は何も言えなかった。


「そのせいで、司ちゃんと昌志の関係が少しおかしくなってる。司ちゃんだけのせいじゃない。お前が昌志に来てほしいと思ってることも、そこに入ってる」


 美月はうつむいた。


 自分では、ただ嬉しかっただけだった。


 昌志先輩と話せることが嬉しくて、文芸部に来てくれることも、本の話ができることも、全部そのまま言っていただけだった。


 でも、それが昌志先輩にとって負担になっていたのなら。


 司が自分のために何度も昌志先輩へ言ってくれたことで、昌志先輩が余計に戸惑っていたのなら。


「私、少しやりすぎたかな」


 美月が小さく言うと、兄はすぐには答えなかった。


 少し間を置いてから、言う。


「悪い意味じゃない。昌志は、お前が文芸部を楽しみにしてることも、来てほしいと思ってることも分かってる。嫌がってる感じではなかった」


「うん」


「ただ、司ちゃんとの違いが大きすぎて、昌志が混乱してるところはあると思う」


 美月は、その言葉を何度か頭の中で繰り返した。


 自分と司は違う。


 そんなことは分かっている。


 でも、昌志先輩がその違いに戸惑っているとまでは考えていなかった。


「司ちゃんには、話しておいた方がいいと思う」


「うん。今日、連絡してみる」


「頼む」


 兄はそう言ってから、少しだけ声を低くした。


「あと、お前も、しばらくは言いすぎるな」


「……うん」


「昌志に部活に来てほしいのは分かる。でも、毎回毎回、それを司ちゃんに背負わせるな」


「分かった」


「司ちゃんにも、動きすぎると逆効果になるって言っておいた方がいい。今のままだと、司ちゃんも昌志も苦しくなる」


 美月は小さく頷いた。


 兄との話は、そこでいったん終わった。


 けれど、美月は夜になってからも、その言葉を何度も思い返していた。


 司に伝えなければいけない。


 でも、どう伝えればいいのか分からない。


 司は、昌志先輩を嫌っているわけではない。


 むしろ、心配している。


 それなのに、昌志先輩からは逆に見えている。


 それをそのまま言えば、司はきっと傷つく。


 でも、言わなければ何も変わらない。


 それに、謝らなければいけないとも思った。


 司は、美月のために動いてくれていた。


 それが結果として、昌志先輩と司の間に変なずれを作ってしまったのなら。


 美月も、知らないふりはできなかった。


*   *


 美月はしばらく迷ったあと、司に電話をかけた。


 呼び出し音が数回続き、やがて通話がつながる。


『もしもし、美月さん?』


 司の声がした。


 いつも通りに聞こえる。


 でも、その声を聞いた瞬間、美月は少しだけ言葉に詰まった。


「司ちゃん、今、大丈夫?」


『大丈夫です。どうしました?』


「少し、話したいことがあって」


『……お兄ちゃんのことですか?』


 司の声が、ほんの少しだけ固くなった。


 美月は、スマホを握り直した。


「うん。昌志先輩のこと」


『お兄ちゃん、何かありました?』


「何かあったっていうより……お兄ちゃんから、少し聞いたの」


『お兄ちゃん?』


「私のお兄ちゃんから」


『相沢さんから、ですか』


 司が小さく息をのむような気配がした。


 美月は、できるだけ言葉を選びながら続けた。


「今日、昌志先輩と司ちゃんの話になったみたいで」


『私の話ですか?』


「うん」


『お兄ちゃん、何か言ってました?』


 司の声に、少しだけ緊張が混じる。


 美月は、すぐに答えられなかった。


 そのまま言っていいのか迷った。


 けれど、曖昧にすれば伝わらない。


「昌志先輩、司ちゃんが自分のことを嫌ってるんじゃないかって、少し思ってるみたい」


 電話の向こうが静かになった。


 司の息遣いも、少し遠くなった気がした。


『……嫌ってる?』


「うん」


『私が、お兄ちゃんを?』


「そう思ってる時があるみたい」


『そんなわけないです』


 司の声が、少し強くなった。


『私、お兄ちゃんのこと、嫌ってなんかいません』


「分かってる。私もそう思う」


『じゃあ、どうして』


「たぶん、昌志先輩には分からなくなってるんだと思う」


『分からなくなってる?』


「司ちゃんが、何を考えているのか」


 美月は、兄から聞いたことを思い出しながら、ゆっくり話した。


「部屋に入ったこととか、最近ずっと昌志先輩のことを気にしてることとか、文芸部に来てほしいって何度も言ったこととか」


『それは……』


「うん。司ちゃんは、心配してるんだと思う。黒い本のこともあるし、昌志先輩が変なことに巻き込まれてるかもしれないって思ってるんだよね」


『はい』


「でも、昌志先輩から見ると、少し違って見えてるみたい」


 司は黙った。


 美月は続ける。


「勝手に部屋に入られた。何か聞くと反発される。なのに、自分の行動はすごく気にされている。私のために文芸部へ行けって何度も言われる」


『……』


「だから、自分が信用されてないんじゃないかって思ったみたい」


『信用してないわけじゃないです』


 司の声は小さかった。


 さっきよりもずっと弱い。


『私、お兄ちゃんを信用してないわけじゃないです』


「うん」


『ただ、心配で』


「うん」


『だって、お兄ちゃん、最近変だったから』


「うん」


『だから、何か隠してるなら知りたくて。危ないことなら止めたくて』


「うん」


『でも、嫌ってるわけじゃないです』


 最後の言葉は、少し震えていた。


 美月は、胸の奥が痛くなった。


「分かってるよ。司ちゃんが嫌ってないのは、私も分かってる」


『お兄ちゃんは、分かってないんですか?』


「今は、分からなくなってるのかもしれない」


『……そうですか』


「それと、司ちゃん」


『はい』


「ごめんね」


 美月は、そこで一度言葉を切った。


『美月さんが、ですか?』


「うん。司ちゃんに、いろいろ動いてもらう形になっちゃったから」


『そんなこと』


「あるよ」


 美月は小さく首を振った。


「私、昌志先輩に文芸部へ来てほしいって思ってた。昌志先輩と同じ部活にいられたら嬉しいって思ってた。それで、司ちゃんにも気を使わせたと思う」


『私は、別に』


「うん。でも、司ちゃんは私のために、昌志先輩へ何度も言ってくれたんだよね」


 電話の向こうで、司が黙った。


 美月は続ける。


「それで、昌志先輩が司ちゃんのことを少し分からなくなってるなら、私にも責任があると思う」


『美月さんのせいじゃないです』


「全部私のせいじゃないのは分かってる。でも、関係ないとは思えない」


『……』


「だから、ごめんね」


 司は、しばらく何も言わなかった。


 けれど、やがて小さな声で答えた。


『謝らないでください』


「……うん」


『私が勝手にしたことです』


「でも、ありがとう」


『ありがとう、ですか?』


「うん。司ちゃんが、私のことも考えてくれてたのは分かるから」


 司はまた黙った。


 その沈黙は、さっきよりも少しだけ柔らかく感じた。


「でも、これからは少しだけ、動きすぎない方がいいと思う」


『動きすぎない』


「うん。秘密を探るみたいに、また勝手に調べたり、昌志先輩を動かそうとしたりすると、もっと警戒されるかもしれない」


『……どうしよう』


 司の声が、そこで急に細くなった。


 美月は少し不安になる。


「司ちゃん?」


『私、さっき、お兄ちゃんの部屋に入っちゃいました』


「え?」


『お兄ちゃんが、ちょっと部屋を離れた隙に』


 美月は、思わず言葉を失った。


 さっき、あまり動かない方がいいと言ったばかりだった。


 それなのに、司はもう動いていた。


「司ちゃん、それはもう駄目だよ」


『分かってます』


「分かってるなら」


『分かってるんです。でも、気になって』


 司の声は、完全に弱っていた。


『机の上に、黒い表紙のノートみたいなものがあって』


 美月は、そこで少しだけ息を止めた。


「黒い表紙の?」


『はい』


「中、見たの?」


『少しだけ』


「司ちゃん」


『すみません』


 司はすぐに謝った。


『でも、前の方に少し文章がありました。物語みたいな感じでした』


「物語?」


『高校生の男の子が、黒い本を買った、みたいな』


 美月は、その言葉を聞いて、今日の放課後のことを思い出した。


 文芸部の部室。


 黒い表紙の本。


 雪と矢部が、昌志がそこに物語を書いているらしいと話していた。


 昌志先輩は、それを強く否定しなかった。


 むしろ、そういうことにしたようにも見えた。


「それって、もしかして、今日文芸部で言っていた本のことかもしれない」


『文芸部で?』


「うん。昌志先輩、黒い表紙の本に物語を書いてるみたいな話になってたの。雪さんと矢部さんも、そう思ってた」


『じゃあ、あれは……』


「本当に物語を書いてるノートなのかもしれない」


『でも』


「でも、勝手に見ていい理由にはならないよ」


『はい』


 司の返事は小さかった。


 美月は少しだけ声を柔らかくする。


「今は、昌志先輩が自分から話してくれるまで、見たり聞いたりしない方がいいと思う」


『でも、もし危ないものだったら』


「その時は、また考えよう。でも、今のまま何でも調べようとしたら、昌志先輩はもっと隠すと思う」


『……はい』


 司は黙った。


 その沈黙が、電話越しでも重く感じた。


 美月は少し迷ってから、言葉を変える。


「司ちゃん」


『はい』


「たぶん、今は隠しているものを探すより、昌志先輩に、嫌ってないって伝わる方が大事だと思う」


『嫌ってないって』


「うん」


『どうすればいいんですか?』


 司の声には、困惑がにじんでいた。


『私、お兄ちゃんに普通に接してるつもりでした』


「普通に?」


『普通にです』


「……たぶん、その普通が昌志先輩には少し怖いのかもしれない」


『怖い』


「うん」


『私、そんなに怖いですか?』


 美月は返事に困った。


 司は怖いというより、言葉が強い。


 表情も、少し固い時がある。


 それに、昌志先輩の前だと特に素直ではない。


「怖いというより、分かりにくいのかも」


『分かりにくい』


「うん。心配しているのに怒ってるみたいに見えたり、気にしているのに睨んでるみたいに見えたり」


『睨んでません』


「たぶん、昌志先輩にはそう見えてる」


『……』


「だから、明日から少しだけ優しくしてみたらどうかな」


『優しく』


「うん」


『でも、急に優しくしたら、変に思われませんか?』


「思われるかもしれない」


『やっぱり駄目じゃないですか』


「でも、警戒されたままよりは、少し変だと思われるくらいがいいかもしれない」


『変だと思われる方が?』


「嫌われてるとか、信用されてないって思われるよりは、ちょっと変とか、少しおかしいとか、そのくらいの方が警戒されないと思う」


『それは……そうかもしれませんけど』


「でも、やりすぎたら駄目だよ」


『どのくらいですか?』


「ほどほどに」


『ほどほど』


 司が、聞き慣れない言葉を確認するように繰り返した。


 美月は少しだけ苦笑する。


「たとえば、好きなお菓子を作るとか」


『お菓子』


「うん。昌志先輩が好きなもの」


『急に作ったら怪しまれませんか?』


「たまたま作りすぎたって言えばいいと思う」


『たまたま』


「うん」


『お兄ちゃん、信じますか?』


「分からない」


『分からないんですか』


「分からないけど、何もしないよりはいいと思う」


 美月は、自分で言いながら少し不安になった。


 本当にそれでいいのかは分からない。


 でも、今のまま司が何かを探り続ければ、昌志先輩はもっと警戒する。


 それよりは、不器用でも優しさが見える方がいい。


「あと、話しかけられた時に、少しだけ優しく返すとか」


『少しだけ』


「うん。急に丁寧すぎると怪しまれるから」


『丁寧すぎると怪しまれる』


「たぶん」


『難しいです』


「難しいよね」


 美月もそう思った。


 人に優しくすることが、こんなに難しいとは思っていなかった。


 特に、家族相手だと難しいのかもしれない。


 近すぎるから、素直な言葉ほど言いにくい。


「それと、たまに、いつもありがとうって言うとか」


『いつもありがとう』


「うん」


『それ、相沢さんなら喜ぶんじゃないですか?』


「お兄ちゃんなら、たぶんすごく喜ぶと思う」


『うちのお兄ちゃんは怪しみます』


「それは……そうかもしれない」


 美月が正直に答えると、電話の向こうで司が小さく息を吐いた。


『難しいです』


「うん。難しい」


『でも、やってみます』


「うん」


『お兄ちゃんに、嫌ってるって思われるのは嫌なので』


 その言葉は、とても小さかった。


 でも、美月にははっきり聞こえた。


「司ちゃんは、昌志先輩のこと、大事なんだね」


『……普通です』


「普通?」


『普通の兄です』


「そっか」


『でも、嫌いじゃないです』


「うん」


『信用してないわけでもないです』


「うん」


『ただ、心配なだけです』


「それが伝わるといいね」


『はい』


 司の声は、まだ不安そうだった。


 けれど、最初よりは少しだけ落ち着いていた。


「じゃあ、今日はもう、昌志先輩の部屋には入らないこと」


『入りません』


「ノートも見ないこと」


『見ません』


「無理に聞き出そうとしないこと」


『……はい』


 少しだけ間があった。


 美月は、その間が少し気になった。


「司ちゃん?」


『聞き出そうとしないようにします』


「うん」


『でも、危なそうだったら、美月さんに相談します』


「それはして」


『はい』


 美月はほっと息を吐いた。


 これで全部うまくいくとは思えない。


 司が急に変われば、昌志先輩はきっと怪しむ。


 もしかすると、余計に「妹がおかしい」と思うかもしれない。


 それでも、今よりは少しだけ前に進める気がした。


『美月さん』


「何?」


『ありがとうございます』


「ううん。私も、司ちゃんに言いすぎたところがあるかもしれないから」


『そんなことないです』


「あるよ。昌志先輩に文芸部へ来てほしいって、私も思ってたし」


『それは、悪いことじゃないと思います』


「うん。でも、昌志先輩がどう感じるかは、ちゃんと考えた方がよかったのかも」


 美月は、今日の本屋でのことを思い出した。


 昌志先輩は、付き合ってくれた。


 話も聞いてくれた。


 嫌そうではなかった。


 でも、自分が嬉しいからといって、何度も近づきすぎていいわけではない。


 昌志先輩には、昌志先輩の事情がある。


 まだ言えないことも、きっとある。


『美月さんは、優しいですね』


「そんなことないよ」


『私は、あまり上手くできないので』


「私も上手くできてるか分からないよ」


『そうですか?』


「うん」


 美月は、スマホを耳に当てたまま、少しだけ笑った。


「でも、一緒に考えることはできると思う」


『はい』


「だから、無理しすぎないでね」


『分かりました』


「急に変わりすぎないように」


『はい』


 司は返事をした。


 けれど、その声には、少しだけ決意のようなものが混じっていた。


 美月は少し不安になった。


 本当に、ほどほどにしてくれるだろうか。


 でも、それ以上は言えなかった。


 電話を切ったあと、司はしばらくスマホを見つめていた。


 部屋の中は静かだった。


 廊下の向こうに、兄の部屋がある。


 いつもなら、何も考えずに通り過ぎる場所だった。


 でも今は、その扉が妙に遠く感じた。


 嫌っているわけではない。


 信用していないわけでもない。


 ただ、心配だった。


 それだけだった。


 けれど、その心配が、兄には違うものに見えていた。


 司は、スマホを机に置いた。


 優しくする。


 少しだけ。


 急に変わりすぎないように。


 でも、ちゃんと伝わるように。


 それが、思っていたよりもずっと難しいことに思えた。

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